夕立(鬼閻♀)
admin≫
2010/10/12 14:45:18
2010/10/12 14:45:18
pixivに一足先に上げていた学園パロディ。
閻魔女体化です。
突然の激しい雨に慌てて走って帰る女子高生を見て浮かんだ話。
閻魔女体化です。
突然の激しい雨に慌てて走って帰る女子高生を見て浮かんだ話。
▼閻魔ちゃんだって女の子ですから▼
学生の夏休みを目前に控えた夏は、最近ますます暑さを強めたように思える。もう夕方だというのに気温が下がる気配はなく、一日を終えて疲れた体で帰ろうとする学生たちを容赦なく攻撃してくるのだ。
「暑いねぇ…」
「そうですね。」
当然閻魔と鬼男も例外ではなく、二人一緒の帰り道で夏の日差しを受けながらだるそうにそんな会話をしている。
「えー、それだけぇ?なんか返事がそっけないよ鬼男くぅーん…」
目も向けないまま一言だけ返された鬼男の言葉に、閻魔は鬼男に懐きながら不満そうにくいくいと鬼男の制服の裾を引っ張って訴えた。
「あー、もう!暑いんだよ、くっつくな大王イカ!」
わずかな肌の触れ合いも暑さを増してしまうだけなのか、鬼男は苛立った様子で閻魔の腕を振り払う。閻魔の目が悲しみに揺らいだ。
「あ、大お…」
しまった、と思って鬼男があけた距離を縮めようと一歩踏み出したところで不意に頬に触れる雫。
「ん?」
「あめ…?」
2人して空を見上げたのを合図にするように、雨脚は一気に強まってあっという間に晴天は土砂降りへと姿を変えた。ここ数日晴天続きだったこともあって傘を持っている者は少なく、皆一様に雨から逃げるように駆け出していく。
「大王、こっちです!」
鬼男も迷わず閻魔の手を引いて、一番近い雨を凌げる場所を目指して走り出した。
「久々の雨だねぇ…。少しは涼しくなるかなぁ?」
「ただの通り雨ですから、すぐ止みますよ。」
人気の無い屋根付きのベンチに鞄を置いて、閻魔はタオルを探しながら、鬼男は空を見上げながら言葉を交わす。自然に親しむという名目で周りに植えられたさまざまな植物や低木も、自身に降り注ぐ空からのシャワーを嬉しそうに浴びているようだ。
「ふふっ、おれね。こういう雨って嫌いじゃないんだぁー。なんか、すごく気持ちいいの。」
タオルを見つけたらしい閻魔はくるりと鬼男の方へ向き直り、どこかわくわくした様子で笑って、鬼男にタオルを差し出した。鬼男はそれを受け取りながら、「そうですかね?」と首をかしげる。
「それにさ…雨宿りしてる間は、鬼男くんと一緒に居られるじゃない?ちょっとだけでも、鬼男くんと居られる時間が増えるのって、嬉しいよ。」
「大王…」
照れたように頬を染めて鬼男を見上げる閻魔は、言葉の通り本当に嬉しそうで。鬼男はタオルで自分の髪を拭きながら、少し口を開くのをためらった。
「なぁに?」
しかし閻魔は、呼ばれた名前に反応して首をかしげて聞き返してきたので、言わないわけにはいかず。鬼男は目を逸らすことなくじっと閻魔を見つめて答えた。
「ブラ、見えてます。」
「っ!?わぁー、バカバカ!あっち向いてろスケベ!!」
鬼男の予期せぬその言葉に閻魔は先ほどとは違う意味で赤面すると、小さな胸を隠すように両腕で覆って叫ぶように声を張り上げる。鬼男は言われるままに背を向けるもののどこか不満そうだ。
「先にこっちを向いたのは大王のほうじゃないですか。」
「うるさいなぁっ!知らなかったんだからしょうがないでしょ!」
自分に非は無いということを主張するように冷静な態度で言う鬼男に、閻魔はなお恥ずかしそうに言い返す。見せるつもりがあってやったわけじゃないんだと、分かりきっていることでも主張したくなるのだ。
「でも…」
「…なに?」
分かっているからこそ、鬼男も告げた後は閻魔のほうを見ようとはしないのだろう。背を向けたまま声をかけるので、閻魔もタオルで髪を拭きながら少し落ち着いた態度で聞き返す。
「アンタって、案外女の子らしいとこあるんですね。」
「失礼なこと言ってくれるね、鬼男くん。おれが下着透けてても気にしないヤツだと思ってたわけ?」
心底感心したように呟くものだから、閻魔も少し腹が立って噛み付くような言い方で言い返す。鬼男はそれを聞いておかしそうに肩を震わせた。
「何で笑うのさ。」
「いや、すみません。うん…それも、ちょっと予想外だったんですけど。」
本当に失礼なことを言っているということに鬼男は気づいているのだろうか。背を向けているため閻魔の顔が見えないせいか、鬼男は閻魔を気にした様子もなく素直に思ったことを口にしている。
「ピンクチェックにリボンなんて、可愛いものつけてるなぁと思いまし…ってぇ!?」
鬼男の言葉を最後まで聞くことなく、閻魔は近くにあった鞄を思い切り鬼男に投げつけていた。教科書類を持ち帰る習慣のない閻魔の鞄だったので、必要最低限のものしか入っておらずさほど痛みは無いにしろ、予期せぬ攻撃に体は対応できない。普段より痛みを強く感じた鬼男は、条件反射とも言える状態で声を上げてしまった。
「もう、信じられない!何しっかり見てるんだよ鬼男くんのスケベ!変態っ!!」
「こっちだってそんなにじっくり見るつもりなかったですよ!でもお前、目の前に好きな子の下着ですよ?どうしたって目が…!」
「そんなの言い訳になるか!最低!ホント、バカじゃないの君は!!」
激しく降り続く雨音に負けないくらいの声量で言い争う2人を止めるものもなく、水浴びをする植物たちに見守られてしばらく自らの主張を押し通そうとする、にぎやかな口論が行われた。
「だから、つい見てしまうのは仕方ないことなんだっていうのをですね…!」
「もう知らないよ!雨も弱まったし、おれは帰るんだから!」
結局夕立が通り過ぎるまでお互い一歩も譲らぬ言い争いを続けた結果、閻魔のほうが嫌になって離れることを選んだ。投げつけたままになっていた鞄を拾ってそれだけ言うと、そっぽを向くように背を向けて歩き出してしまった。
「ばっ…待ちやがれアホ大王イカ!!」
それを見た鬼男は焦ったように声を張り上げ、閻魔の腕を掴んで引き止める。閻魔は不愉快そうに眉をしかめて首だけで振り返り鬼男を睨みつけた。
「何、もう知らないって言ってるじゃん。離してよ。」
「離しません。」
鬼男の手を振りほどこうとする閻魔にはっきりと言い切って、絶対に逃さないと言いたげに手の力を強める鬼男。閻魔の細い腕がわずかに悲鳴を上げた。
「あのさ…痛いん、だけど…」
「…お前はそんな格好のまま1人であと30分近く歩くつもりなのか、アホ。」
鬼男の目が、掴まれた腕の強さがすごく真剣に思えて少し怯えたように小さな声で閻魔が呟くと、鬼男はため息をついて手の力を緩め、持っていたタオルを閻魔の方にかけてやった。タオルは、びしょ濡れで下着が透けたままだった閻魔の胸を上手く隠してくれて。
「あ…」
「言わなきゃ忘れてただろ。」
それを見てはじめて思い出したように声を漏らした閻魔を呆れたように眺めて、鬼男はくしゃりとまだ湿っている閻魔の髪を撫でた。
「あのねぇ、誰のせいだと思って…!」
「すみませんでした。」
鬼男の態度に再び腹が立ってきた閻魔がムッとして言い返そうとしたところを遮って、鬼男の口から謝罪の言葉が出てくる。閻魔はその言葉に驚いてしまってぽかんと鬼男の顔を見上げた。
「今回は僕の発言、行動が軽率でした。それで、その…僕以外の男に、大王のその姿を見せたくない、し…大王に何かあると、嫌なので…」
どう言おうか悩んでいるのか、自分からは言い辛いのか、しどろもどろになりながら言葉をつむぐ鬼男が、なんだかとてもおかしく見えて。閻魔は思わず声を上げて笑ってしまった。
「なっ…!お前、何笑ってんだ!」
「あははっ、うん…ごめんごめん。ふふっ…雨ももう止んだし、帰ろう?鬼男くん。」
恥ずかしそうに頬を染めて声を荒げる鬼男がますますおかしかったけど、あまり笑っては良くないだろうと謝ってから、閻魔は鬼男が言いたいであろうことを先取りして手を差し出した。
「…はい。」
敵わないなぁと思いながら、素直に返事をして鬼男はそっと閻魔の手を握り返す。
「いつもどおり、ちゃんと家まで送ってよね?」
「当たり前だろ、今のお前を1人でなんて危なっかしくてできませんよ。」
歩き出しながら、念を押すように閻魔が顔を覗き込んで言うと、鬼男はそっけなく返して握っている手の力を少し強くした。
【終】
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