恋に師匠無し
2010/09/26 16:30:39
どうも、お久しぶりです。
閉鎖したサイトに置いてあった学園ものを転載して、気づけば2ヶ月?くらいたってましたね。相変わらず新作は途中で止まってるものやボツになるものばかりで、何とも残念な状態です^q^
今回は3分の2くらい書いていた前回の『案ずるより産むが易し』の続きを加筆修正した話です。
このときは、飛鳥組を見守っていた天国組がいちゃつきたいよーと言っていたようで、二人が受け攻めバトル(笑)を繰り広げています。
今回から察するに、このシリーズを書き出したときの私は鬼閻鬼ではなく閻鬼閻で書き進めようとしていたようですね。^q^
この話では天国と飛鳥しか出てきませんが、そろそろ細道組の話に進めようとしているのが読み直し、書き直しをして伝わってきたので、上手くいったらようやく細道組に焦点が当たってくれそうです。
学園もの以外にも書いてみようかなと思っている話はあるのになぁ…書きあがらないんだぜ^q^
「鬼男くーん、体育祭のことなんだ…け、ど…?」
放課後、オレが生徒会室のドアを開けながら言うと、机に伏せる鬼男くんの姿が目に入った。呼吸が規則的だから、寝てるみたい。
「疲れてるんだね…。」
鬼男くんの傍にしゃがみ込み、眼鏡をかけたまま眠る顔を眺める。
「フレーム、歪んじゃうよ?」
言って、起こさないようにそっと眼鏡を外してやる。普段はかけないのに、細かい字を読んだり授業中に黒板を見たりするときだけ鬼男くんは眼鏡をかける。これがまたかなり似合ってて。思わずときめいちゃうくらい。
「こういうギャップって、結構ポイント高いんだよねー。」
鬼男くんのコト好きな女の子、結構沢山いるんだよな…。鬼男くんの目には、オレや女の子はどういう風に見えてるのかな…?
――それは、ちょっとした好奇心。
「……」
オレは、手に持っていた鬼男くんの眼鏡を自分でかけてみた。
うーん、何か目の前ちょっと変だな…。鬼男くん、こんな視界で生活してたのか。
「何…してるんですか…?」
「うふふ、似合うー?」
目が覚めたらしい鬼男くんが声をかけてきたから、そっちに目を向けて問いかけ。鬼男くんみたいに頭良く見えるかな?
「っ、早く外せバカ!」
「あ!」
オレが眼鏡をかけてることに気付くと、鬼男くんはバッと体を起こしてオレから眼鏡を外してしまった。いくらなんでも、その対応は酷くない?
「むー…オレ、そんなに似合わなかった?」
「そういう問題じゃありません。僕の眼鏡は少なからず度が入ってるんです。目が良い大王がかけてたら視力落ちますよ。」
不満を露に問うと、鬼男くんは叱るように答えて眼鏡をケースに仕舞ってしまった。
あ、もう掛けないんだ…ちょっと残念。
「鬼男くんの目には、どういう風に世界が見えてるのかなって思ってさ。」
鬼男くんの顔を下から覗き込むようにして見上げる。
「…眼鏡掛けたってそんなん分かるわけないでしょう。」
鬼男くんは、オレの上目遣いに弱い。ほんのり頬を赤らめて答える姿は目の保養と言わんばかりに可愛いんだよね。
「好きな子のコトを知りたいって言う乙女心…悟ってほしいなー?」
顔を近づけて、鬼男くんの首に手を回す。
「お前は間違っても乙女じゃねぇし、眼鏡一つで分かるわけないだろこのイカ野郎。」
「ちょ、ヒド!俺、今結構傷ついたぁ~!」
首に回した手はそのままに鬼男くんの胸に顔を埋めて喚いた。ほんと、辛辣なんだから。もう少し恋人らしく甘やかしてくれたって…
「不安にならなくたって、僕の目には閻魔しか映ってませんよ。」
「っ!」
不覚。少し、ときめいた。
いつの間にそんな口説き文句覚えたんだろ。…ご丁寧に頬に手まで添えてくるし。
「顔…赤くなってますよ?」
珍しく、したり顔の鬼男くん。
「え!?え、あー…あぁ、今日は少し暑いからねぇ。」
テキトーなことを言って、そのまま口付けた。逃げられないように後頭部を押さえて舌を滑り込ませる。だってこのオレが動揺したなんて、少し悔しいじゃない?
「っ、ふ…ん…っ」
お互いに舌を絡ませあってしばらく口付けを堪能する。
最近、何だかんだで邪魔入ってたしね?
「っ、は…ぁ」
鬼男くんはキスの最中に息を止める癖があるから、離れたときにはもうオレより赤い顔で肩で息をしてる。まだまだだね、鬼男くん。
「…オレも眼鏡掛けよっかな~。」
「は…?」
オレの呟きに、鬼男くんは心底理解できないと言う顔をした。
「ずっと眼鏡掛けてれば外したときドキッとするじゃない?」
「…ドキッとしたんですか?」
「っ!」
しまった、墓穴掘った。鬼男くんをからかうつもりだったのに…!スッゴク楽しそうな顔してるよこの子!
「教えてくださいよ…大王。」
「っ…」
うぅ…ヤバイ、今日は何だか押されそうな気がする。だって、そうやって問いかけてくる鬼男くん…かなりカッコいい。
「眼鏡掛けてる僕の姿に見とれましたか?」
「えー…っとぉ…」
「…閻魔?」
あぁ、もう…。今日だけだからね?
「う、ん…見とれてた。ほらっ、鬼男くんって普段は眼鏡かけないからさ…余計に、カッコよく見えて。」
言ってみて今分かったけど…こういうの、半端なく恥ずかしい。鬼男くんが素直にならない理由が分かった気がするよ。
「…あれ?」
「見るな大王イカ!」
「げふぉっ!?」
何の反応もないから鬼男くんの様子を窺ってみると、叫びと共に鉄拳が飛んできた。なに、この仕打ち…。オレ、珍しく素直になったのに。
「っ…!」
あらら~、顔真っ赤だねぇ…。
「…好きだよ、鬼男くん。」
真っ赤な顔を背けて俯いてる鬼男くんに近づいて、耳元で囁いてみる。
あぁ…ダメだよ、鬼男くん。そんな風に戸惑った表情を見せられたらオレ、我慢できなくなっちゃう。
「鬼男くん…」
名前を呼んで、顎に手をかける。窓際に鬼男くんを追い詰めてそのまま…
「おっにお~!!」
「っ!!」
何の前触れもなく開いた扉に驚いた鬼男くんがオレを突き飛ばす。…また、このパターンですか。
「…どうしたんだ?」
「ねぇ、太子さぁ…オレたちに何か恨みでもあるの?」
突き飛ばされたまま、オレは立ち上がる気すら起きなくて恨みがましく太子を見上げた。太子は何も理解してなさそうな顔できょとんとしてる。…あぁ、邪魔されない恋がしたい。
「お…おぅ太子。今度は何だよ。」
鬼男くんが必死に何事もなかったかのような態度を装ってる。うーん…でも、まだ顔真っ赤だよ?鬼男くん。
「聞いてくれ鬼男!今日、今日なんと!妹子が」
「黙っとけアホ太子ー!!」
太子が嬉々として何かを語ろうとした時、背中に叫びと共に飛び蹴りが直撃。
「え…」
「小野…?」
これにはさすがに驚いた。朝よりきつい一撃だ。まさかここまでとは…。
「いったいなー、もう。いきなり何すんだ!」
「アンタが余計なこと話そうとするからだ!」
「何が余計なことだ!私はこの感動を鬼男たちにも聞かせてやろうとだなぁ…」
「それが余計なことなんです!もう何も言うなアホ太子!」
俺たちを置き去りにギャアギャアと口論を続ける二人に、思わずため息がこぼれる。
「もう大丈夫なんだな、小野?」
「えっ?」
フッと、安心したような笑みを浮かべて鬼男くんが問いかける。妹子くんはその言葉にキョトンとした表情で。なんか…かわいいな。
「もう、素の自分を出せるんだね?ってことだよ。前みたいに無理しなくても、さ。」
起き上がって座った状態で妹子くんを見上げ、鬼男くんの言葉を補う。妹子くんは一瞬驚いたような顔をしたあと、ちらりと太子の方に目を向けてすぐにこっちに視線を戻した。
「えぇ…まぁ。鬼男先輩、ご迷惑お掛けしました。」
取っ組み合いの途中で、未だに掴んでいた太子の腕から手を離して、妹子くんはペコリと頭を下げる。
「良いって、別に。まぁ、無理はしないようにな?」
そんな妹子くんの頭をくしゃりと撫でて答える鬼男くんに、さすがにオレもムッとする。オレにはそんなことしたことないくせにっ…!
見ると、太子も不機嫌そうに眉根を寄せてる。視線を太子に送って、無言で頷き合う。
「鬼男くーん?」「いーもこ!」
せーので同時に相手の腕を掴んで二人を引き離した。
「うわっ!」「えっ!?」
「オレには辛辣なのに、妹子くんには優しいんだ?」
「っ…!何言ってんだ、この大王イカッ!」
ギュッと腕を掴んで、上目使いで鬼男くんを睨む。頬を軽く赤らめてまたいつものようにイカ扱い。でも、今はそれが正解。そうやって俺だけを見ててよね?
「ちょっ、何ですかいきなり!離せっ!」
「やだよー。妹子ってば鬼男とばっか話してるんだもん。」
一方太子は腕を掴んで引き寄せてから後ろから妹子くんを抱きしめて会話をしてる。オレもあんな風にすればよかったなー。腕に抱きつくよりよっぽど良いかも。
「何言ってんだアホ太子!鬼男先輩に謝罪しただけでしょう!」
「それでもヤなのっ!ずっと、妹子と全然話せなかったから私は寂しかったんだ!」
「それはっ…謝りますけど…。それとこれとは話が別です!」
「別じゃないやい!一緒だ!」
うん、仲いいのは分かったからさぁ…
「「他所でやれ。」」
思わず鬼男くんとハモって出てきた言葉。オレたちの邪魔しといて、自分達は見せつけるってどうなの?ホントに…。
「あっ、すみません。仕事の邪魔ですよね。ほらっ、太子行きますよ!」
「うわっ、アホ妹子!急に引っ張るな!」
「うるさい!大体アンタが余計なことしなければですねっ…!」
「じゃ、また明日な閻魔~、鬼男~」
やっぱりぎゃあぎゃあ騒ぎながら二人は生徒会室を出ていった。…何だったの、ホントに。
「ところで、会議はどうなったんです?」
「へっ?」
いきなりの話題転換についていけず、思わず間抜けな声が出る。
「今日、会議があるって言っておきましたよね?」
鬼男くんは、それを忘れていたととったらしい。怒りを露にした低い声で確認をとってくる。…こ、怖っ!
「ちょ、待って!行ってきた、ちゃんと行ってきたよ!んで、体育祭のことで聞きたいことができたから聞こうと思ったら君が寝てたのっ!」
オレは断じて悪くない!
「あぁ、そうなんですか。…すみません。それで?聞きたいことってなんですか?」
「…あれ、何だっけ。」
どうしよう。どうやらさっきまでのやり取りですっかり頭から抜け落ちちゃったみたいだ。
「っ、お前は何のために会議に出たんだこのアホ大王イカー!!」
本日何度目かのイカが、生徒会室に響き渡った。
【続く…と、いいね♪】