CRAWL 道端の一輪の花

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2024/11/23 04:26:39

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2/4にポテトさん・やみんさん・かしこさん（仮）のコラボによりUPされた動画

【閻.魔】C.R.A.W.L【替歌を歌.ってみた+P.V.作.ってみた】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm9588760

から妄想･発展したお話です。
見たその日から考えて、あっという間に出来上がりました。
ポテトさんとやみんさんには出来上がってすぐにお渡ししました。

こちらでも公開しておきます。無許可ですみません。

私の個人的解釈･妄想・感想を多大に含んでいます。
自分のイメージや解釈がある方、そしてそれとの違いを不快に思う方は見ることをおすすめできません。

▼彼は夕日の精とかそんなのではないかと。▼

ずっとそばにいてくれた。ずっとずっと独りだった俺を支えてくれた君。大切な君に、俺は何が出来ただろう？

『私のことならこれでもう良いんだ。そんな顔しないで？私は、シゴトを終えて眠るだけだよ。』

「分かってる、けど…でも…」

涙が一粒、頬を伝う。俺は、君に支えられて甘えるばっかりで。まだ何も、返すことが出来ていない。

『閻魔、飴玉をあげる。好きでしょう？確かに、寂しくなるけど…私はとても幸せで、嬉しいよ。』

◇◇◇

たった独りで、ただ決められた審判を告げる日々。変わらない、単純な作業。

聞こえてくるヒトの声。審判に嘆く声。自分にはもう二度と訪れない、眩しい命の輝き。

「……」

空をうつろに見上げて、目を閉じる。

空しさが心を支配する。何をするにも、もう疲れてしまった。

感情が少しずつ、静かに壊れていく。

――誰か、俺を…

開けていた窓からざぁっと音を立てて風が吹き抜けた。

『やあ、初めまして。』

突然耳に届いた声。ヒトの声じゃない。ちゃんと自分を認識して、自分に向けられている挨拶の声。

「…君は、だれ？」

目を開けて声の方に視線を向けた自分の第一声。

姿形は俺そっくりなのに、出会ったこのときだけは瞳の色がその日の夕焼け空みたいに明るく眩しい黄水晶だった。

『私は、君の声を聞いていた者。かな？まあ、そう大した奴でもないよ。ただ…もがき疲れた君に、泳ぎ方と息継ぎの仕方を教えてあげようと思って。』

にっこり笑った黄水晶の瞳は、次の瞬間俺と同じ紫水晶に変わった。

◇◇◇

「俺は、君のおかげでここまでやってこられたよ。君がいなかったら、とうの昔に狂っていたかもしれない。」

言って、心からの笑顔を見せる。

あの時、声をかけてくれなかったら…そばにいてくれなかったら、忘れてしまっていた。

『私の存在が、君の存在を…心を生かす手助けになれていたのなら、良かったよ。…これからは、彼がそばにいてくれる。』

俺と同じ紫水晶の瞳を細めて笑い、君は視線を俺の背中の方に移す。俺の少し後ろで黙ってこのやり取りを聞いていてくれている、俺の大切な子。

「っ…ねえ…ホントに、もう…」

分かってるけど、それでも寂しくて悲しくて。最後の最後に、未練がましいとは思う。でもどうしても何か手段はないかと考えて、縋るように声を出すけど…気持ちを言葉にすることは出来なかった。

『彼がいれば君は大丈夫。ようやく出会えたひとりなんだから、大切にするんだよ？…さよなら。』

優しい声が言い聞かせるように言って先に別れを告げた。ああ、本当にもう…お別れなんだね。

「さよう、なら。」

泣きそうに声は震えていたけれど、頑張って同じように返す。君はちょっとだけ笑って、俺の髪をくしゃっと撫でた。

『また、会う。』

「…それじゃ、ね？」

会える保証なんてどこにもないのに、そんなことを言う君が悲しくて、俺から同じように再会の言葉を返すことは出来なかった。くすくすと、何故かおかしそうに笑う声。

『いつか、ね。』

「ありがとう。」

繰り返されたいつかの再会を約束する言葉。いつかが、いつになるかは分からない。でも、その言葉を今は信じたかった。

『もう、いかなくちゃ。』

君はそう言ってまた笑う。

ああ、君の体がまばゆい光を放つ。これが、本当に最後。

消える直前、黙って彼の後ろに立つ鬼の子に目を向けた。

――答えが見えたかな？

「…それは、さすがにまだ。」

――まー、そうか。でも…念願は叶ったでしょう？

「……」

鬼の子は答えず、ぎこちない笑顔を見せた。

もしかしたら、消えることに怯えて震えていた私の手に気づかせてしまったかもね。でも、もう遅い。私は、もう消えるよ。

「…大王。」

ふわふわと俺を包み込んでくれる光の羽。意味がないことは分かっているけど、それでもただ消えていくのを見ているのも嫌で手を伸ばして抱きしめようとしていると、後ろからためらいがちに声が聞こえた。

――彼がいれば君は大丈夫。ようやく出会えたひとりなんだから、大切にするんだよ？

抱きしめた光から、そんな言葉が聞こえる。

何度も言わなくたって、分かってるよ。大切な、大好きな俺の秘書。君がいなければ忘れてしまっていただろうこの心は、しっかり俺の中に残された。

「鬼男くん…」

名前をかみ締めるように呼んで、ゆっくりと振り返る。

君が枯れないように守ってくれた「心」から生まれた、小さな気持ち。君が大切に育てるんだよって言ってくれた、愛しい愛しい種。

「はい。」

彼は変わらない態度で急かすでもなく止めるでもなくただ、返事だけをした。

まずは、何から伝えようか。

「…ありがとう。これからも、よろしくね。」

君のおかげで生まれたまだ小さいこの種を、今度は彼と一緒に育てていきたいな。

ねえ…今俺の頬を伝うのは、悲しく冷たい涙の雨じゃないよ。嬉しくて、幸せな気持ちがこぼれた温かい雨。

この温かい雨が、君のとこまで届きますように。

【終】

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カテゴリー：天国｜タイトル：CRAWL
[ 2010/10/12 14:53:28 ] コメント(0)｜トラックバック()

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