飛鳥の記事一覧
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- 2009/08/14 そばにいて(太子×妹子)
- 2009/07/28 夏祭り(飛鳥組)
そばにいて(太子×妹子)
admin≫
2009/08/14 17:51:48
2009/08/14 17:51:48
亜耶のリクで太妹です!
が…飛鳥組はいろんな方が書いているので被っているかも…もし問題があったら教えてください。
太子を、カッコよく書いてみたくて…妹子にデレてもらいたくて…しかし出来上がったのは残念な結果でした。
なんか、意味の分からない感じになってしまいましたので…ふざけんなこのアワビがっ!とか思ったら言ってください。
書き直します!
が…飛鳥組はいろんな方が書いているので被っているかも…もし問題があったら教えてください。
太子を、カッコよく書いてみたくて…妹子にデレてもらいたくて…しかし出来上がったのは残念な結果でした。
なんか、意味の分からない感じになってしまいましたので…ふざけんなこのアワビがっ!とか思ったら言ってください。
書き直します!
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▼失敗したら、そりゃへこみますよ▼
「情けないなぁ…」
妹子は、今までにないほど落ち込んでいた。
理由は簡単。今日の仕事で何度も初歩的なミスをしたからだ。
書類の書き損じや書簡の受け渡し間違いをしたり、書物整理中に手を引っ掛けてバラバラにしてしまったりと、普段では考えられないような失敗を連続でしてしまったのだ。
「何年勤めてると思ってるんだよ…」
疲れているんだろうと言われ早めに上がらされて、しかし家に帰る気にもなれず、以前太子とピクニックに行ったときに見つけた大樹のそばに座り込んで自己嫌悪に陥っていた。
「あー、もう…」
体操座りの膝に顔を埋めて、ため息混じりに呟く。
少し真面目すぎるところがある妹子にとって、本日の失敗はかなり堪えたようだ。
「妹子。」
「っ!」
不意に聞こえた声に、ぴくりと妹子の肩が跳ねる。
顔を見なくたって分かる、この声と独特の臭い。
けれど今は、会いたくなかった人。
「妹子…」
顔を埋める妹子の前にしゃがみこむ気配。
優しい響きを持って、はっきりと名前を呼ばれる。
普段とは少し違った、すべてを理解し、包み込むような雰囲気。
――あぁ…だから会いたくなかったのに。
「たい、し…」
顔を上げて、すがるように名前を呼ぶ。
やっぱり太子は、分かってると言いたげに笑っていた。
「っ、太子…!」
妹子は我慢できずに太子の胸に飛び込んだ。
同時に太子は妹子の背中に手を回してぎゅっと抱き締める。
「妹子…たまにはこんな日もあるよ。落ち込むな。」
「うっさい、アワビ!…普段、仕事してないくせにっ…偉そうなんですよっ…!」
からかうでもなく、ただの社交辞令のような慰めでもなく。
ただ優しく励ますように言った太子の言葉に、不覚にも喜びを感じてしまった妹子は、悪あがきのように憎まれ口を叩いた。
「おまっ…私がせっかく励ましてやってるのに、なんだその言いぐさは!」
「僕は、そんなこと頼んだ覚えありません…!」
抱き合ったまま、段々といつものような口論をし始める二人。
さっきまでどうしようもないくらい落ち込んで、自己嫌悪に陥っていたのに、もう妹子は元通りになっていた。
「…離れていいですか、太子。」
調子が戻ってくると、さすがにこの体勢に恥ずかしさを感じ、太子の臭いも気になるのか妹子がもぞもぞ動きながら言う。
「えー、もうちょっとだけ~。」
しかし、今度は太子の方が妹子から離れがたくなったらしく、さらにぎゅっと抱き締めて妹子の髪に顔を埋めてきた。
「やめてくださいよ。カレー臭が移ります。」
「訂正しろ!私は臭くない、断じて臭くないぞ!」
ぐっと太子の胸を押して離れようとする妹子の腕を掴み、迫るように顔を近づけてくる太子。
「あー、もう!臭いっ、寄るなカレーやろっ…おわぁっ!?」
「おぉっ!?」
太子に近寄られまいと妹子も力を込めていたら重心のバランスが崩れたらしく、太子とともに後ろにひっくり返った。
「ったぁ~…まったく!太子がくだらないことを言ってるからこんなことになるんですよ!」
太子の体重も加わって背中と頭を地面にぶつけた妹子は上半身を起こしてすぐに文句を言う。
「何おぅっ!今のは妹子が悪っ」
「「っ…!」」
太子も負けじと文句を言おうと顔を上げると、鼻先が触れあいそうなくらい近くに妹子の顔があって、お互いに動きを止めた。
「あ、あのっ…たい」
「妹子、目閉じて。」
何とかしようと妹子が口を開いたのを遮る、太子の声。
「っ…」
「早くしろ。は…恥ずかしいだろ。」
目元を赤らめて戸惑った様子を見せる妹子に、相変わらずの至近距離で太子も照れたように告げた。
そんな風に言われると妹子もますます恥ずかしくなってきて「分かりましたよっ…!」などと返してすぐさま目を閉じる。
ムードも何も、あったものじゃない。
「っ…」
太子もそれを確認してからためらいがちに目を閉じて妹子に顔を近づける。
…重なりあったら、もう止められない。
「っ…!ん…っうぅ…!?」
まるでスイッチが切り替わったように、太子は妹子の後頭部に手を回して口づけを深いものにしていく。
さすがに手慣れたもので、巧みな舌遣いは妹子の抵抗力を確実に奪っていく。
「っ、は…ふぁ…」
気付けば妹子は再び地面に背中をつけていて。
酸素不足のために涙で潤んだ妹子と、不敵な笑みを浮かべる太子の間には…綺麗に糸を引く銀。
「…でも、妹子が思ったより落ち込んでなくて良かった。」
飲み込みきれず妹子の頬を滑る唾液を拭い取るように触れて、太子はどこか安堵したような笑みを浮かべた。
「え…?」
「普段じゃしないようなミス、いっぱいしてたからさ。真面目な妹子はすごく、すっごーく落ち込んでると思ってた。」
「えぇ、まぁ…確かにかなり、落ち込んでましたけど…」
そこまで強調されると逆に立ち直り始めた気持ちが落ち込みそうになる。
太子は妹子の額と自分の額をくっつけて、くすっと笑った。
「妹子は、いつも通り笑ったり怒ったりしてる方が似合うよ。」
「っ…僕を怒らせるのは、太子くらいですよ。」
合わさった額と視線が恥ずかしくて、妹子は視線だけは逸らして言い返す。
しかし太子はそれをよしとせず、妹子の頬を挟むように両手を添えて意識を自分の方に向けさせた。
「っ、たい…し。」
「そう。妹子はいつだって私のことを考えて、私にだけ意識を向けてればいい。摂政命令だぞっ!」
再び交わった視線に妹子が頬を赤らめると、太子は満足そうに笑ってとんでもないことを口にした。
「っ、このアホ太子!そんなことで権力使うなっ!」
妹子の体温は急上昇して、あっという間に真っ赤なリンゴ状態。
「顔真っ赤。…好きだよ、妹子。妹子のためなら私は何でもするぞ?」
「ば、バカじゃないですか!?」
口調は楽しげなのに、目だけは真剣味を帯びている太子に、妹子は嬉しい反面少し困っていた。
太子も自分も、本当はこのままではいけないと痛いほど分かっていたから。
こんな、お互いに依存しているような関係は…
「妹子…ずっと私のそばにいて、私のことを好きでいてくれるだろう?」
でも…性別も身分も、未来のこともすべて投げ捨てたって良いと、太子のそばで太子の声を聞いていると思ってしまう。
「太子…」
いつかは…いつかは、と思っているのに。
「妹子?」
「…えぇ。ずっと、太子のそばで笑って、怒って。太子だけを好きでいますよ。…大好きです。」
「私も大好きだぞっ、妹子!」
ごめんなさい。
やっぱり僕はまだ、居心地の良いこの人のそばを離れることができないんです。
―――――――
考えていたのと違った話になってしまった…orz
妹子を慰めて甘々にするつもりだったのに…!
妹子は、今までにないほど落ち込んでいた。
理由は簡単。今日の仕事で何度も初歩的なミスをしたからだ。
書類の書き損じや書簡の受け渡し間違いをしたり、書物整理中に手を引っ掛けてバラバラにしてしまったりと、普段では考えられないような失敗を連続でしてしまったのだ。
「何年勤めてると思ってるんだよ…」
疲れているんだろうと言われ早めに上がらされて、しかし家に帰る気にもなれず、以前太子とピクニックに行ったときに見つけた大樹のそばに座り込んで自己嫌悪に陥っていた。
「あー、もう…」
体操座りの膝に顔を埋めて、ため息混じりに呟く。
少し真面目すぎるところがある妹子にとって、本日の失敗はかなり堪えたようだ。
「妹子。」
「っ!」
不意に聞こえた声に、ぴくりと妹子の肩が跳ねる。
顔を見なくたって分かる、この声と独特の臭い。
けれど今は、会いたくなかった人。
「妹子…」
顔を埋める妹子の前にしゃがみこむ気配。
優しい響きを持って、はっきりと名前を呼ばれる。
普段とは少し違った、すべてを理解し、包み込むような雰囲気。
――あぁ…だから会いたくなかったのに。
「たい、し…」
顔を上げて、すがるように名前を呼ぶ。
やっぱり太子は、分かってると言いたげに笑っていた。
「っ、太子…!」
妹子は我慢できずに太子の胸に飛び込んだ。
同時に太子は妹子の背中に手を回してぎゅっと抱き締める。
「妹子…たまにはこんな日もあるよ。落ち込むな。」
「うっさい、アワビ!…普段、仕事してないくせにっ…偉そうなんですよっ…!」
からかうでもなく、ただの社交辞令のような慰めでもなく。
ただ優しく励ますように言った太子の言葉に、不覚にも喜びを感じてしまった妹子は、悪あがきのように憎まれ口を叩いた。
「おまっ…私がせっかく励ましてやってるのに、なんだその言いぐさは!」
「僕は、そんなこと頼んだ覚えありません…!」
抱き合ったまま、段々といつものような口論をし始める二人。
さっきまでどうしようもないくらい落ち込んで、自己嫌悪に陥っていたのに、もう妹子は元通りになっていた。
「…離れていいですか、太子。」
調子が戻ってくると、さすがにこの体勢に恥ずかしさを感じ、太子の臭いも気になるのか妹子がもぞもぞ動きながら言う。
「えー、もうちょっとだけ~。」
しかし、今度は太子の方が妹子から離れがたくなったらしく、さらにぎゅっと抱き締めて妹子の髪に顔を埋めてきた。
「やめてくださいよ。カレー臭が移ります。」
「訂正しろ!私は臭くない、断じて臭くないぞ!」
ぐっと太子の胸を押して離れようとする妹子の腕を掴み、迫るように顔を近づけてくる太子。
「あー、もう!臭いっ、寄るなカレーやろっ…おわぁっ!?」
「おぉっ!?」
太子に近寄られまいと妹子も力を込めていたら重心のバランスが崩れたらしく、太子とともに後ろにひっくり返った。
「ったぁ~…まったく!太子がくだらないことを言ってるからこんなことになるんですよ!」
太子の体重も加わって背中と頭を地面にぶつけた妹子は上半身を起こしてすぐに文句を言う。
「何おぅっ!今のは妹子が悪っ」
「「っ…!」」
太子も負けじと文句を言おうと顔を上げると、鼻先が触れあいそうなくらい近くに妹子の顔があって、お互いに動きを止めた。
「あ、あのっ…たい」
「妹子、目閉じて。」
何とかしようと妹子が口を開いたのを遮る、太子の声。
「っ…」
「早くしろ。は…恥ずかしいだろ。」
目元を赤らめて戸惑った様子を見せる妹子に、相変わらずの至近距離で太子も照れたように告げた。
そんな風に言われると妹子もますます恥ずかしくなってきて「分かりましたよっ…!」などと返してすぐさま目を閉じる。
ムードも何も、あったものじゃない。
「っ…」
太子もそれを確認してからためらいがちに目を閉じて妹子に顔を近づける。
…重なりあったら、もう止められない。
「っ…!ん…っうぅ…!?」
まるでスイッチが切り替わったように、太子は妹子の後頭部に手を回して口づけを深いものにしていく。
さすがに手慣れたもので、巧みな舌遣いは妹子の抵抗力を確実に奪っていく。
「っ、は…ふぁ…」
気付けば妹子は再び地面に背中をつけていて。
酸素不足のために涙で潤んだ妹子と、不敵な笑みを浮かべる太子の間には…綺麗に糸を引く銀。
「…でも、妹子が思ったより落ち込んでなくて良かった。」
飲み込みきれず妹子の頬を滑る唾液を拭い取るように触れて、太子はどこか安堵したような笑みを浮かべた。
「え…?」
「普段じゃしないようなミス、いっぱいしてたからさ。真面目な妹子はすごく、すっごーく落ち込んでると思ってた。」
「えぇ、まぁ…確かにかなり、落ち込んでましたけど…」
そこまで強調されると逆に立ち直り始めた気持ちが落ち込みそうになる。
太子は妹子の額と自分の額をくっつけて、くすっと笑った。
「妹子は、いつも通り笑ったり怒ったりしてる方が似合うよ。」
「っ…僕を怒らせるのは、太子くらいですよ。」
合わさった額と視線が恥ずかしくて、妹子は視線だけは逸らして言い返す。
しかし太子はそれをよしとせず、妹子の頬を挟むように両手を添えて意識を自分の方に向けさせた。
「っ、たい…し。」
「そう。妹子はいつだって私のことを考えて、私にだけ意識を向けてればいい。摂政命令だぞっ!」
再び交わった視線に妹子が頬を赤らめると、太子は満足そうに笑ってとんでもないことを口にした。
「っ、このアホ太子!そんなことで権力使うなっ!」
妹子の体温は急上昇して、あっという間に真っ赤なリンゴ状態。
「顔真っ赤。…好きだよ、妹子。妹子のためなら私は何でもするぞ?」
「ば、バカじゃないですか!?」
口調は楽しげなのに、目だけは真剣味を帯びている太子に、妹子は嬉しい反面少し困っていた。
太子も自分も、本当はこのままではいけないと痛いほど分かっていたから。
こんな、お互いに依存しているような関係は…
「妹子…ずっと私のそばにいて、私のことを好きでいてくれるだろう?」
でも…性別も身分も、未来のこともすべて投げ捨てたって良いと、太子のそばで太子の声を聞いていると思ってしまう。
「太子…」
いつかは…いつかは、と思っているのに。
「妹子?」
「…えぇ。ずっと、太子のそばで笑って、怒って。太子だけを好きでいますよ。…大好きです。」
「私も大好きだぞっ、妹子!」
ごめんなさい。
やっぱり僕はまだ、居心地の良いこの人のそばを離れることができないんです。
―――――――
考えていたのと違った話になってしまった…orz
妹子を慰めて甘々にするつもりだったのに…!
夏祭り(飛鳥組)
admin≫
2009/07/28 20:50:34
2009/07/28 20:50:34
さちさんのブログでバトンを受け取ったときの罰ゲームが「夏祭りで短い小説を書く」とあり、これは楽しそうだ!と思い、まずは飛鳥組で書いてみちゃいました。
二回も自分のミスで消して、データが飛んだので涙目で仕上げたよ…
現代パロで妹太…?
これの前にバトンに答えろって話ですよね。すみません。あとでちゃんとやりますっ!
二回も自分のミスで消して、データが飛んだので涙目で仕上げたよ…
現代パロで妹太…?
これの前にバトンに答えろって話ですよね。すみません。あとでちゃんとやりますっ!
▼妹子!夏祭りに行くぞ!▼
「いーもーこー!」
まだ暑さの残る夕方。
二階の自室で課題をしていた妹子の耳に騒がしく自分の名前を呼ぶ声が届いた。
思わず不快そうに顔をしかめる。一瞬、無視しようかとも思ったが、確実に後で面倒なことになるので、仕方なく窓を開けて外を見下ろす。
「なんですか、たい…嫌っ、なんだその格好。」
思わず問いかける言葉を止めて呟く。
玄関の前に立っている太子は、いつものジャージ姿ではなくジャージとよく似た色の浴衣を着て、何かのアニメに出てきそうなキャラクターっぽい犬の団扇を手にしていた。
そういえば、今日は神社の祭りのある日だった気がする。…しまった、窓を開けるんじゃなかった。
思わず窓にかけた手がそのままそれを閉めようと動く。
「おい、いきなり閉めようとするな!分かってるなら降りて来い妹子!祭りに行くでおまっ!」
「分かってるから閉めようとしてるんです!祭りなら一人で行ってください。」
目ざとくそれに気付いた太子がぎゃあぎゃあ騒いでかなり近所迷惑である。
「ダメっ!この祭りは妹子と一緒に行きたいの!浴衣もないなら貸すぞ!ちょっと変な臭いするけど。」
「なんで浴衣まで変な臭いすんだよ!着たくないよ!そんな浴衣!!」
どこから出したのか浴衣一式を見せて言う太子に、妹子は思わず乗り出してツッコミを入れる。
「とにかく!先輩命令だ!今すぐ浴衣に着替えて降りて来い!じゃないと私が乗り込んでこの浴衣着せるでおまっ!」
先輩命令と言われてしまうと、もう拒否はできない。
それを無視すると、本当に太子は言ったことを実行するから。
「分かりましたよ!用意しますから家に入って待っててください!玄関辺りで!」
妹子が負けた瞬間だった。
(約一時間後…)
「お待たせしました。」
「遅いぞ、妹子!っ…!!」
玄関で待ち続け、ようやく聞こえた妹子の声に文句を言おうと振り返った太子は妹子の姿に言葉を失う。
赤い浴衣を着た妹子がそこには立っていた。
赤、といえば女物の浴衣を想像してしまうのに、妹子の着ている浴衣は女物のように柄があるわけではなく、色も少し暗くしてあるのでちゃんと男が着ているように見えて、格好良かった。
「これしかっ…なかったんですよ。」
太子が黙ったのは似合ってないとか、女みたいだと思ったからだと思ったらしい妹子は、不機嫌そうに呟いた。
「すごく、似合ってるぞ。」
「っ…!」
そう言って太子がはにかんだような笑みを見せるから。
今度は妹子が言葉を失った。
「ほ、ほらっさっさと行きますよ!もう祭りは始まっているんでしょう?!」
「なんだよ!待たせたのは妹子のくせに!」
頬が赤いのをごまかすように言って、妹子が下駄を履き始めると、太子はムッとしたように言い返す。
「大体、いきなり来て祭りに行くから浴衣を着てこいなんて太子が言うからいけないんです!」
「何おぅ!祭りと言えば浴衣に決まってるだろ!」
言いながら家を出ると、太子も言い返しながら後をついてくる。
「祭りに浴衣着てくるのなんて、太子と子どもくらいですよ。」
「そうか…?結構着てくると思うんだがなぁ…」
そんな風に言い合いを続けていれば神社につくのはすぐで。
すでに多くの人で溢れ返っていた。
緑色の着物ではしゃいでいる壮年の男と、それにチョップをしている青年がいたり、褐色肌に銀髪の青年と色白で黒髪の男がリンゴ飴を食べていたり。
他にも大勢の人が祭りを楽しんでいる。
「うわ、すごい人ですね。こんなんで歩けるのか…?」
「妹子!私、射的やりたい!射的!」
想像以上の人の多さに思わず呟いた妹子の言葉もお構いなしに太子は言って、さも当然のように妹子の手を握って歩き出した。
「嫌っ、手汗でなんか湿ってる…って、そうじゃなくて!太子!分かりましたけど、なんで手を繋ぐんだ!」
「え、だってせっかく妹子とデートなのにはぐれたら嫌じゃないか。」
妹子が言いながら手を離そうとすると、太子は立ち止まってはっきりと言った。
「デート…だったんですか、これ。」
太子の言葉に、妹子が少し驚いたように聞き返す。
「…私、結構そのつもりで妹子のこと誘ったんだけど…」
妹子は違うのか…?と、太子は残念そうな…少し、落ち込んだような表情を見せた。
「…射的、行きたいんですよね。」
しゅん…としている太子の手を、今度はしっかりと握り返して妹子は言った。
「え…っ?あ…うん…」
戸惑う太子を見て、少しほくそ笑む。
これだけ人がいるんだ、手くらい繋いでいても誰も気に止めないだろう。
今日くらい…恋人らしくしてみようかな。
射的に行ってからも、太子と妹子はずっと手を繋いだまま屋台を回った。
太子が行きたいと言ったところはすべて回ったし、妹子が興味を持ったところは言わなくても太子が気付いて見に行った。
今日だけは、周りの目なんて全く気に止めず、太子も妹子もただ純粋にデートを楽しんだ。
「なぁ、妹子…ここの打ち上げ花火、どんなのか知ってるか?」
いくぶん涼しくなって、空もそろそろ暗くなってきた頃。
カレー味のイカ焼きを食べながら、太子が不意に問いかけた。
妹子もじゃがバターを頬張りながら答える。
「知ってますよ。普通の打ち上げ花火の形だけじゃなく、いろんな形に作った花火が上がって、すごく綺麗だとか。」
「それでな…私、この間良いところを見つけたんだけど…。」
イカ焼きの最後の一口を食べてから、太子にしては珍しく妹子の様子を窺うように言った。
「良いですね。じゃあそこで見ましょう。…口の端、付いてますよ。」
妹子もじゃがバターを食べ終え、太子の言葉に頷いてから、口の端のタレに気付き何も考えずそれを舐めとるように口付けた。
「っ!い、いもっ…妹子!いきなりはっ、は…反則だっ!」
口付けられた口端を隠すように手で触れて、太子は真っ赤になって声を上げる。
「…?あ…っ!」
最初は理解できず首をかしげた妹子だが、そのあとすぐに自分のした行為を思い出し、太子同様顔を真っ赤に染めた。
「と、とっ…とにかく…花火…見れる場所行かないかっ…?」
「そっ、そうですね!」
二人してつっかえながら言葉を交わし、早足で歩き出す。
とにかく、ここから離れたかった。
「っ…」
「……」
人気のない、けれど花火の上がる位置は大きく開けた場所で、何だかんだでずっと手を繋いでいた太子と妹子はどちらともなく離し、距離をおいて座り込む。
会話は、お互い何を話してよいのか分からずまったくできなかった。
「……」
沈黙を破るように大きな音が響いて一瞬辺りが明るくなる。
「…あ…花火、もう始まったのか。」
それに反応して空を見上げた妹子が独り言のように声を漏らす。
「妹子っ…あのっ、な…?」
それをきっかけに、黙っていた太子が妹子に声をかけた。
「…?何ですか、太子。」
花火を見上げていた妹子は、そのまま視線を太子に移動させて聞き返す。
気まずさは、花火とともに弾けて消えたようだ。
「…ここの花火って、いろんな形があるだけど…」
「そうですね。…それが何か?」
さっきも言ったことをなぜまた言うのか。
妹子は首をかしげて問いかける。
「その中にな?ひとつだけ…いつ打ち上げられるかは分からないんだけど、ひとつだけ…ハートの形の花火があるんだ。」
「はぁ…そうなんですか。」
ハートの形を作るなんて、よくやるなぁと思いつつ、妹子は相槌を打つ。
やはり、だから何なのかは分からない。
「そ、その…ハートの花火が…打ち上げられた瞬間に、キスした二人は…ずっと、一緒にいられるって、言われてて、だな…」
そう言った太子の頬がほんのり赤らんだ。
…なんだ、この乙女は。
「…それで、今日の祭りそんなに行きたがってたんですか。」
「ううっ、うるさいな!そうだよ、悪いかコラァ~!」
呆れた声で妹子が言うと、太子は恥ずかしいのか両手をあげて声を張り上げる。
「まったく…太子はほんとに、アホです…ねっ!」
「うぉっ!?」
言いながら振り上げた太子の両手を掴んで妹子が太子をそのまま押し倒し、太子は驚き声をあげる。
「何すんだっ、こんなとこで!つーか、アホって言うなこのアホ妹子!」
太子はじたばたと暴れて妹子の手を離そうとする。
これでは、ハートの花火が打ち上がった瞬間を見ることができない。
「アホだからアホだっつってんだ、アホ太子。そんなジンクスみたいなものに頼らなくたって…」
暴れられないように足は自分が乗ることで押さえ、両手は掴んだまま地面に押し付けて。
妹子は太子と唇が触れあう寸前まで顔を近づけた。
「っ…!」
「一生、側に居てやりますよ…今度こそ。」
誓うように言って、妹子は太子と唇を重ね合わせた。
同時に、きれいなハートの形が空を彩る。
…祭りの夜が見せた、奇跡のような瞬間。
【終】
「いーもーこー!」
まだ暑さの残る夕方。
二階の自室で課題をしていた妹子の耳に騒がしく自分の名前を呼ぶ声が届いた。
思わず不快そうに顔をしかめる。一瞬、無視しようかとも思ったが、確実に後で面倒なことになるので、仕方なく窓を開けて外を見下ろす。
「なんですか、たい…嫌っ、なんだその格好。」
思わず問いかける言葉を止めて呟く。
玄関の前に立っている太子は、いつものジャージ姿ではなくジャージとよく似た色の浴衣を着て、何かのアニメに出てきそうなキャラクターっぽい犬の団扇を手にしていた。
そういえば、今日は神社の祭りのある日だった気がする。…しまった、窓を開けるんじゃなかった。
思わず窓にかけた手がそのままそれを閉めようと動く。
「おい、いきなり閉めようとするな!分かってるなら降りて来い妹子!祭りに行くでおまっ!」
「分かってるから閉めようとしてるんです!祭りなら一人で行ってください。」
目ざとくそれに気付いた太子がぎゃあぎゃあ騒いでかなり近所迷惑である。
「ダメっ!この祭りは妹子と一緒に行きたいの!浴衣もないなら貸すぞ!ちょっと変な臭いするけど。」
「なんで浴衣まで変な臭いすんだよ!着たくないよ!そんな浴衣!!」
どこから出したのか浴衣一式を見せて言う太子に、妹子は思わず乗り出してツッコミを入れる。
「とにかく!先輩命令だ!今すぐ浴衣に着替えて降りて来い!じゃないと私が乗り込んでこの浴衣着せるでおまっ!」
先輩命令と言われてしまうと、もう拒否はできない。
それを無視すると、本当に太子は言ったことを実行するから。
「分かりましたよ!用意しますから家に入って待っててください!玄関辺りで!」
妹子が負けた瞬間だった。
(約一時間後…)
「お待たせしました。」
「遅いぞ、妹子!っ…!!」
玄関で待ち続け、ようやく聞こえた妹子の声に文句を言おうと振り返った太子は妹子の姿に言葉を失う。
赤い浴衣を着た妹子がそこには立っていた。
赤、といえば女物の浴衣を想像してしまうのに、妹子の着ている浴衣は女物のように柄があるわけではなく、色も少し暗くしてあるのでちゃんと男が着ているように見えて、格好良かった。
「これしかっ…なかったんですよ。」
太子が黙ったのは似合ってないとか、女みたいだと思ったからだと思ったらしい妹子は、不機嫌そうに呟いた。
「すごく、似合ってるぞ。」
「っ…!」
そう言って太子がはにかんだような笑みを見せるから。
今度は妹子が言葉を失った。
「ほ、ほらっさっさと行きますよ!もう祭りは始まっているんでしょう?!」
「なんだよ!待たせたのは妹子のくせに!」
頬が赤いのをごまかすように言って、妹子が下駄を履き始めると、太子はムッとしたように言い返す。
「大体、いきなり来て祭りに行くから浴衣を着てこいなんて太子が言うからいけないんです!」
「何おぅ!祭りと言えば浴衣に決まってるだろ!」
言いながら家を出ると、太子も言い返しながら後をついてくる。
「祭りに浴衣着てくるのなんて、太子と子どもくらいですよ。」
「そうか…?結構着てくると思うんだがなぁ…」
そんな風に言い合いを続けていれば神社につくのはすぐで。
すでに多くの人で溢れ返っていた。
緑色の着物ではしゃいでいる壮年の男と、それにチョップをしている青年がいたり、褐色肌に銀髪の青年と色白で黒髪の男がリンゴ飴を食べていたり。
他にも大勢の人が祭りを楽しんでいる。
「うわ、すごい人ですね。こんなんで歩けるのか…?」
「妹子!私、射的やりたい!射的!」
想像以上の人の多さに思わず呟いた妹子の言葉もお構いなしに太子は言って、さも当然のように妹子の手を握って歩き出した。
「嫌っ、手汗でなんか湿ってる…って、そうじゃなくて!太子!分かりましたけど、なんで手を繋ぐんだ!」
「え、だってせっかく妹子とデートなのにはぐれたら嫌じゃないか。」
妹子が言いながら手を離そうとすると、太子は立ち止まってはっきりと言った。
「デート…だったんですか、これ。」
太子の言葉に、妹子が少し驚いたように聞き返す。
「…私、結構そのつもりで妹子のこと誘ったんだけど…」
妹子は違うのか…?と、太子は残念そうな…少し、落ち込んだような表情を見せた。
「…射的、行きたいんですよね。」
しゅん…としている太子の手を、今度はしっかりと握り返して妹子は言った。
「え…っ?あ…うん…」
戸惑う太子を見て、少しほくそ笑む。
これだけ人がいるんだ、手くらい繋いでいても誰も気に止めないだろう。
今日くらい…恋人らしくしてみようかな。
射的に行ってからも、太子と妹子はずっと手を繋いだまま屋台を回った。
太子が行きたいと言ったところはすべて回ったし、妹子が興味を持ったところは言わなくても太子が気付いて見に行った。
今日だけは、周りの目なんて全く気に止めず、太子も妹子もただ純粋にデートを楽しんだ。
「なぁ、妹子…ここの打ち上げ花火、どんなのか知ってるか?」
いくぶん涼しくなって、空もそろそろ暗くなってきた頃。
カレー味のイカ焼きを食べながら、太子が不意に問いかけた。
妹子もじゃがバターを頬張りながら答える。
「知ってますよ。普通の打ち上げ花火の形だけじゃなく、いろんな形に作った花火が上がって、すごく綺麗だとか。」
「それでな…私、この間良いところを見つけたんだけど…。」
イカ焼きの最後の一口を食べてから、太子にしては珍しく妹子の様子を窺うように言った。
「良いですね。じゃあそこで見ましょう。…口の端、付いてますよ。」
妹子もじゃがバターを食べ終え、太子の言葉に頷いてから、口の端のタレに気付き何も考えずそれを舐めとるように口付けた。
「っ!い、いもっ…妹子!いきなりはっ、は…反則だっ!」
口付けられた口端を隠すように手で触れて、太子は真っ赤になって声を上げる。
「…?あ…っ!」
最初は理解できず首をかしげた妹子だが、そのあとすぐに自分のした行為を思い出し、太子同様顔を真っ赤に染めた。
「と、とっ…とにかく…花火…見れる場所行かないかっ…?」
「そっ、そうですね!」
二人してつっかえながら言葉を交わし、早足で歩き出す。
とにかく、ここから離れたかった。
「っ…」
「……」
人気のない、けれど花火の上がる位置は大きく開けた場所で、何だかんだでずっと手を繋いでいた太子と妹子はどちらともなく離し、距離をおいて座り込む。
会話は、お互い何を話してよいのか分からずまったくできなかった。
「……」
沈黙を破るように大きな音が響いて一瞬辺りが明るくなる。
「…あ…花火、もう始まったのか。」
それに反応して空を見上げた妹子が独り言のように声を漏らす。
「妹子っ…あのっ、な…?」
それをきっかけに、黙っていた太子が妹子に声をかけた。
「…?何ですか、太子。」
花火を見上げていた妹子は、そのまま視線を太子に移動させて聞き返す。
気まずさは、花火とともに弾けて消えたようだ。
「…ここの花火って、いろんな形があるだけど…」
「そうですね。…それが何か?」
さっきも言ったことをなぜまた言うのか。
妹子は首をかしげて問いかける。
「その中にな?ひとつだけ…いつ打ち上げられるかは分からないんだけど、ひとつだけ…ハートの形の花火があるんだ。」
「はぁ…そうなんですか。」
ハートの形を作るなんて、よくやるなぁと思いつつ、妹子は相槌を打つ。
やはり、だから何なのかは分からない。
「そ、その…ハートの花火が…打ち上げられた瞬間に、キスした二人は…ずっと、一緒にいられるって、言われてて、だな…」
そう言った太子の頬がほんのり赤らんだ。
…なんだ、この乙女は。
「…それで、今日の祭りそんなに行きたがってたんですか。」
「ううっ、うるさいな!そうだよ、悪いかコラァ~!」
呆れた声で妹子が言うと、太子は恥ずかしいのか両手をあげて声を張り上げる。
「まったく…太子はほんとに、アホです…ねっ!」
「うぉっ!?」
言いながら振り上げた太子の両手を掴んで妹子が太子をそのまま押し倒し、太子は驚き声をあげる。
「何すんだっ、こんなとこで!つーか、アホって言うなこのアホ妹子!」
太子はじたばたと暴れて妹子の手を離そうとする。
これでは、ハートの花火が打ち上がった瞬間を見ることができない。
「アホだからアホだっつってんだ、アホ太子。そんなジンクスみたいなものに頼らなくたって…」
暴れられないように足は自分が乗ることで押さえ、両手は掴んだまま地面に押し付けて。
妹子は太子と唇が触れあう寸前まで顔を近づけた。
「っ…!」
「一生、側に居てやりますよ…今度こそ。」
誓うように言って、妹子は太子と唇を重ね合わせた。
同時に、きれいなハートの形が空を彩る。
…祭りの夜が見せた、奇跡のような瞬間。
【終】
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