ちょこれーとまじっく!(鬼男×閻魔)
2010/02/14 00:00:00
タイトルに深い意味はありません。さらに言うなら、本編との関わりも薄いです。
というわけで、浮かんでしまったのでバレンタインデーネタです。
・最初から最後までいちゃついてます
・後半少し閻魔が脱がされます。
・反省はするけど、後悔はしてない。(終わり方について
・転んでもただじゃ起きない鬼男くん(笑)
「鬼男くん、今日はバレンタインデーだよ!」
2月14日。閻魔は開口一番高いテンションでそんなことを言ってきた。鬼男の方はといえば、だからなんだ…と言いたげに閻魔の眩しい笑顔を見返す。
「バレンタインデーだから何だって言うんですか。仕事はいつもどおりですよ。」
「もう、相変わらずだなぁ…。仕事がいつもどおりなのは仕方ないから諦めるけどさ、チョコレートはちょうだいよ。」
そっけなく鬼男が言うと、閻魔は拗ねたように口を尖らせて答え、鬼男の目の前に両手を差し出した。
「そういうものって普通要求しないだろ…。大体、なんで僕が大王にチョコレートをあげないといけないんですか。そもそも、そういうことは製菓会社が勝手に決めたことであって僕らには関係な…」
閻魔の様子にため息をついて、鬼男がまくし立てるようにバレンタインデーというイベントに関しての異論を述べていると、だんだん閻魔の表情が曇って泣きそうになっていることに気づいた。思わず言葉を途中で区切って閻魔の目を見つめてしまう。
じっと、わずかに潤んだ赤い瞳も鬼男を見つめ返してくる。
「鬼男くん…俺のこと、嫌い…なの…?」
「っ…」
止めとばかりに言われたその言葉に、鬼男はぐっと息を詰める。しばし睨み合いならぬ見つめ合いが続いたが、最後には鬼男が肩を落としてため息をついた。
「…今日のおやつを作るのと一緒に作りますから、仕事が終わるまで待ってください。」
「やったぁ!さすが鬼男くん!ありがとうっ!!」
鬼男の返答を聞いて嬉しそうに言いながら飛び上がって、満面の笑顔を見せる閻魔。その笑顔を見ただけで理屈もかかる手間も関係なしに最高のものを仕上げてやろうという気になってしまうのだから、大概自分は甘いなと鬼男は自嘲気味に笑った。
◇◇◇
「ほら、朝言ってたチョコレート。ある材料で作ったので大したものはできませんでしたが…」
「わぁ…!ちょっと、これで大したものじゃないって君の中でチョコレートはどれだけ豪華なお菓子なの…?」
仕事が終わり、掃除も終えた執務室でまた食べ散らかされるのはごめんだとわざわざ閻魔の部屋まで持ってきた鬼男作のバレンタインデーのチョコレートは、丸いチョコレートケーキの上にハートや星型のチョコレートクッキーが飾られ、中央にはホワイトチョコレートのペンで『Happy Valentine』の文字まで書かれていた。
閻魔はそのレベルの高さに驚き、少し困ったような表情で呟いた。
「チョコレートひとつで僕の気持ちは疑われてしまうみたいなんで、渡す以上は出来る範囲で僕の出せるもの全てを出したつもりです。」
「あはは…今朝の、気にしてたんだ…」
とげを含んだ鬼男の物言いに苦笑して、ごめんね…?と小さく謝ると、貰ったケーキを持ったままそっと鬼男との距離を縮めて軽くもたれかかる。反射的に鬼男が肩を抱いて支えてしまうと、閻魔は嬉しそうに鬼男の上目遣いに見上げた。
「食べてもいーい?」
「お前以外に食べる奴はいませんよ。」
様子をうかがうように閻魔が問いかけると、わざわざ聞かれたのが気恥ずかしかったのかぺちっと軽く頭を叩く音ともに返ってくる言葉。閻魔はそれすら嬉しいのかにっこり笑って早速ケーキと一緒に渡されたフォークを手に食べ始めた。
「んん~、やっぱりおいしい!えへへ、ほんとにありがとうね鬼男くん!」
口の端に子どものようにチョコレートを付けて、それでも本当に美味しそうにケーキをほお張り閻魔は言った。その姿が可愛いと思ってしまった鬼男は、口の端のチョコレートを親指で拭ってやりながら「そういえば…」と口を開いた。
「僕には要求しておいて、大王からはないんですか?」
「ぅえ!?…あ、の…えーっと…」
鬼男の問いにどこか焦ったように声を上げて、言いづらそうに視線を巡らせる閻魔に、鬼男はにやりと楽しげに口角を上げる。最近は出かける暇などなかったし、めったにお菓子作りをしない閻魔がチョコレートを作っていることはまず有り得ないだろう。
「じゃあ、勝手に貰いますね。」
「へ…っ、ん…ぅ…!?」
口の端を拭った手をそのまま閻魔の後頭部に回し、鬼男は閻魔に口付けた。先程まで食べていたチョコレートケーキのせいで唇は甘く、口内もチョコレートの香りに包まれていたので、鬼男はそれを残らず食べつくすように荒々しく舌を絡めては動き回る。閻魔がケーキを落す前にさり気なく手からケーキの皿を奪ってサイドボードに置くことも忘れずに。
閻魔とチョコレートを十分に味わったところで鬼男がようやく唇を離すと、閻魔はそのまま鬼男の胸にくったりともたれかかった。
「ごちそうさまでした。」
もたれかかった閻魔を優しく受け入れて抱きとめると、くしゃりと髪を撫でながら言う鬼男。閻魔は腕の中で身じろぎすると鬼男を見上げて悪戯っぽく笑った。
「ん…ね、おいしかった…?」
「何言ってるんですか。僕が作ったんだから当然だろ。あんたにまずいものは食わせません。」
閻魔の問いに鬼男は不敵な笑みを浮かべてそんなことを言ってのける。
「もうっ、鬼男くんはもっとこう…ムードとかそういうのはないのっ?」
閻魔はムッと眉根を寄せて拗ねたように文句を言いながら、鬼男の腕から離れて体を起こした。と、同時にコロンと転がり落ちる四角い箱。
「あっ…!」
それに気づいて声を上げた閻魔は、慌てて拾い上げ自分の背中に隠してしまう。鬼男もその存在をしっかりと認識してしまったし、その上でそこまで慌てた態度を取られれば誰でも気がつくというものだ。
「大王、その箱…もしかして…」
「ち、違うよ!いや、違わないんだけどっ!でも…っ、その…鬼男くんのみたいに、おいしくない…から…。」
鬼男が期待するように問いかけると、それを遮るように閻魔は声を張り上げ、それから恥ずかしそうにうつむいて小さな声でぼそぼそと呟く。その表情と言葉から、慣れないくせに手作りに挑戦して、失敗したのであろうことに鬼男は気がついた。
「大王…それ、僕にください。」
悲しそうに、悔しそうにうつむいたまま顔を上げようとしない閻魔の頭を撫でて、優しく声をかける鬼男。
「だからっ、」
「それでも、大王が僕のために作ってくれたのなら僕は食べたいです。」
顔を上げてなおも言葉を続けようとした閻魔を遮り、鬼男は真剣な表情で閻魔の目を見て包み込むような柔らかい語調で答えた。
閻魔はそれでもしばらくは悩むように視線をさ迷わせたが、最終的に恐る恐るといった具合で後ろ手に隠していた箱を鬼男に差し出してきた。
「ありがとうございます。」
鬼男はそれを受け取ると、優しい笑顔で礼の言葉を述べる。鬼男の髪と瞳の色に合わせた包装紙とリボンに不器用に包まれた四角いその箱をじっと眺めて、鬼男は少し照れくさそうに頬を掻いた。
「開けていいですか?」
「う、ん…。でも、ホントに…おいしくないからね…?」
不安げな表情を前面に出した閻魔に伺いを立てると、閻魔は頷きつつもさらに念を押してくる。相当酷い出来なのか、それとも毎日鬼男のお菓子を食べているから卑屈になっているだけなのか。
鬼男はそんな閻魔に苦笑して箱のリボンを解き、包装紙から箱を取り出す。ふたを開けて中を見ると、確かにあまり形がいいとは言えないチョコレートが控えめに収められていた。
「いただきます。」
一粒手にとって、鬼男が口に含むその瞬間まで閻魔が不安そうな表情は晴れることはなく。
「っ、う…!」
「や、やっぱまずかったよね!?ごめんごめん、鬼男くん!今すぐ出していいからっ、ほらティッシュここにあるし!」
口元を押さえてうずくまった鬼男に、閻魔は慌てて背中をさすりながら枕元においてあったティッシュを手に取り差し出した。声も表情も悲しみと焦りに満ちていて、今にも泣き出してしまいそうだ。
「言うほど、悪くないじゃないですか。」
「へ…?」
差し出した腕を掴まれたかと思ったら、そんな言葉とともに鬼男が顔を上げた。その表情はいつもどおりで、気分が優れないとか気持ち悪そうな雰囲気はまったくと言っていいほど無く、閻魔はひとり不思議そうにぱちくりと目を丸くする。
「形はそんなに綺麗じゃないかもしれませんが、味は悪く無かったですよ。」
「っ…俺、さっきの鬼男くんの様子見てすごく焦ったのに!あぁーもう!渡したこと後悔して損したぁー!」
鬼男の言葉から先程うずくまったのは演技だと理解した閻魔は、途端に肩の力が抜けて、それと同時に怒りがこみ上げてきた。
「そう言わないで下さいよ。ちょっとした冗談だろ。」
「でもさぁ…って、何さり気なく脱がそうとしてるのさちょっと!」
鬼男が弁解するように閻魔を引き寄せて言った言葉に、閻魔が納得がいかないといった様子でさらに文句を言おうとしたところで、鬼男の手が腰紐を解いていることに気づいて慌てて声を上げる。
「大王があんまり可愛いんで、ちょっとこのまま部屋に戻るのはもったいないなと。」
「何わけわかんないことっ…!もう、ちょっと!鬼男くんっ!!」
言いながらも鬼男の手は止まることを知らず。閻魔の抵抗空しく、二人の体はベッドに沈んだ。
【終】
――――――
毎回こんな終わり方で申し訳ありません。全てはこらえ性の無い鬼男くんが悪いのです。
バレンタインデーだし甘く!と思って書いていたのですが、よく考えれば自分の文章は大抵甘いものでした^q^
シリアスや甘くない文章も書けるようになりたいものです。では、ここまで読んでいただきありがとうございました!
隠す必要もないかな、と改めて思った。^q^
この話の続きが読みたいという方がいればコメントかスカイプで言って下さい。お渡しします。流れで分かるようにエロに突入しますがw
ID:wasurenagusa-45