セーラー服と反乱(鬼男×閻魔)
2010/06/30 20:27:28
最近、めっきり小説を書いていないので…場繋ぎ的な。^q^
閉鎖したサイトから持ってきたやつです。
以前陵さんに献上した作品。これは、多分古本屋で二巻だけ買って書いた奴・・・だったと思う。
・妖しい雰囲気(笑)が軽く漂います。
・タイトルに特に意味はない!^q^
・閻魔がちょっと弱気。
・鬼男くんは相変わらずカッコつけ^q^
・きっと私は初めて日和を読んだそのときから、鬼男くんに夢を見すぎているんだろうw
「鬼男くーん!」
仕事が一段落したところで、やたらとテンションの高い声が僕の耳に届いた。
「何ですか?」
僕は書類から目を離し、大王の方に顔を向ける。と…
「ふふっ、ねぇ鬼男くん?」
後ろ手に何か隠して、企んでいるような顔をした大王がすぐ近くにいた。…嫌な予感がする。
「じゃーん!」
目の前に差し出されたものは、セーラー服。
七つ道具に入っていたのとは別の物だ。また買ったのか、コイツ。
「…まさか僕に着ろとか言うんじゃないでしょうね?」
「さっすがオレの秘書!うん、絶対似合うから着てみてよ!」
僕の当たって欲しくなかった問いに、大王は嬉々として答えた。
「刺すぞこの変態セーラー野郎。」
僕は爪を伸ばして大王に突き刺す。
「ちょ、痛い痛い!って言うか、刺すぞって言う前からもう刺してるってどうなの、それ!」
いつものように騒ぐ大王に、いつも通りすぐ爪を抜いてやる。
「まったく…。」
爪を軽く振ってから元に戻す。何回やっても懲りないんだ、コイツは。
「ねー、せっかく買ってきたんだから着てよ~。いいでしょ、鬼男くーん…」
僕の服を握り、甘えるように猫撫で声を出して大王は言う。
うるさいからもう一回やってやろうか。…いや、余計うるさくなるな。
「着ねぇよ!…大体、そんなもの僕に着せて何が楽しいんですか。」
「えー?だってぇ~、似合いそうだなって思ったら着せたくなるものでしょ?」
前で手を組んでわざとらしく上目使いをして聞いてくるのは、ひょっとして作戦なのか?
…少し、揺らぐものがあった。
「思いません。あと、もじもじすんな気持ち悪い。」
書類をまとめながら考えと違うことを口にする。
「鬼男くんってば相変わらず辛辣~。オレだって傷つくのに…。」
セーラー服を持ったまま、机に『の』の字を書き始める大王は、可愛いと思う反面かなりウザい。
「…大王。」
僕の声に反応して顔を上げた大王の唇に、触れるだけの口づけを送る。
大王は一瞬呆気にとられたように僕を見た後、一気に顔を赤くした。
「い、今のは…何の口づけかなぁ…?」
「強いて言うなら、慰めですかね。」
「だったらこれ着てくれたっていいじゃん!」
僕の返答に、大王はセーラー服を再び僕に差し出して叫んだ。
誰が着るか。
「そもそも、自分は着ないのに僕に着せようってのがまず間違ってるでしょう。」
僕がため息混じりに言うと…
「ギクッ!」
あからさまに体を跳ねさせた。
「…ギクッて何だ、ギクッてのは!着てるのか?着てるんだなこの変態セーラー大王イカがっ!!」
今度こそ容赦なくざっくり爪を刺してやった。
「ぎゃああー!!本日2回目っ!てか、ち…血ぃ~!」
あぁ、やっぱうるさくなった。…いっそのこと持ってるセーラー全部切り刻むか。
「ひ、酷い…。しかも、今回は全部くっつけるなんて…」
「自業自得ですよ。」
ぐすぐすと泣きながら文句を言う大王の顔をハンカチで拭いてやる。
これ以上騒がれるとさすがに厄介だ。
「言葉と行動、合ってないよ…」
大王がボソッと呟く。
「蹴られたいのか。」
「け、結構ですっ!」
イラッとして言い返すと、大王は首をブンブン横に振って答えた。
「ったく…」
僕がため息をつくと、大王はふふっと笑って僕の首に手を回し、抱きついてきた。
「何笑ってんですか。」
とりあえず支えるために腰に手を回して問いかける。
すりすりと甘えるように僕の胸に頬を寄せる姿は、さながら猫のようだ。
「ん~?鬼男くんが反応してくれるのが何か嬉しくってさ。」
大王は少し顔を上げて、またもや上目遣いに僕を見ると、ふわりと至極幸せそうに微笑んだ。
…何だコイツ。オッサンの癖にこの可愛さはどこから来てるんだ。
「当然でしょう。何を今更言ってるんだか。」
「そうだけど…時々ふと思う時があってもいいじゃん。」
僕が素っ気なく答えると、ムッとした表情で言い返してきた。
何を不安がってるんだ。らしくもない。
「僕が大王の言葉に応えなかったときがありますか?無いでしょう。…下らねぇことうだうだ考えんな。」
ギュッと、折れそうなくらい細い体を抱き締めてやる。
不安にならなくたって、僕はいつだって大王の傍にいるのに。…なんか、信用されてないみたいで腹が立つ。
「鬼男くん…」
紅玉の瞳が艶めいてきて、僕の名前を呼んだらそれは合図。
死者の裁きはもう終わっているし、書類は切羽詰まるほど溜まっている訳でもない。
例え問題があったとしても、妙に不安定になっている上司をこのまま放っておくなんて、僕は嫌だけど。
「理由は知りませんが…そんな下らないこと、考える余裕すら無くしてやりますよ。」
言って、大王に噛みつくように唇を重ねてやった。
壁に押し付けて、服の袷から手を滑り込ませる。
「っ…!」
ビクッ、と大王の体が跳ねた。
僕の腕を握りしめて、ねだるような目を向けてくる。珍しく積極的だ。
「ふっ…ぁ…」
薄い胸に手を這わしながら口づけは顎のラインを通って首筋に移動させた。
僕の制服と違って、大王の服は腰のところを帯で締めているだけだから、軽く引っ張れば簡単にはだける。
肩口に唇を寄せて、強く吸い上げた。
「ぁっ!」
もう足が震えてる。壁に背を預け、僕が片手で支えているとはいえ、立っているのはかなり辛いはず。
僕は、大王の耳元に唇を寄せて甘噛みしてから問いかける。
「大王。寝室に行きませんか…?」
大王は熱に浮かされたように潤んだ瞳で僕を見、震える手を僕の首に回す。
そのまま横抱き(俗に言うお姫さま抱っこ)にして、寝室のドアを開けた。
◇◇◇
「もう…少しは手加減してよ…」
情事の後、大王は布団に寝転がったまま少し掠れ気味の声で呟いた。
「求めてきたのは大王ですけどね。」
寝台の端に腰かけて、くしゃりと大王の頭を撫でてやると、気持ち良さそうに細められる目。…マジで猫だな、コイツ。
「んー…だって鬼男くんが離れるとすぐ冷たくなるんだもん、オレ。」
体温を分けても、すぐに元通り冷たくなる体。
跡をつけても、驚異的な再生能力ですぐに消えてしまう。
「全部、幻のような気がしてくるんだ。」
自嘲的な笑みを浮かべる大王。
やっぱり僕は、信用されてないんだろうか。
どれだけ抱いても、愛を囁いても、結局この人には響かない。
「僕は、そんなに信じられませんか?」
「え…ちがっ、違うよっ?そういう訳じゃなくて…!」
慌てて否定しようとする大王を再び組み敷く。
「お、にお…く…」
「僕は傍にいるって、何度言えば分かるんだよ。」
肩を掴む手に力がこもる。…なんで、伝わらないんだ。
「だって、さ…鬼男くんは、オレと違っていつか終わりが…転生の日が、来るじゃない…」
大王の顔が、泣くのを必死に我慢するように歪んだ。
「っ…」
言葉に詰まる。
そんなことを考えてるとは思わなかった。
「…ごめん。」
言ってから、しまったと思ったのか大王は目を逸らして謝ってきた。
僕は、大きく深呼吸をひとつ。
「そんなの、関係ない。」
「え…?」
きょとん…と、今にも溢れそうに涙を溜めた紅玉を僕に向ける。
「そんなこと今は関係ない。アンタは、僕が今にも消えそうに見えるんですか?僕が、アンタから離れようとしてるように見えるんですか?」
「そんなっ…!」
「僕は今ここに、アンタの傍にいます。手を伸ばせばすぐに触れられるくらい近くで、アンタと会話してる。」
大王の手を取り、僕に触らせる。冷たい分、僕の存在がよりはっきり分かるはずだ。
「転生の日は確かにいつかは来る。でもそれは、もっと先の話だ。今恐れることじゃない。
僕は、いつでもアンタの傍にいます。それこそホントに、手を伸ばせばすぐ届く範囲に。」
「おにお、くん…」
「アンタがそれでも恐れると言うのなら、僕はその流れにだって抗います。この世界を壊したっていい。」
唖然としたようにポカンと僕の顔を見つめた後、大王は至極おかしそうに笑いだした。
「それじゃあ、オレの存在自体が揺らいじゃうよ。」
くすくすと笑いながら、大王は僕に抱きつく。…ようやく笑ったか。
「そうですね…。そのときは、一緒に転生しましょう。例えどこでどんな姿になってても、僕はアンタを見つけ出しますよ。」
「あははっ、男前だねぇ~。」
他の者は夢物語だと嘲笑うかもしれない。けれど僕は、アンタのためならそれすら容易くやって見せる。
アンタを苦しめるだけ世界なんて、絶対に認めない。
「ところで大王?」
僕の腕の中、楽しそうに笑う大王の服に手をかけながら名前を呼ぶ。
「な…何、かなっ…?」
僕の手の動きに不穏な空気を感じ取ったのか、笑いを引っ込めて逃げ腰に聞き返してくる。
当然逃げられないように体を押さえているけど。
「セーラー服、トランクの中ですか?」
「うん…そ、そうだけど…鬼男くん、まさか…」
僕の問いに、大王も察しがついたのか顔がひきつった。
「普段着てるなら良いじゃないですか。」
大王を押さえながらトランクから7つ道具の…これはその2か。その2のセーラー服を取り出した。
やっぱ少しベタベタしてたけど、まぁ下らないことを考えた罰ってことにしておこう。
「お、鬼男くんの変態!」
「アンタの影響じゃないですか?」
涙目で訴える大王に向けた笑顔は、きっと今までで一番楽しそうだったに違いない。
【終】