夏祭り(天国組)
2009/08/03 18:03:31
鬼男くんも閻魔もキャラ違いすぎます。
屋台メインなんて無謀なことを考えたのが間違いだった…。
色々考えたら少し長くなってしまいました。ションボリ…
屋台のたくさんある祭りなんて久しく行ってないよ!!
細道…設定や流れは浮かんでるけど、どうしようかな…
「おっにおくーん!」
鬼男がいつものように今日の閻魔のおやつを作っていると、閻魔が浮かれた様子でやって来た。
「何ですか、大王。おやつの時間はまだですよ。」
本日のリクエスト、シュークリームのカスタードを作る手は休めずに答える鬼男。
「分かってるよー。でもね、俺もう書類処理終わったからさ、おやつのあ」
「本当に終わったんですか?」
閻魔の言葉を遮り、書類が終わったということに対して疑いの目で確認をとる。
「むっ…ちゃんと終わらせたよ!机の上のも、隣の部屋に置いてあったのも、急ぎのもギリギリでも良かったやつも!内容もちゃんと読んだ!」
話を遮られたことに多少の腹立ちを覚えたものの、普段の自分の行動から考えれば仕方ないことだと割り切って、終わらせたことを説明する。
「…珍しいな、お前がちゃんと仕事するなんて。」
よほど驚いたのか、鬼男の手が止まり、敬語も忘れている。
「あのさ、鬼男くん…そこまで驚かれると、俺も少し傷つくんだけど。」
うなだれて、弱々しく呟く閻魔。
その言葉にハッとして、出来上がったカスタードを絞り袋に入れながら鬼男が問いかける。
「それで、珍しく仕事を全部終わらせた理由はなんですか?」
「うん、あのね…今日、大きな夏祭りがあるんだよ。」
閻魔はカスタードを入れている鬼男に近づいてその様子をじっと眺めながら答えた。
「…行きたいんですか。」
それを見て、カスタードを生地に絞り入れながら少し残ったカスタードを閻魔の口に放り込み、鬼男は問いかけると言うよりは確認するように返す。
「うん!…いいよね?」
食べたカスタードに満足そうな笑みを浮かべて問う閻魔。
「分かりました。お供します。…ほら、できましたよ。」
「ありがと、鬼男くん!大好きっ!」
鬼男が頷いて出来上がったシュークリームを渡すと、閻魔はそれを受け取って嬉しそうに笑った。
「じゃあ僕は書類の確認をしてきますので、大人しく食べててくださいね。こぼすなよ!」
「子どもじゃないんだからこぼさないよっ!失礼な!」
鬼男の言葉に負けじと言い返してから、閻魔は椅子に座って綺麗に出来上がったシュークリームを頬張った。
◇◇◇
「やっぱ暑いねー。」
「まぁ、夏ですからね。人間も、よくこれだけ集まりますね…」
夏祭りにやって来た二人は夏独特の暑さと人の多さに思わずため息混じりに呟いた。
「あ、リンゴ飴!あれ食べよ、あれ!」
とりあえず歩きながら周囲を見渡していると、閻魔が唐突に言って屋台に向かう。
「さっきシュークリーム食べたくせによく入りますね…。」
鬼男は呆れ顔で言いながらも、あとをついていった。
「どれにしようかな…」
「へぇ…最近は大きさが選べるんですね。」
大・中・小、三種類の大きさがあるリンゴ飴を見て真剣に悩む閻魔を後ろから眺めながら、鬼男も感心したように呟く。
しかし、合成着色料を大量に使用しているであろうこんな真っ赤な飴を食べて、何が楽しいのだろう。
「よし、シュークリームも食べたし中のやつにしよう。鬼男くん、一緒に食べようね!」
「え…」
閻魔の言葉に思わず固まる。
その飴を…?きっと、鬼男の目はそう閻魔に訴えていたのだろう。
「リンゴ飴、美味しいよ?…ダメ?」
首をかしげて、上目遣いに問いかけられる。
「っ…分かりましたよ。いただきます。…中のリンゴ飴、ひとつください。」
「はいよ、まいどー」
そんな風にされて嫌だと言えるはずもなく。
屋台の人にそう注文すると、どこか楽しそうに笑って答え、リンゴ飴を手渡してくれた。
「あれ…なんで一個?」
「僕は小ひとつでも食べきれる気がしないので。半分こにしましょう。」
リンゴ飴を受け取りながら問いかける閻魔に、鬼男はごく普通に答えた。
「え…」
「…?そのつもりで一緒にと言ったんじゃないんですか?」
閻魔が戸惑ったような表情をするものだから、鬼男は不思議そうに首をかしげる。
「…えっ、と…」
「あ、すみません…つい、いつもの調子で…。」
恥ずかしそうに頬を赤らめて口ごもる閻魔を見て、鬼男はここは冥界でないことを思い出した。
「すみませんが、小をもうひと」
「いいよ、半分こしよ!」
屋台の人に追加で注文しようとした鬼男の言葉を遮って、閻魔が声をあげた。
「大王…?」
「良いんだ、たぶん俺も食べきれないと思うから。…ごめんね、利益に貢献できなくて。」
驚いたように名前を呼ぶ鬼男くんにそう言って、屋台の人には苦笑いで謝る。
「気にすんな、嬢ちゃん。お前らみたいなカップル、好きだぜ!仲良くしな。」
しかし屋台の人はニッと笑って答え、閻魔の頭をポンポンと撫でる始末。
「え…?」
「っ…!」
ぽかん…とする閻魔に、思わず吹き出す鬼男。
「ん?どうした、嬢ちゃん。」
「え、ううんっ!何でもない。えへへー…ありがと、おじさん。じゃあ…行こっか、鬼男くん。」
「ふ、くくっ…はい、そうですね。」
首をかしげる屋台の人に笑顔で返し、肩を震わせている鬼男の手を取って歩き出した。
「俺、そんなに幼く…しかも女の子みたいに見える?」
「さぁ…?そんなことはないと思うんですけどね。」
リンゴ飴をなめながら問いかける閻魔に、鬼男は少し考えるように閻魔の姿を頭から爪先まで見てから答えた。
「だよねぇ…」
まったく、失礼しちゃう。と不満げに呟いて手は繋いだまま辺りを見渡す。
「ま、男に見えないくらい肌は綺麗ですからね、あんたは。」
軽く力を入れて閻魔の手を引き、自分の方に近づけて鬼男は閻魔の頬に触れながら返した。
「誉め言葉ととって良いの?それ…」
「誉め言葉ですよ。飴のせいで紅が引かれたような唇も、肌の白さに映えて…魅力的です。」
どこか納得が行かないと言いたげな目で問う閻魔に鬼男はそう囁いて閻魔の手からリンゴ飴を奪い、朱の強くなった唇に自分のそれを重ね合わせた。
「ん…っ」
触れ合うだけで、すぐに離れる。
「綺麗ですよ、すごく…。誰にも見せたくないくらい、誰よりも綺麗です…大王。」
「っ、もう…!こんなところで急に口説かないでよ、鬼男くんのバカ!は、恥ずかしいだろっ!」
慌ててプイッとそっぽを向いて言い返す閻魔。
その態度もまた可愛らしくて、鬼男は一人笑みを浮かべた。
「あ、あー!風船釣りやってるよ!行こ行こ!」
鬼男が笑っているのを気配で感じとり、居たたまれなくなった閻魔はふと目についた水風船を見てごまかすように言うと、一目散に風船釣りの屋台に駆けていった。
「一人で行ったって金ないのに…あのアホ大王イカ…」
やはり鬼男は笑みを隠すことができず、そう呟いて手に残ったままのリンゴ飴を口に入れ、閻魔の後を追う。
「やっぱ甘…」
鬼男が水風船の屋台まで行くと、閻魔は気まずそうに鬼男の方を見た。
「バーカ。」
「っ!ち…違うよ、鬼男くんと一緒にやりたかったから待ってたんだよ!」
笑って言ってやると、閻魔はカッと頬を赤らめて言い返す。
「はいはい、そういうことにしといてやるよ。…すみません、風船釣り二人分お願いします。」
「はい。頑張って釣ってくださいね。」
「どうも。ほら、大王。」
店員に渡された風船釣り用の紐を一本、閻魔に渡す。
閻魔はそれを受けとるも、どこか不満げで。
「何ですか?」
「俺、鬼男くんのそーいうとこ…なんかヤダ。」
鬼男が問うと、閻魔はポツリとそう呟いて風船の浮かぶたらいに視線を落とした。
「はぁ?いきなり何ですか。どこの話です?」
「さっきみたいに、すぐに分かったって言って話終わらせちゃうとこ!…俺ばっか、子どもみたいじゃん…」
いぶかしんで聞き返すと、返ってくるのはそんな拗ねた言葉。
「こんなところで言い合いしたって迷惑になるだけでしょう。」
自覚してるなら直せよ…そんな風に思いながら、鬼男は呆れたように答える。
「だから!そーいうところがさぁ!」
鬼男の言葉と言い方にますます苛立ったのか、閻魔は立ち上がって声を張り上げた。
「ただでさえお前が子どもっぽいのに、僕まで子どもになったら仕事が滞るだろうが。」
さも面倒くさそうに鬼男が言うから、閻魔もますます腹が立って。
「今は仕事関係ないだろ!俺は、恋人としてプライベートの話をしてるんだよ!!」
「仕事だろうとプライベートだろうと同じことです。大王が子どもっぽいので僕は我慢してやってんですよ。お前ももうちょっと精神的に成長したらどうなんだ。」
「っ…もういい!鬼男くんのバカッ!!」
鬼男のその言葉がかなり胸に刺さって、閻魔は泣きそうになるのを我慢してそう吐き捨てると、鬼男に背を向けて走り出してしまった。
「あ、おい大王!」
まさか走り去ってしまうとは思わなくて、慌てて立ち上がり名前を呼ぶも、すでに閻魔の姿は人混みに紛れてしまっていた。
「あー、もうあのアホイカが…!」
「いやぁ、今のは兄ちゃんが悪いだろう。」
苛立った様子で鬼男が吐き捨てると、どこからかそんな声がした。
「え…?」
「あんな言い方は酷いよ。」
「可哀想にあの子泣きそうな顔してたわよ?」
「恋人に対して、“我慢してやってる”はないだろう。」
鬼男が顔をあげると、今の口論を聞いていたらしい祭りの客や屋台の店員が口々に声をかけ始める。
「っ…」
そのどれもが正論で、事実で、鬼男も言葉につまる。
確かに改めて自分の言ったことを反芻してみると、ひどいことを言っていた気がする。
「よし、俺のとこのクレープやるから仲直りしてこい!」
「え…!?」
二人分のクレープを手渡されながら言われて、反射的に受け取るも鬼男の頭はついていかず。
「私のところはもう代金もいただいてしまったし、水風船は差し上げますね。」
水風船の屋台の女の人からは紫・黄色・赤・青・緑の5色の水風船を手渡され。
「追いかけて、謝ってこい!兄ちゃん!」
「そろそろ花火も始まる時間だもの。仲直りして一緒に花火見てらっしゃい。」
「えっ、あ…はぁ…」
あまりにも急展開なので、周りの人のテンションと勢いに鬼男はついていけていなかった。
「もたもたしない!あの子が一人で泣いてたらどうするんだ!さっさと行った行った!」
「え、えぇ!?…あ、はい。えーっと、ありがとうございます…?」
「礼なんか要らないから、ほら行く!」
なんだかよく分からないまま色々持たされ、背中を思いっきり押されてしまった。
しまいには「頑張れよー!」と声がかかる始末。
「はぁ…何なんだ、本当に。」
呟きつつも、やはり閻魔のことは気になっていたし、謝らなくてはとも思っていたので、好意(?)に甘えて閻魔を探すため歩き出す。
「感情的になってるときにあっちこっち曲がったりしないだろうからたぶんまっすぐ行けば会えると思うんだけど…」
のんびりしていると、渡されたクレープのクリームが溶けそうだ。
しばらく歩いていくと、人もまばらになり、神社の本殿が見えてきた。
「あ…」
鬼男は、御神木の側に座り込んで肩を震わせるイカを見つけた。
「……」
安堵と呆れを含んだため息を吐き、ゆっくりと近寄る。
「閻魔大王が御神木に慰められてどうするんですか。」
「だって…なんか、落ち着くんだもん。」
閻魔の隣に座りながら声をかけると、うつむいたままぼそぼそと返ってくる返事。
「…さっきはすみませんでした。」
「っ…!」
鬼男の謝罪にビクッと肩を震わせる。
「大王…」
「どうせ…!どうせ…俺と一緒にいたって、我慢ばっかなんでしょ…?」
鬼男が名前を呼んでも、閻魔はプイッとそっぽを向いて答える。
謝られたって、我慢していることが事実なら、一緒にいたって傷が広がるだけだ。
「…そうですね。書類処理はしないし、毎日いろんな種類のお菓子作らされるし、気紛れでよく分からない行事作るし、セーラー服はどんどん買ってくるし…」
「いいよ、もう!…そんなに、そんなに我慢してるならっ、俺と接点がない仕事場に移動して俺たちっ…んぐっ」
次々と上がっていく鬼男の言葉に堪えきれず、閻魔は口を開く。が、途中で何かを口に放り込まれ続きが言えなくなった。
口内に広がる甘ったるい飴と、リンゴの味。
「半分食べたんで残りはあげます。かなり甘くて、ちょっと時間かかりましたが。」
「う、ん…。」
当然のようになめていた飴を口に放り込まれて話を遮られたので、続きを言う気が一気に削がれてしまった。
「でも、大王の隣に秘書として…恋人として立っていられるなら、本当は我慢なんて全然苦に感じないんですよ。」
「っ…!」
「むしろ、アンタのわがままを聞いてやれるのも、むちゃくちゃなことするアンタを受け止められるのも僕だけだって、自惚れてますよ。」
すらすらと出てくる鬼男の言葉に、閻魔の顔は今食べているリンゴ飴のようにみるみる赤くなっていく。
「だから、その…これからも、大王の側にいてもいいですか?」
閻魔の顔を見て自分でも恥ずかしくなったのか、少し照れ臭そうに問いかける鬼男。
閻魔は我慢できなくなって、ガバッと鬼男に飛び付いた。
「わ、バカっ…!」
突然で反応できず、両手はクレープと水風船で塞がっていたので受け止めることもできず、鬼男は閻魔と一緒に背中から倒れ込んだ。
「俺の秘書も、恋人も鬼男君しか認めてないから!」
しかし閻魔はそれも気にせずぎゅうぎゅう鬼男にしがみついて嬉しそうに言うだけ。
「ったく…お前の秘書も恋人も僕しかできないんだから当たり前だろ。」
「うん!…でさ、そのクレープと水風船は何?」
鬼男が仕方なく言い返すと、閻魔は嬉しそうに頷いてから鬼男の手を見て問いかけてくる。
「あぁ…さっきの会話を聞いてた方々が、謝ってこいって言ってくれたんです。…クリーム、溶けてきてるんで食べません?」
「あ、そっか。周り、人いっぱいいたもんね…。もらったんなら食べる。」
鬼男に言われて離れると、また同じように座りクレープを受けとる。
「あのさぁ…鬼男君?」
クレープを食べ始めながら閻魔が声をかけた。
「何ですか?」
鬼男もクレープを食べながら聞き返す。
「俺さぁ…子どもっぽいかもしれな…あ。」
「あ、始まりましたね。花火。」
閻魔の声に被さるように大輪が音を響かせた。
「綺麗だねー。」
「…そうですね。」
しばし、二人して大きな音ともに鮮やかな花を咲かす空を見上げる。
「それで、さっき言いかけた言葉はなんですか。」
空から閻魔に視線を戻して、鳴り響く音に負けないように少し音量を上げて問いかけると、閻魔も鬼男の方を見て答えた。
「あ、うん。あのさ…俺、子どもっぽいかもしれないけどさ…俺も、鬼男くんの力になりたいわけよ。」
「…はい。」
「だから、苦にならないって言っても、我慢ばっかさせたい訳じゃなくてさ。俺にも…ちょっとくらい、わがまま言ってほしいな…とか…ね、思っちゃったりするわけなんだよ、俺は。」
閻魔から目を離さず、黙って聞いてくれる鬼男に少し気恥ずかしくなったのか、閻魔の視線が空をさ迷う。
「ダメ、かな…?」
とりあえず、言いたいことは言ったと鬼男に確認をとる閻魔。
「…僕は、わがままを言う必要なんてないんですよ。」
フッと柔らかい笑みを浮かべて、鬼男が言う。
「え…?」
「僕の願いはいつだってひとつで、その願いは常に叶っているんですから。」
意味が理解できないのか聞き返す閻魔に、鬼男は続けて言って彼の耳元まで唇を近づけた。
「ずっと、あなたの側にいることです。大王…」
「っ!」
「もう、叶っているでしょう?」
ビクッと肩を震わせて頬を赤らめる閻魔を楽しげに眺めて確認をとる鬼男に、閻魔はコクリと頷くことしかできない。
「愛してますよ、今は…僕だけの大王。」
「っ、ん…ぅ…」
ハート型の花火が、空に綺麗に打ち上がった。
【終】
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図らずともジンクス実行しちゃう天国組。
この記事へのコメント
だめだwww2424が止まらんww
閻魔が譲ちゃんって呼ばれててキュンってなった!
かんわえええ!!閻魔かわいいよ!
そして鬼男くんがかっこいい!!
愛してますよってうきゃあああああ!!
ゆーちゃんの書く話は最後はホッとするね
次回作楽しみにしてるぜ!おつかれさまでした!(♥^・ω・)
屋台の人たちメインにしようと決めたときから、閻魔は嬢ちゃんと呼ばせようと思っていたのでキュンとしてくれて嬉しいですww
鬼男君は…カッコよかったかな?なんか、へタレっぽくなっちゃったな~って思ってたんでラスト頑張らせたんだけど…。
最後のまとめはいつも頭を悩ませております。ホッとしてくれてありがとー。私もその言葉でホッとしたよ。
次回は…うん、頑張るよwww