- 2024/11/27 [PR]
- 2009/08/24 お礼のお礼がやってきた…!
- 2009/08/15 たまには真面目な話でも(鬼男×閻魔)
- 2009/08/15 お中元(鬼男×閻魔)
- 2009/08/03 夏祭り(天国組)
- 2009/07/03 閻魔大王操作マニュアル(鬼閻)
お礼のお礼がやってきた…!
2009/08/24 19:38:32
閻魔「鬼男くん、鬼男くん!!」
鬼男「何ですか、いきなり・・・どうしたんです?」
閻魔「昨日の夜だよ、昨日の夜!!なんと…なんと!」
鬼男「もったいぶってないでさっさと言え。」
(ざくっ!)
閻魔「いたぁ!!むぅ…なんだよ!漣さんとこではすごく優しい声で、俺のこと抱き上げてくれたのに!」
鬼男「あぁ…それですか、言いたいことは。」
閻魔「そうだよ!この前書いたお中元の小説に漣さんがイラストと声を入れてくれたんだって。鬼男くんの声になんだかドキドキしちゃったよ。」
鬼男「…大王の表情も、とても可愛らしかったですよ。」
閻魔「っ…」
鬼男「お中元の贈り物をあんなに綺麗に、可愛らしく描いてくれたんですから心から感謝しないといけませんね。」
閻魔「う、うん…。でも、何で鬼男くんは俺の腰に手を回してるのかなぁ…?」
鬼男「漣さんの大王が、あまりにも素敵だったのでちょっと…我慢できなくなりまして。」
閻魔「だ、ダメだって!ちゃんとお礼言うんだから!」
鬼男「…分かりましたよ。ほら、イカ!こっち来い。」
閻魔「わ…っ!」
鬼男「せっかくなのでイラストと同じ体制で言いましょう。」
閻魔「う…別に、いいけどさぁ…」
鬼男「なら文句言うな。ほら、ちゃんと目の前に漣さんがいると思って。」
閻魔「分かってるってば!」
鬼閻「漣さん、素敵なイラストと素敵な声をありがとうございました!」
閻魔「…で、なんで下ろす気配がないの?重いでしょ。」
鬼男「アンタ軽いんで抱いてたって全然苦じゃありませんよ。…言っただろ、我慢できなくなったって。」
閻魔「もう…仕方ないなぁ…」
鬼男「最終的に求めてくるのは大王の方だと思いますけどね。」
閻魔「それは鬼男くんが…!」
…フェードアウトwww
―――――――――
そんなわけで、漣さんからお中元(鬼閻)のイラストと小説の一部に声を当てていただいた音源をいただきました。
すごく素敵で悶えました!自分の作品のセリフにここまで萌えるとは…!という、新たな発見です。お礼のつもりがそれ以上のものを再びいただいてしまいました。
貼り付け方が分からないので、お手数ですが漣さんの素敵イラストとボイスを聞きたい方は漣さんのブログまで。
漣さん、本当にありがとうございました!!
たまには真面目な話でも(鬼男×閻魔)
2009/08/15 12:33:56
会話文の方を先に考えてしまったのでやはり文章が微妙。
でも、私自身は楽しく書いてしまったという…。
楽しんでいただけるかは分かりませんが…読んでやるよ!というのなら、追記へお願いします。
お中元、短い話ばかりですみません!
「鬼男くん。」
3分の2くらいまで目を通してさすがに疲れたのか、閻魔はぐっと伸びをして頬杖をつくと閻魔帳のページを弄りながら鬼男に声をかけた。
「なんですか?」
いつも通り隣に立って書類に必要事項を記入していた鬼男は、それに反応して作業を止め、閻魔の方を向いて聞き返す。
「人間ってさぁ…」
閻魔は読んでいるのかいないのか、閻魔帳をパラパラと捲りながら口を開く。
「はい。」
「愚かだよね。」
「…また、突然ですね。どうしたんです?」
閻魔の言葉に一瞬驚いたように目を見開いてから、すぐにいつも通りの態度で続きを促す鬼男。
「下らないことで問題や犯罪犯して、地獄行きになったりしてさ。」
今日の死者は地獄行きが多かった。
きっとそれを気にしているんだろうと思いながらも、鬼男はため息をひとつ。
「人間はそういうものだって、アンタがよく知ってるでしょう。何を今更。」
もう数える気も起きないくらい長い年月の中で閻魔大王は人間を裁いてきた。
本当に、今更だ。
「んー、そうなんだけどさぁ…こうやって閻魔帳を見直してると…」
鬼男の言葉に苦笑を見せて、閻魔は言いながら再び閻魔帳を捲る。
「見直してると?」
続きを促すと、閻魔は今度はちょっとおかしそうに笑って。
「大丈夫なのかなぁって、時々思う。」
「…人間たちの未来ですか?」
愚かだと言っておきながら、やはり心配はするのだろうかと聞き返せば、閻魔は首を左右に振って地獄の入り口に視線を送って答えた。
「いや、地獄の許容量。拡大しなきゃいけなくなるかなって。」
「そこまでしないといけないくらいなんですか。世も末ですね…」
さすがにその返答には本気で驚き、鬼男も地獄の入り口を見ながら返す。
「好きじゃないんだよなー、地獄の拡大。疲れるし。どうせなら天国の拡大をしたいよ。」
頬杖を崩し、ぺたんと執務机に頬を寄せて、心底嫌そうに閻魔は呟いた。
「天国の拡大なんて、当分必要ないですね。」
「気分乗らないなぁ…」
鬼男が現実をはっきりと口にすると、ますます嫌そうな…面倒くさそうな雰囲気をまとわせる閻魔。
「気分が乗らなくたって、必要に迫られてるならやらざるを得ませんよ。」
普段なら慰め、励ますところだがどうしようもないことだと鬼男も理解しているのであえて無感情に返す。
「あ、そうだ!そうだよ!…鬼男くん、代わりにやって!やり方だけは教えてあげるから。」
すると閻魔がパッと体を起こして、さも名案が浮かんだと言わんばかりに鬼男に告げる。
「爪を刺されたいのなら何も言いませんけど?」
「いえ、結構です。」
にっこりと、爪を光らせて鬼男が言えば、とたんに閻魔は顔をひきつらせて即答。
「なら言うな。…大体、教えられたって僕にできるわけないでしょう。」
閻魔の返答で伸ばした爪を戻した鬼男は、今度はため息混じりに言い返した。
「知ってるよ!でも、言ってみるくらい良いじゃないか!鬼男くんのケチ!」
「誰がケチだ!刺すぞ。」
「ていうかもう刺してんじゃん!」
ケチと言う言葉に腹が立ったらしく言いながら容赦なく閻魔の額に爪を刺した鬼男に、閻魔は血の気の少し引いた顔で声を張り上げた。
「…それで、どうするんですか。」
すぐに爪を抜いて、血を拭き取りながら会話を元に戻す。
「ルールだからね。あともう少し…地獄に行く人が増えたら、その時にやるよ。」
ふぅ…とため息をついて言いながら、閻魔はパタンと閻魔帳を閉じた。
「…そんなこと今更言わなくたって、よく知ってます。つーか、それくらい普通に言え。」
いつからか始まった、閻魔帳を合図に日常会話の中に紛れる密かな告白。
「えー…だって、恥ずかしいじゃない。俺みたいな奴が真剣に言ったら。」
いつものようにその告白を受け取った鬼男がため息交じりに言うと、閻魔は椅子ごと鬼男の方を向いて肩を竦めた。
「僕としてはストレートに言っていただきたいんですけどね。会話しながら繋げていくの、案外疲れるんで。」
鬼男は閻魔に近づき、机に片手をつきながらじっと彼の瞳を見つめる。
「いや、でもさ?鬼男くんだって、もう大分慣れたでしょ…?」
鬼男に見つめられると閻魔は目を逸らすことができなくて、気まずそうに上目遣いで鬼男に問いかけてくる。
この、逃げられなくて思わずしてしまう閻魔の上目遣いが、鬼男は密かに好きだった。
「えぇ、おかげさまで。ったく…お前は今みたいな難しいことはできるくせに、なんでたった二文字、五文字の言葉が言えないんですか。」
その姿が見れただけでも良しとして、鬼男は言いながら閻魔と距離を置く。
閻魔は内心それを物足りないと感じつつ、「ホントはさ…」と言葉を続けた。
「すごく重くて、強い言葉だから…使うのが怖いんだ。」
――私の言葉の影響力を考えると、つい躊躇ってしまう。
「僕はどれくらいアンタに愛を囁けば、アンタの一回の重さと釣り合うんでしょうね。」
フッと自嘲的な笑みを浮かべて、鬼男は言った。
――どれくらい、愛してると叫んでも…
「鬼男くん…」
「僕も、大王のことが大好きで…愛してますよ。誰にも、何にも負けないくらい。」
切なげに眉根を寄せて名前を呼ぶ閻魔に笑顔で答えて、鬼男は誓うように触れるだけの口づけを閻魔の唇に落とした。
「いつかアンタに、同じことを言わせてやりますよ。」
【終】
―――――――
ツンデ恋歌、かなり好きです。デレを探すのがww
閻魔は小難しい告白でも、鬼男くんは結構ストレートに告白ができるタイプだと思っています。
閻魔からの告白を見つけてあげると、もれなく由良がにやけます。
お中元(鬼男×閻魔)
2009/08/15 12:23:45
裏に行くのを阻止していたら、なんだか短い変な話になってしまいました。
すみません!
天国組、好きなんですが書くとなんだかキャラが変わってしまう不思議。
いや、基本どのキャラもそんな感じではありますが…。
書き終えてから、辞書で中元をひいてみた。
①陰暦7月15日に死者の供養をする行事
②中元の時期の贈り物(秋)
あれ、なんか間違った知識で書いてしまった気が…?
そんな作品ですが、よろしければ受け取ってやってください!
仕事も終わり、後は自室に戻るだけというとき。
鬼男の支度が整うまで待つと言って、執務机にもたれ掛かり筆を弄んでいた閻魔が、不意に鬼男に声をかけた。
帰る支度を整えていた鬼男はその声に反応して手を止める。
「何ですか?」
「お中元って、知ってる?」
鬼男が聞き返すと、閻魔は筆から鬼男に視線を移動させて、どこか楽しげに問いかけてきた。
「夏の時期、お世話になっている方や親しい方に贈り物をするってやつですか?」
いきなり何を聞くんだこいつは…と思いながらも、律儀に鬼男は問いに答える。
「うん、そうそう。それでね、俺もお中元あげようかなって思ってさ。」
「大王…お中元あげるほどお世話になってる方、いましたっけ?」
はにかんだような笑みを浮かべて言った閻魔に、鬼男は首をかしげて問いかける。
少なくとも鬼男の記憶の中には、それほど親しい者も、世話になった覚えのある者もいなかった。
「何言ってんの、鬼男くん!いるじゃない、俺がすごくお世話になってる子が!」
そう言われても、鬼男には全く見当がつかず。
――まさか僕の知らないところで…?
「僕は知らないです。…誰ですか?」
自然、問いかける声が不機嫌になる。
自分の知らないところで、自分の知らない顔をしている閻魔がいることが気にくわない。
閻魔はそんな鬼男をやはり楽しそうに見て、少し離れた位置にいた鬼男に近づいた。
「鬼男くん。」
「何ですか。」
すぐ目の前まで来て名前を呼ばれて、返事はするもののやはり不機嫌さは隠せず。
閻魔はクスクスと笑いながら、スッと鬼男を指差して言った。
「だから、鬼男くん。俺がお世話になってて、お中元あげたいって思った子。」
「あ…」
閻魔に言われて、ようやく納得できた。
確かに冷静になって考えてみれば、秘書としてとはいえ、鬼男は閻魔の世話や手伝いをしているし、公私含めずっと一緒にいるのに鬼男以上に親しかったり世話になったりする相手ができるはずもない。
「…何か、いただけるんですか?」
理解すると、やはり期待はしてしまうもので。
鬼男が問いかけると、閻魔はふふっと嬉しそうに笑った。
「ご所望とあらば、今すぐにでも。」
「っ!?」
チュッ、と音を立てて触れあう唇。
普段は恥ずかしがって完全に受身の閻魔からすれば、ありえないくらい大胆な行動だ。
「いつもありがとう。これからもよろしくね、鬼男くん!」
やはり恥ずかしかったのか、ほんのり色づいた頬を見せて閻魔は言った。
それを見た鬼男は目を隠すように顔に手をやって大きくため息をつく。
「え…このお中元、ダメだった?どうしよう、これ以外用意してないよ俺!」
鬼男の態度を見て何があるわけでもないのにきょろきょろと辺りを見回す閻魔。
「…大王。」
「は、はい!?」
鬼男がそんな閻魔の動きを止めるように名前を呼ぶと、閻魔はピタッと動きを止めて返事をした。
「アンタ、こんなことして…誘ってんですか?」
顎に手をかけて息がかかるほどの至近距離で問いかける。
「ちょ、ちょっと待ってよ!なんでそうなるのさ!俺はただ鬼男くんにお中元をあげただけで…!」
顔が近い、顔が近い!と言いたげに閻魔は身を引こうとするも、腰に手を回されてこれ以上離れることは許されない。
「はい。大王の贈り物は、夜伽のお誘いととって良いんですよね?」
「だから、違うってば…っん…っ!」
問答無用と言わんばかりに重なりあった唇。
鬼男が舌先で閻魔の唇を突っつけば、躊躇いがちではあるものの抵抗はせずに閻魔は口を薄く開く。同時にするりと鬼男は侵入して、飴でもなめていたのか甘さの残る口内を堪能する。
「んっ、は…ぅ、ん…っんぅっ…」
奥の方で隠れるように小さくなっていた閻魔の舌を絡めとり、甘噛みするとビクッと閻魔の体が跳ねた。
鬼男はそれを満足そうに眺めて、口付けたまま閻魔の服の袷に手を伸ばす。が…
「っ…」
閻魔の手に止められてしまった。
「大王…?」
一度唇を離して、鬼男はどうしたんですか?と目で問いかける。
「ここではダメって…いつも言ってるでしょ?俺の部屋、行こ…?」
「…分かりました。歩きますか?」
上目遣いに言われて、鬼男は思い出したように苦笑した。
「鬼男くん、連れてってくれるの?」
聞き返しながらも、閻魔はすでに鬼男の首に手を回している。
「そりゃあ、大切な贈り物ですから。」
鬼男は冗談めかして答え、ひょいと閻魔を抱き上げた。
「ふふっ、力持ち~。」
「お前が軽すぎるんだよ。」
首筋に猫のようにすり寄る閻魔にそう返して、置きっぱなしになっていた荷物を持つと、鬼男は閻魔の寝室へと向かう。
「贈り物は、美味しくいただきますよ。」
パタン、と音を立てて寝室の扉が閉まった。
【終】
夏祭り(天国組)
2009/08/03 18:03:31
鬼男くんも閻魔もキャラ違いすぎます。
屋台メインなんて無謀なことを考えたのが間違いだった…。
色々考えたら少し長くなってしまいました。ションボリ…
屋台のたくさんある祭りなんて久しく行ってないよ!!
細道…設定や流れは浮かんでるけど、どうしようかな…
「おっにおくーん!」
鬼男がいつものように今日の閻魔のおやつを作っていると、閻魔が浮かれた様子でやって来た。
「何ですか、大王。おやつの時間はまだですよ。」
本日のリクエスト、シュークリームのカスタードを作る手は休めずに答える鬼男。
「分かってるよー。でもね、俺もう書類処理終わったからさ、おやつのあ」
「本当に終わったんですか?」
閻魔の言葉を遮り、書類が終わったということに対して疑いの目で確認をとる。
「むっ…ちゃんと終わらせたよ!机の上のも、隣の部屋に置いてあったのも、急ぎのもギリギリでも良かったやつも!内容もちゃんと読んだ!」
話を遮られたことに多少の腹立ちを覚えたものの、普段の自分の行動から考えれば仕方ないことだと割り切って、終わらせたことを説明する。
「…珍しいな、お前がちゃんと仕事するなんて。」
よほど驚いたのか、鬼男の手が止まり、敬語も忘れている。
「あのさ、鬼男くん…そこまで驚かれると、俺も少し傷つくんだけど。」
うなだれて、弱々しく呟く閻魔。
その言葉にハッとして、出来上がったカスタードを絞り袋に入れながら鬼男が問いかける。
「それで、珍しく仕事を全部終わらせた理由はなんですか?」
「うん、あのね…今日、大きな夏祭りがあるんだよ。」
閻魔はカスタードを入れている鬼男に近づいてその様子をじっと眺めながら答えた。
「…行きたいんですか。」
それを見て、カスタードを生地に絞り入れながら少し残ったカスタードを閻魔の口に放り込み、鬼男は問いかけると言うよりは確認するように返す。
「うん!…いいよね?」
食べたカスタードに満足そうな笑みを浮かべて問う閻魔。
「分かりました。お供します。…ほら、できましたよ。」
「ありがと、鬼男くん!大好きっ!」
鬼男が頷いて出来上がったシュークリームを渡すと、閻魔はそれを受け取って嬉しそうに笑った。
「じゃあ僕は書類の確認をしてきますので、大人しく食べててくださいね。こぼすなよ!」
「子どもじゃないんだからこぼさないよっ!失礼な!」
鬼男の言葉に負けじと言い返してから、閻魔は椅子に座って綺麗に出来上がったシュークリームを頬張った。
◇◇◇
「やっぱ暑いねー。」
「まぁ、夏ですからね。人間も、よくこれだけ集まりますね…」
夏祭りにやって来た二人は夏独特の暑さと人の多さに思わずため息混じりに呟いた。
「あ、リンゴ飴!あれ食べよ、あれ!」
とりあえず歩きながら周囲を見渡していると、閻魔が唐突に言って屋台に向かう。
「さっきシュークリーム食べたくせによく入りますね…。」
鬼男は呆れ顔で言いながらも、あとをついていった。
「どれにしようかな…」
「へぇ…最近は大きさが選べるんですね。」
大・中・小、三種類の大きさがあるリンゴ飴を見て真剣に悩む閻魔を後ろから眺めながら、鬼男も感心したように呟く。
しかし、合成着色料を大量に使用しているであろうこんな真っ赤な飴を食べて、何が楽しいのだろう。
「よし、シュークリームも食べたし中のやつにしよう。鬼男くん、一緒に食べようね!」
「え…」
閻魔の言葉に思わず固まる。
その飴を…?きっと、鬼男の目はそう閻魔に訴えていたのだろう。
「リンゴ飴、美味しいよ?…ダメ?」
首をかしげて、上目遣いに問いかけられる。
「っ…分かりましたよ。いただきます。…中のリンゴ飴、ひとつください。」
「はいよ、まいどー」
そんな風にされて嫌だと言えるはずもなく。
屋台の人にそう注文すると、どこか楽しそうに笑って答え、リンゴ飴を手渡してくれた。
「あれ…なんで一個?」
「僕は小ひとつでも食べきれる気がしないので。半分こにしましょう。」
リンゴ飴を受け取りながら問いかける閻魔に、鬼男はごく普通に答えた。
「え…」
「…?そのつもりで一緒にと言ったんじゃないんですか?」
閻魔が戸惑ったような表情をするものだから、鬼男は不思議そうに首をかしげる。
「…えっ、と…」
「あ、すみません…つい、いつもの調子で…。」
恥ずかしそうに頬を赤らめて口ごもる閻魔を見て、鬼男はここは冥界でないことを思い出した。
「すみませんが、小をもうひと」
「いいよ、半分こしよ!」
屋台の人に追加で注文しようとした鬼男の言葉を遮って、閻魔が声をあげた。
「大王…?」
「良いんだ、たぶん俺も食べきれないと思うから。…ごめんね、利益に貢献できなくて。」
驚いたように名前を呼ぶ鬼男くんにそう言って、屋台の人には苦笑いで謝る。
「気にすんな、嬢ちゃん。お前らみたいなカップル、好きだぜ!仲良くしな。」
しかし屋台の人はニッと笑って答え、閻魔の頭をポンポンと撫でる始末。
「え…?」
「っ…!」
ぽかん…とする閻魔に、思わず吹き出す鬼男。
「ん?どうした、嬢ちゃん。」
「え、ううんっ!何でもない。えへへー…ありがと、おじさん。じゃあ…行こっか、鬼男くん。」
「ふ、くくっ…はい、そうですね。」
首をかしげる屋台の人に笑顔で返し、肩を震わせている鬼男の手を取って歩き出した。
「俺、そんなに幼く…しかも女の子みたいに見える?」
「さぁ…?そんなことはないと思うんですけどね。」
リンゴ飴をなめながら問いかける閻魔に、鬼男は少し考えるように閻魔の姿を頭から爪先まで見てから答えた。
「だよねぇ…」
まったく、失礼しちゃう。と不満げに呟いて手は繋いだまま辺りを見渡す。
「ま、男に見えないくらい肌は綺麗ですからね、あんたは。」
軽く力を入れて閻魔の手を引き、自分の方に近づけて鬼男は閻魔の頬に触れながら返した。
「誉め言葉ととって良いの?それ…」
「誉め言葉ですよ。飴のせいで紅が引かれたような唇も、肌の白さに映えて…魅力的です。」
どこか納得が行かないと言いたげな目で問う閻魔に鬼男はそう囁いて閻魔の手からリンゴ飴を奪い、朱の強くなった唇に自分のそれを重ね合わせた。
「ん…っ」
触れ合うだけで、すぐに離れる。
「綺麗ですよ、すごく…。誰にも見せたくないくらい、誰よりも綺麗です…大王。」
「っ、もう…!こんなところで急に口説かないでよ、鬼男くんのバカ!は、恥ずかしいだろっ!」
慌ててプイッとそっぽを向いて言い返す閻魔。
その態度もまた可愛らしくて、鬼男は一人笑みを浮かべた。
「あ、あー!風船釣りやってるよ!行こ行こ!」
鬼男が笑っているのを気配で感じとり、居たたまれなくなった閻魔はふと目についた水風船を見てごまかすように言うと、一目散に風船釣りの屋台に駆けていった。
「一人で行ったって金ないのに…あのアホ大王イカ…」
やはり鬼男は笑みを隠すことができず、そう呟いて手に残ったままのリンゴ飴を口に入れ、閻魔の後を追う。
「やっぱ甘…」
鬼男が水風船の屋台まで行くと、閻魔は気まずそうに鬼男の方を見た。
「バーカ。」
「っ!ち…違うよ、鬼男くんと一緒にやりたかったから待ってたんだよ!」
笑って言ってやると、閻魔はカッと頬を赤らめて言い返す。
「はいはい、そういうことにしといてやるよ。…すみません、風船釣り二人分お願いします。」
「はい。頑張って釣ってくださいね。」
「どうも。ほら、大王。」
店員に渡された風船釣り用の紐を一本、閻魔に渡す。
閻魔はそれを受けとるも、どこか不満げで。
「何ですか?」
「俺、鬼男くんのそーいうとこ…なんかヤダ。」
鬼男が問うと、閻魔はポツリとそう呟いて風船の浮かぶたらいに視線を落とした。
「はぁ?いきなり何ですか。どこの話です?」
「さっきみたいに、すぐに分かったって言って話終わらせちゃうとこ!…俺ばっか、子どもみたいじゃん…」
いぶかしんで聞き返すと、返ってくるのはそんな拗ねた言葉。
「こんなところで言い合いしたって迷惑になるだけでしょう。」
自覚してるなら直せよ…そんな風に思いながら、鬼男は呆れたように答える。
「だから!そーいうところがさぁ!」
鬼男の言葉と言い方にますます苛立ったのか、閻魔は立ち上がって声を張り上げた。
「ただでさえお前が子どもっぽいのに、僕まで子どもになったら仕事が滞るだろうが。」
さも面倒くさそうに鬼男が言うから、閻魔もますます腹が立って。
「今は仕事関係ないだろ!俺は、恋人としてプライベートの話をしてるんだよ!!」
「仕事だろうとプライベートだろうと同じことです。大王が子どもっぽいので僕は我慢してやってんですよ。お前ももうちょっと精神的に成長したらどうなんだ。」
「っ…もういい!鬼男くんのバカッ!!」
鬼男のその言葉がかなり胸に刺さって、閻魔は泣きそうになるのを我慢してそう吐き捨てると、鬼男に背を向けて走り出してしまった。
「あ、おい大王!」
まさか走り去ってしまうとは思わなくて、慌てて立ち上がり名前を呼ぶも、すでに閻魔の姿は人混みに紛れてしまっていた。
「あー、もうあのアホイカが…!」
「いやぁ、今のは兄ちゃんが悪いだろう。」
苛立った様子で鬼男が吐き捨てると、どこからかそんな声がした。
「え…?」
「あんな言い方は酷いよ。」
「可哀想にあの子泣きそうな顔してたわよ?」
「恋人に対して、“我慢してやってる”はないだろう。」
鬼男が顔をあげると、今の口論を聞いていたらしい祭りの客や屋台の店員が口々に声をかけ始める。
「っ…」
そのどれもが正論で、事実で、鬼男も言葉につまる。
確かに改めて自分の言ったことを反芻してみると、ひどいことを言っていた気がする。
「よし、俺のとこのクレープやるから仲直りしてこい!」
「え…!?」
二人分のクレープを手渡されながら言われて、反射的に受け取るも鬼男の頭はついていかず。
「私のところはもう代金もいただいてしまったし、水風船は差し上げますね。」
水風船の屋台の女の人からは紫・黄色・赤・青・緑の5色の水風船を手渡され。
「追いかけて、謝ってこい!兄ちゃん!」
「そろそろ花火も始まる時間だもの。仲直りして一緒に花火見てらっしゃい。」
「えっ、あ…はぁ…」
あまりにも急展開なので、周りの人のテンションと勢いに鬼男はついていけていなかった。
「もたもたしない!あの子が一人で泣いてたらどうするんだ!さっさと行った行った!」
「え、えぇ!?…あ、はい。えーっと、ありがとうございます…?」
「礼なんか要らないから、ほら行く!」
なんだかよく分からないまま色々持たされ、背中を思いっきり押されてしまった。
しまいには「頑張れよー!」と声がかかる始末。
「はぁ…何なんだ、本当に。」
呟きつつも、やはり閻魔のことは気になっていたし、謝らなくてはとも思っていたので、好意(?)に甘えて閻魔を探すため歩き出す。
「感情的になってるときにあっちこっち曲がったりしないだろうからたぶんまっすぐ行けば会えると思うんだけど…」
のんびりしていると、渡されたクレープのクリームが溶けそうだ。
しばらく歩いていくと、人もまばらになり、神社の本殿が見えてきた。
「あ…」
鬼男は、御神木の側に座り込んで肩を震わせるイカを見つけた。
「……」
安堵と呆れを含んだため息を吐き、ゆっくりと近寄る。
「閻魔大王が御神木に慰められてどうするんですか。」
「だって…なんか、落ち着くんだもん。」
閻魔の隣に座りながら声をかけると、うつむいたままぼそぼそと返ってくる返事。
「…さっきはすみませんでした。」
「っ…!」
鬼男の謝罪にビクッと肩を震わせる。
「大王…」
「どうせ…!どうせ…俺と一緒にいたって、我慢ばっかなんでしょ…?」
鬼男が名前を呼んでも、閻魔はプイッとそっぽを向いて答える。
謝られたって、我慢していることが事実なら、一緒にいたって傷が広がるだけだ。
「…そうですね。書類処理はしないし、毎日いろんな種類のお菓子作らされるし、気紛れでよく分からない行事作るし、セーラー服はどんどん買ってくるし…」
「いいよ、もう!…そんなに、そんなに我慢してるならっ、俺と接点がない仕事場に移動して俺たちっ…んぐっ」
次々と上がっていく鬼男の言葉に堪えきれず、閻魔は口を開く。が、途中で何かを口に放り込まれ続きが言えなくなった。
口内に広がる甘ったるい飴と、リンゴの味。
「半分食べたんで残りはあげます。かなり甘くて、ちょっと時間かかりましたが。」
「う、ん…。」
当然のようになめていた飴を口に放り込まれて話を遮られたので、続きを言う気が一気に削がれてしまった。
「でも、大王の隣に秘書として…恋人として立っていられるなら、本当は我慢なんて全然苦に感じないんですよ。」
「っ…!」
「むしろ、アンタのわがままを聞いてやれるのも、むちゃくちゃなことするアンタを受け止められるのも僕だけだって、自惚れてますよ。」
すらすらと出てくる鬼男の言葉に、閻魔の顔は今食べているリンゴ飴のようにみるみる赤くなっていく。
「だから、その…これからも、大王の側にいてもいいですか?」
閻魔の顔を見て自分でも恥ずかしくなったのか、少し照れ臭そうに問いかける鬼男。
閻魔は我慢できなくなって、ガバッと鬼男に飛び付いた。
「わ、バカっ…!」
突然で反応できず、両手はクレープと水風船で塞がっていたので受け止めることもできず、鬼男は閻魔と一緒に背中から倒れ込んだ。
「俺の秘書も、恋人も鬼男君しか認めてないから!」
しかし閻魔はそれも気にせずぎゅうぎゅう鬼男にしがみついて嬉しそうに言うだけ。
「ったく…お前の秘書も恋人も僕しかできないんだから当たり前だろ。」
「うん!…でさ、そのクレープと水風船は何?」
鬼男が仕方なく言い返すと、閻魔は嬉しそうに頷いてから鬼男の手を見て問いかけてくる。
「あぁ…さっきの会話を聞いてた方々が、謝ってこいって言ってくれたんです。…クリーム、溶けてきてるんで食べません?」
「あ、そっか。周り、人いっぱいいたもんね…。もらったんなら食べる。」
鬼男に言われて離れると、また同じように座りクレープを受けとる。
「あのさぁ…鬼男君?」
クレープを食べ始めながら閻魔が声をかけた。
「何ですか?」
鬼男もクレープを食べながら聞き返す。
「俺さぁ…子どもっぽいかもしれな…あ。」
「あ、始まりましたね。花火。」
閻魔の声に被さるように大輪が音を響かせた。
「綺麗だねー。」
「…そうですね。」
しばし、二人して大きな音ともに鮮やかな花を咲かす空を見上げる。
「それで、さっき言いかけた言葉はなんですか。」
空から閻魔に視線を戻して、鳴り響く音に負けないように少し音量を上げて問いかけると、閻魔も鬼男の方を見て答えた。
「あ、うん。あのさ…俺、子どもっぽいかもしれないけどさ…俺も、鬼男くんの力になりたいわけよ。」
「…はい。」
「だから、苦にならないって言っても、我慢ばっかさせたい訳じゃなくてさ。俺にも…ちょっとくらい、わがまま言ってほしいな…とか…ね、思っちゃったりするわけなんだよ、俺は。」
閻魔から目を離さず、黙って聞いてくれる鬼男に少し気恥ずかしくなったのか、閻魔の視線が空をさ迷う。
「ダメ、かな…?」
とりあえず、言いたいことは言ったと鬼男に確認をとる閻魔。
「…僕は、わがままを言う必要なんてないんですよ。」
フッと柔らかい笑みを浮かべて、鬼男が言う。
「え…?」
「僕の願いはいつだってひとつで、その願いは常に叶っているんですから。」
意味が理解できないのか聞き返す閻魔に、鬼男は続けて言って彼の耳元まで唇を近づけた。
「ずっと、あなたの側にいることです。大王…」
「っ!」
「もう、叶っているでしょう?」
ビクッと肩を震わせて頬を赤らめる閻魔を楽しげに眺めて確認をとる鬼男に、閻魔はコクリと頷くことしかできない。
「愛してますよ、今は…僕だけの大王。」
「っ、ん…ぅ…」
ハート型の花火が、空に綺麗に打ち上がった。
【終】
―――――――――
図らずともジンクス実行しちゃう天国組。
閻魔大王操作マニュアル(鬼閻)
2009/07/03 23:01:15
ブログで書く小説って、どこまで良いのかよく分かりません。
とりあえず、強気でかっこよさげな鬼男を書こうと思ってあえなく撃沈。
閻魔が乙女っぽいです。
死者の采配と平行して書類処理をする。
書類がひと段落して、次の死者を呼ぼうかと鬼男が息を吸ったところで、不意に声をかけられた。
「何ですか、大王。」
鬼男は目だけで閻魔の方を向き、問いかける。
「飽きた。」
「ふざけんな。」
閻魔の返答に鬼男が容赦なく切り返すと、彼はむぅ~・・・と子どものように唸った後、急に手足をバタバタさせ始めた。
「やだやだ~!飽きた、飽きたー!!もう紙を死者も見たくなーいっ!!」
「子どもみたいなこと言うんじゃねぇ、この大王イカが!!」
鬼男が叱るように声を張り上げると、「じゃあ今から子どもになる!」となどと言い出した。
「馬鹿なこと言うな!」
「やだー!休憩、きゅーけーいー!!」
正直言って、ウザイ。
「ったく、もう・・・」
本当に駄々っ子のように騒ぎ出した閻魔にため息をついた鬼男は、おもむろに彼の服をつかんで自分のほうに引き寄せ、強引に唇を重ねた。
「っ!?・・・ん、ぅ・・・っふ・・・んっ、ん・・・」
驚いたせいか薄く口を開いたままの唇にすかさず舌を滑り込ませた鬼男は、しばらく口内を堪能してから、ゆっくりと離れた。
二人の間を銀糸がつないで、名残惜しむように切れる。
「・・・は・・・っ、ぁ・・・おに・・・っく・・・?」
「早く仕事を終わらせて、二人きりになりたいと思いません?」
トロン・・・と潤んだ瞳で名前を呼ぶ閻魔の口端を指で拭ってやりながら、鬼男は低く抑えた声で囁いた。
「っ・・・」
閻魔の眉が、悩ましげに寄せられる。
「と、いうわけで・・・さっさと終わらせろ。」
眩しいくらい爽やかな笑顔で命令口調。
「君ってさぁ・・・ときどきすっごく意地悪だよねぇ・・・」
閻魔は熱を持った頬を冷ますようにぺたんと机に顔をつけて言い返した。
俺、結構その気だったのになぁ・・・。そんな不満げな声を聞いて、鬼男は対照的に満足げな笑みを浮かべる。
「何だよ!嬉そーな顔しちゃってさぁ・・・!」
それに気づいた閻魔はなんだか気恥ずかしくなってしまい、がばっと体を起こして照れ隠しに声を張り上げる。
「そりゃ嬉しいですよ。」
その言葉に当然のようにそう返し、鬼男は急に息がかかるくらい閻魔に顔を近づけた。
「っ・・・!」
「あんたに愛されてんだなって実感してんですから。」
顔の近さに再び頬を染める閻魔の目をまっすぐに見据えて告げると、鬼男は不敵に微笑んだ。
「っ・・・鬼男くんばっか、ずるくない?」
その顔から自分を遠ざけるように鬼男の胸を押して離れさせ、さらに目をそらしながら閻魔が言う。
「何がです?」
分かっているのか、いないのか、どこか楽しそうに聞き返してくる鬼男。
「俺ばっか恥ずかしくて・・・鬼男くんのこと、好きみたいで。いい思いしてるの、鬼男くんばっかじゃない?」
閻魔は、冥界の王が聞いて呆れる、と自分で思いつつも恋する乙女みたいなことを訴えてみる。
その言葉に待ってましたといわんばかりに鬼男が笑みを深めた。
「あなたの傍に居られることが、僕の最大の幸せですよ。・・・愛しています。」
「っ!!」
耳元で囁かれた言葉に、恥ずかしくなるのはやっぱり閻魔のほうで。
言った張本人は何事もなかったかのようにあっさり離れ、早くも次の死者のチェックを始めている。
「まったく、優秀な秘書だよ・・・ホント。」
「そりゃあ、どうも。・・・さて、次の死者を呼びますよ。」
鬼男はもう完全に仕事モードに切り替わっている。
立ち位置も、纏う空気も閻魔大王の秘書そのものだ。
この切り替えの早さに閻魔は感心し、信頼する反面、少し寂しくもあった。
――でもまぁ、きっとこの後の時間を長く取るためなんだろうし・・・
「さっさと終わらせちゃおっか。良いよ、鬼男くん。」
「はい。では、次の方・・・」
お楽しみは、最後までとっておくといたしましょう。