「告白」で曽良受け
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2009/11/22 00:05:01
2009/11/22 00:05:01
どこまでやるつもりなんだ、と自分に問いかけたくなりました。
しかし、何となくボーっとしていたらシチュエーション(?)が浮かんできてしまったんです。
結論→曽良総受けは難しい。
今回、順番が前回と違うので注意です!
妹曽
鬼曽
太曽
閻曽
芭曽
▼そら愛し 夜に触れんと 満ちるかな▼
妹曽
「曽良。」
「何ですか、妹子さ…っん…」
不意に名前を呼ばれて返事をしながら顔を上げた曽良の唇と重なり合う妹子のそれ。しかし、いつものように軽く触れてすぐに離れた。
「…大好きです。」
いまだ息がかかるくらいの距離で目を合わせて、妹子は告白する。
曽良は表情を変えることなく、妹子を見つめ返して
「貴方はいちいち口づけてからでないと言えないのですか。」
ため息混じりに問いかけとも呟きとも取れるような口ぶりで言った。
妹子が何が楽しいのかくすくすと笑って、頬に添えた手をそのままに親指でそっと曽良の唇の形をなぞる。
「だって、曽良の唇…触れると気持ちが良いんだもの。つい口付けたくなるんですよ。」
「物好きな人ですね。僕よりいい人は大勢いると思いますよ。」
妹子の手を軽く払いのけて、ため息混じりに言い返す曽良。
「ダメですよ。例えそうだったとしても、僕はもう曽良しか見えないし曽良以外の人を愛することは出来ない。」
「っ…」
妹子の言葉に息を詰める。表情はさほど変わっていないが、曽良がわずかに視線を逸らしたのが妹子には分かった。
「責任…取ってくださいね?曽良。」
「なっ…!…ん、ぅ…」
曽良の反論は、再び重なり合った唇に遮られてしまった。
―――――――――
鬼曽
「曽良ー…」
読書をしている曽良に声をかける。
「チッ…何ですか、うっとうしい。」
曽良は読書が中断されたのが腹立たしかったのか、顔を上げながら舌打ち混じりに返答した。
「おまっ、舌打ちするか?普通!」
そんな曽良の反応に鬼男もカチンときて、身を乗り出して言い返す。それに対し心底嫌そうに眉根を寄せたと思うと、読書続行の意を示すように視線を鬼男から本に戻した曽良。
「お前なぁ…!」
「うるさいですよ。僕は暇じゃないんです、早く用件を言ってください。」
文句を言おうと口を開いた鬼男を遮り、読書は続けたままだが話を聞くつもりはあるらしく曽良は先を促した。
すると鬼男は待ってましたといわんばかりにニヤリと口元を上げる。
「ん?ただ呼んでみただけ。意味はない。」
鬼男の答えに、ピクリと曽良の眉が動いた。
読んでいた本を閉じ、鬼男の方を苛立ちを隠しもせずに睨む。
「…不愉快です。僕は、あなたのそういうところが大嫌いなんですよ。」
鬼男は変わらず口元に笑みを貼り付けたまま「奇遇だな。」と答えて続ける。
「僕も、お前のそのいちいち攻撃的になるところが大嫌いだよ。」
「僕を攻撃的にしているのはあなたのその態度でしょう。」
「僕を批判する前に自分の性格を振り返ってみたらどうだ?僕でなくたって同じようにするさ。」
ムッとした様子で曽良が言い返しても、鬼男の態度は変わらず。
「その言葉、そっくりそのままお返ししますよ。…僕の性格のことをあなたにとやかく言われる筋合いはありません。」
「だったら僕の性格についてもお前が言うことじゃないよな。大きなお世話だ。」
「だからあなたは嫌いなんですよ。…時間を無駄にしました。」
お互いがお互いをにらみつけて、どちらともなく視線を逸らす。
曽良はそのまま本の続きを読み始め、鬼男は何をするでもなく外を眺めた。
「……」
「……」
しばらく黙っていた2人だが、曽良の読書がキリのいいところまでいったのとほぼ同時に、鬼男が曽良の後頭部に手を回して引き寄せた。
「っ…ん…」
自然な流れで重なり合うお互いの唇。口付けたまま鬼男が空いていた手も曽良の背中に回して抱きしめれば、曽良は読んでいた本にしおりを挟んで閉じる。
触れ合う唇から…体から、熱が伝わる。うるさいくらいに早鐘を打つ互いの心臓。長く長く、酸素が入り込む隙間さえ許さないくらいに深い口づけ。
「っ、は…っぁ…」
「お前なんか、嫌いだよ。」
「えぇ…僕も、あなたが嫌いですよ。」
言葉ではうまく伝えられない彼らの、不器用な愛情表現。
―――――――
太曽
「曽良、好きだー!!」
「出会いがしらに気持ちの悪いことを言わないでください。」
曽良の姿を見かけた太子は叫びながら曽良に飛びつこうとするも、あと一歩というところで軽くいなされた。
「気持ち悪…って、私が好きだって言ってんだから受け取れよ!」
曽良の態度に一瞬落ち込みかけた太子だが、勢いよく顔を上げて持ち直し、子どものように両手をばたつかせて声を張り上げる。
曽良はうるさそうに顔をしかめて
「誰も頼んでいません。寄らないでください。臭いんですよ、あなた。」
そう冷たく太子を突き放す。
「おまっ…私は臭くないぞ、断じて!!…なぁ曽良、さすがに私でもへこむぞ…?」
全力で否定したものの、後から落ち込んできたのか太子はがっくりと肩を落として弱々しく呟いた。曽良は面倒くさそうに軽く息を吐く。
「知りませんよそんなこと。僕には関係ありません。」
「っ、関係ないってどういう意味だコラァー!!」
さすがに曽良のその言葉には怒りが沸き起こったのか、太子は言いながら曽良の腕を強く引いて抱き寄せた。
「ちょっ…!」
予測不可能の太子の動きに反応が遅れた曽良はあっという間に太子の腕の中。
「曽良…私たち、一応恋人同士だろう?」
抱き寄せたことで近づいた耳元で、不安げに問いかける太子の言葉に、今度は曽良が怒ったように、けれどどこか悲しみを含んだ様子で眉根を寄せた。
「…一応って何ですか。」
「え?」
うつむいて小さく呟いた曽良の声が聞き取れず、思わず顔を覗き込みながら聞き返す太子。曽良が顔を上げて太子をキッと睨んだ。
「一応って、何ですか?僕は、あの時ちゃんと答えましたよね?」
あの時…大好きだ、付き合って欲しいと告げた太子に、曽良は珍しくわずかに頬を赤らめて自らの思いも言葉に乗せて応えてくれた。
素直に気持ちを言葉にするのが苦手な曽良が、僕もあなたが好きです。と精一杯の勇気と素直さでもって太子に答えたのだ。
「曽良…」
「何度も言わなくたって、ちゃんと理解しています。あなただって、そうであると信じていたのですが…僕の、勘違いでしたか。」
曽良の反論に太子が驚き目を見開いていると、曽良はぷいっとそっぽを向いてそんなことを言う。
きっと気のせいだとは思うが、うつむく曽良の背中が…太子にはなんだか泣いているように見えて。
「ごめん、曽良…。私たち、ちゃんと恋人同士だよな。」
殴られるかな…?なんて思いながらも、そっと後ろから抱きしめてみる。曽良はわずかに身じろぎはしたものの、何も言わず抵抗もしなかった。
「曽良が大好きだから、つい欲張りすぎた。今の言葉で十分だよ…愛してる、曽良…」
「っ、だから耳元で気持ちの悪いことを言わないでくださいと言っているんです!」
「ポピーーーーーー!!!」
耳元での告白に曽良は珍しく声を張り上げて容赦なく攻撃を食らわせると、太子は勢いつきすぎて地面に90%以上刺さった。
はぁ、はぁ…と自らを落ち着かせるように呼吸を繰り返して、最後に大きく深呼吸をした曽良は、熱い頬を誤魔化すように少しうつむき太子に背を向けて立ち去ってしまった。
―――――――
閻曽
「あ、曽良見ぃーつけた!」
きょろきょろと辺りを見回し、見慣れた着物姿を発見した閻魔はがばっと曽良に抱きついた。
「っ…!」
「げふぉっ!?」
一瞬動きを止めたものの、次の瞬間には容赦なく閻魔のわき腹に肘鉄がやってきた。予想以上の痛みに、閻魔は思わず手を離してしゃがみこむ。
「え、ちょっ…い、いきなり何、するの…曽良…」
肘鉄を食らったわき腹を押さえながら涙目で訴える閻魔を、曽良は冷ややかな眼差しで見下ろした。
「それはこちらのセリフです。いきなり何するんですか、閻魔さん。」
「えぇー…だって、曽良の姿見たら抱きつくしかないでしょ。」
よいしょ、とまるで痛みがなくなったかのようにごく普通に立ち上がり、曽良の冷たい問いに楽しげに笑って答える閻魔。
曽良は閻魔の返答を聞いて考えるように眉根を寄せるも、すぐに考えることを放棄したのかため息を吐いていつもの無表情に戻す。
「まったく理解できませんね、その理屈。」
「あーあ、ほーんとつれないなぁ曽良は。もうちょっと何かないのー?」
相変わらず取り付く島もない言葉に、閻魔は落ち込んだような素振りを見せて曽良の頬にそっと触れた。
「触らないでください、うっとうしい。」
「あーらら。」
触れられた手すら煩わしいと言いたげに簡単に叩き落とされる。
大して痛みはないがぷらぷらと叩き落とされてしまった片手を振りながら、閻魔もふぅ…と大きく息を吐き出した。
「曽良さぁ…もう少し素直になったら?」
「なっ…ん…っ!」
言うが早いか、あっという間に距離を縮めて曽良の後頭部に手を回し、唇を重ね合わせる閻魔。逃げようと腕を突っ張る曽良を逃がさないようにしっかりと腰に手を回して、長く深く口づけを続けた。
「っ、は…ぁ…」
突っ張っていた曽良の腕が震え、体から力が抜けてきたところで閻魔がようやく離れれば、銀が細く伸びて二人を繋ぐ。
「曽良…愛してるよ。」
「…っ」
パンッ!と小気味のいい音を立てて曽良が思いっきり閻魔の頬を叩いた。
酸素不足のせいか瞳は潤み、荒い呼吸をしてはいるものの、曽良は明らかに怒りを宿していて。
「いったぁ…ホント素直さも可愛げもない奴だね、曽良は…」
「そん、なもの…僕は必要としてません、から。」
叩かれた頬に軽く触れながら閻魔が呟けば、返ってくるのは敵意剥き出しの濡れた黒曜石の瞳とそんな言葉。
けれど閻魔はその濡れて光っているように見える黒曜石をついつい綺麗だと思ってしまう。いつか自分だけを見つめ映してくれる日を思い描いた。
「まぁ、すぐに落ちられてもつまらないか。いつか君に絶対、俺が好きで仕方ないって思わせてみせるよ。」
「…好きになさい。そんなことは決して有り得ませんから。」
ふふっと楽しげに笑った閻魔を、曽良は対照的に表情を変えず睨みつけた。
―――――――――
芭曽
「あ、曽良くん。ちょっと待って。」
落ち葉舞う山道、一人さっさと先を歩く曽良に不意に芭蕉が声をかけた。曽良はチッと舌打ちしつつも立ち止まり、後ろを振り返る。
「何ですか、芭蕉さん。疲れたから休みたいなんていったら断罪しますよ。日暮れ前にはふもとの村に着かなくてはいけないんですから。」
「それは分かってるって。そんなんじゃなくて…」
鋭く目を光らせて言う曽良に芭蕉は苦笑いで返し不自然なところで言葉を区切ると、軽く背伸びをして曽良の髪に手を伸ばす。が、そのまま動きを止めてしまった。
「…?何ですか。」
「うん。曽良くんの髪にね、紅葉が一枚付いてて。取ってあげようかなって思ったんだけど…」
芭蕉の理解できない行動に眉根を寄せて曽良が問いかけると、芭蕉は答えながらふわりと微笑んだ。
「曽良くんの黒髪とその紅く染まった紅葉があんまりにも似合ってて綺麗だから…取っちゃうのが惜しくてね。」
「っ…馬鹿ですかあなたは。付き合ってられません、先を急ぎますよ。」
芭蕉のその表情と微笑みに照れたのか一瞬動きを止めた曽良だが、すぐさまフイと芭蕉に背を向けて憎まれ口を叩く。
「あっ、ちょっと曽良くん!松尾今結構良いこと言ったと思ったのに!あーあ、紅葉も落ちちゃったじゃない…まったくもー」
言葉の通り歩き出す曽良の背中にそんなことを言い返しながら、背を向けたときに落ちてしまった紅葉を拾い上げた。
「ジジイのくだらない戯言に付き合うほど僕は暇じゃないんです。」
「くだらないことかなぁ、これ…。本当に綺麗だったんだよ?君の姿。」
立ち止まって振り返った曽良のつれない一言に、芭蕉は拾い上げた落ち葉をもてあそびながら視線だけで曽良を見つめる。
舞い落ちる紅葉たちを背景にして、真っ赤な落ち葉越しに絡み合ってしまった視線。茶色の瞳はどこまでも優しい色をしていた。
「っ…」
切り取られたようなその空間に飲み込まれたようにしばし何も考えられなくなっていた曽良は、はっと我に返って芭蕉から視線を外す。すると、ふふっと笑う気配がして先ほどまでの空気があっという間に壊れた。
「曽良くん、曽良くん。今、私に見とれてたでしょ?目をそらしたのは照れを隠すため?いや~、松尾カッコいいもんねぇ…うん、仕方ない仕方ない。」
良い俳句が出来たときと同じようなテンションで持って曽良との距離を縮めてくる芭蕉。事実ではあるが、認めるつもりはないし何より相変わらずのよく分からない自意識過剰なその態度に、腹が立った。
「だまらっしゃい!!」
「もみじっ!!」
容赦なく、思いっきり芭蕉の腹部に攻撃を食らわせる。芭蕉はいつものようによく分からない声を上げて崩れ落ちた。
「曽良くん…あんまりドゥ…」
しくしくと涙を流しながら呟く芭蕉の姿に、曽良はどこか安心していた。あぁ、これでまたいつも通りだ…と。
先ほどまでの雰囲気はもう完全に消え去った。
「…まぁ、旅が終わるまでまだまだ時間もあるし…ね。」
急いては事を仕損じる。
心の中でそんなことを呟きながら、芭蕉は安心して先を足早に歩く曽良の背中を追いかけた。
――君がまだこのままでいたいって思ってるなら。
「とりあえず、このままでいようか。」
まだまだ長い間、2人で旅を続けるんだから。
「芭蕉さん、早くしてください。日が暮れますよ。」
「分かってるってば!もうせっかちだなぁ曽良くんは。」
告白は、またいつかの機会にでも。
――――――――――――
なんだかキス率が急上昇中の「告白」シリーズ(勝手に)です。
曽良くん受けは難しいことが判明。読んだり見たりする分には好きなんですけどねぇ…。
今回一番厄介だったのは芭曽でした。どういう方向でいくかがなかなか決まらず…orz 結局「告白」なのに、告白しないで終わってしまったっていうね。最初はちゃんと告白させるつもりだったんですけど…どうにも、以前読んだものや書いたものと同じような感じになって納得いかず、やめました。
これも、なんか中途半端ですけどww
とりあえず…うちの曽良受けは曽良くんにSっ気がなくなり、攻めの方々がちょっと強気になるようです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
妹曽
「曽良。」
「何ですか、妹子さ…っん…」
不意に名前を呼ばれて返事をしながら顔を上げた曽良の唇と重なり合う妹子のそれ。しかし、いつものように軽く触れてすぐに離れた。
「…大好きです。」
いまだ息がかかるくらいの距離で目を合わせて、妹子は告白する。
曽良は表情を変えることなく、妹子を見つめ返して
「貴方はいちいち口づけてからでないと言えないのですか。」
ため息混じりに問いかけとも呟きとも取れるような口ぶりで言った。
妹子が何が楽しいのかくすくすと笑って、頬に添えた手をそのままに親指でそっと曽良の唇の形をなぞる。
「だって、曽良の唇…触れると気持ちが良いんだもの。つい口付けたくなるんですよ。」
「物好きな人ですね。僕よりいい人は大勢いると思いますよ。」
妹子の手を軽く払いのけて、ため息混じりに言い返す曽良。
「ダメですよ。例えそうだったとしても、僕はもう曽良しか見えないし曽良以外の人を愛することは出来ない。」
「っ…」
妹子の言葉に息を詰める。表情はさほど変わっていないが、曽良がわずかに視線を逸らしたのが妹子には分かった。
「責任…取ってくださいね?曽良。」
「なっ…!…ん、ぅ…」
曽良の反論は、再び重なり合った唇に遮られてしまった。
―――――――――
鬼曽
「曽良ー…」
読書をしている曽良に声をかける。
「チッ…何ですか、うっとうしい。」
曽良は読書が中断されたのが腹立たしかったのか、顔を上げながら舌打ち混じりに返答した。
「おまっ、舌打ちするか?普通!」
そんな曽良の反応に鬼男もカチンときて、身を乗り出して言い返す。それに対し心底嫌そうに眉根を寄せたと思うと、読書続行の意を示すように視線を鬼男から本に戻した曽良。
「お前なぁ…!」
「うるさいですよ。僕は暇じゃないんです、早く用件を言ってください。」
文句を言おうと口を開いた鬼男を遮り、読書は続けたままだが話を聞くつもりはあるらしく曽良は先を促した。
すると鬼男は待ってましたといわんばかりにニヤリと口元を上げる。
「ん?ただ呼んでみただけ。意味はない。」
鬼男の答えに、ピクリと曽良の眉が動いた。
読んでいた本を閉じ、鬼男の方を苛立ちを隠しもせずに睨む。
「…不愉快です。僕は、あなたのそういうところが大嫌いなんですよ。」
鬼男は変わらず口元に笑みを貼り付けたまま「奇遇だな。」と答えて続ける。
「僕も、お前のそのいちいち攻撃的になるところが大嫌いだよ。」
「僕を攻撃的にしているのはあなたのその態度でしょう。」
「僕を批判する前に自分の性格を振り返ってみたらどうだ?僕でなくたって同じようにするさ。」
ムッとした様子で曽良が言い返しても、鬼男の態度は変わらず。
「その言葉、そっくりそのままお返ししますよ。…僕の性格のことをあなたにとやかく言われる筋合いはありません。」
「だったら僕の性格についてもお前が言うことじゃないよな。大きなお世話だ。」
「だからあなたは嫌いなんですよ。…時間を無駄にしました。」
お互いがお互いをにらみつけて、どちらともなく視線を逸らす。
曽良はそのまま本の続きを読み始め、鬼男は何をするでもなく外を眺めた。
「……」
「……」
しばらく黙っていた2人だが、曽良の読書がキリのいいところまでいったのとほぼ同時に、鬼男が曽良の後頭部に手を回して引き寄せた。
「っ…ん…」
自然な流れで重なり合うお互いの唇。口付けたまま鬼男が空いていた手も曽良の背中に回して抱きしめれば、曽良は読んでいた本にしおりを挟んで閉じる。
触れ合う唇から…体から、熱が伝わる。うるさいくらいに早鐘を打つ互いの心臓。長く長く、酸素が入り込む隙間さえ許さないくらいに深い口づけ。
「っ、は…っぁ…」
「お前なんか、嫌いだよ。」
「えぇ…僕も、あなたが嫌いですよ。」
言葉ではうまく伝えられない彼らの、不器用な愛情表現。
―――――――
太曽
「曽良、好きだー!!」
「出会いがしらに気持ちの悪いことを言わないでください。」
曽良の姿を見かけた太子は叫びながら曽良に飛びつこうとするも、あと一歩というところで軽くいなされた。
「気持ち悪…って、私が好きだって言ってんだから受け取れよ!」
曽良の態度に一瞬落ち込みかけた太子だが、勢いよく顔を上げて持ち直し、子どものように両手をばたつかせて声を張り上げる。
曽良はうるさそうに顔をしかめて
「誰も頼んでいません。寄らないでください。臭いんですよ、あなた。」
そう冷たく太子を突き放す。
「おまっ…私は臭くないぞ、断じて!!…なぁ曽良、さすがに私でもへこむぞ…?」
全力で否定したものの、後から落ち込んできたのか太子はがっくりと肩を落として弱々しく呟いた。曽良は面倒くさそうに軽く息を吐く。
「知りませんよそんなこと。僕には関係ありません。」
「っ、関係ないってどういう意味だコラァー!!」
さすがに曽良のその言葉には怒りが沸き起こったのか、太子は言いながら曽良の腕を強く引いて抱き寄せた。
「ちょっ…!」
予測不可能の太子の動きに反応が遅れた曽良はあっという間に太子の腕の中。
「曽良…私たち、一応恋人同士だろう?」
抱き寄せたことで近づいた耳元で、不安げに問いかける太子の言葉に、今度は曽良が怒ったように、けれどどこか悲しみを含んだ様子で眉根を寄せた。
「…一応って何ですか。」
「え?」
うつむいて小さく呟いた曽良の声が聞き取れず、思わず顔を覗き込みながら聞き返す太子。曽良が顔を上げて太子をキッと睨んだ。
「一応って、何ですか?僕は、あの時ちゃんと答えましたよね?」
あの時…大好きだ、付き合って欲しいと告げた太子に、曽良は珍しくわずかに頬を赤らめて自らの思いも言葉に乗せて応えてくれた。
素直に気持ちを言葉にするのが苦手な曽良が、僕もあなたが好きです。と精一杯の勇気と素直さでもって太子に答えたのだ。
「曽良…」
「何度も言わなくたって、ちゃんと理解しています。あなただって、そうであると信じていたのですが…僕の、勘違いでしたか。」
曽良の反論に太子が驚き目を見開いていると、曽良はぷいっとそっぽを向いてそんなことを言う。
きっと気のせいだとは思うが、うつむく曽良の背中が…太子にはなんだか泣いているように見えて。
「ごめん、曽良…。私たち、ちゃんと恋人同士だよな。」
殴られるかな…?なんて思いながらも、そっと後ろから抱きしめてみる。曽良はわずかに身じろぎはしたものの、何も言わず抵抗もしなかった。
「曽良が大好きだから、つい欲張りすぎた。今の言葉で十分だよ…愛してる、曽良…」
「っ、だから耳元で気持ちの悪いことを言わないでくださいと言っているんです!」
「ポピーーーーーー!!!」
耳元での告白に曽良は珍しく声を張り上げて容赦なく攻撃を食らわせると、太子は勢いつきすぎて地面に90%以上刺さった。
はぁ、はぁ…と自らを落ち着かせるように呼吸を繰り返して、最後に大きく深呼吸をした曽良は、熱い頬を誤魔化すように少しうつむき太子に背を向けて立ち去ってしまった。
―――――――
閻曽
「あ、曽良見ぃーつけた!」
きょろきょろと辺りを見回し、見慣れた着物姿を発見した閻魔はがばっと曽良に抱きついた。
「っ…!」
「げふぉっ!?」
一瞬動きを止めたものの、次の瞬間には容赦なく閻魔のわき腹に肘鉄がやってきた。予想以上の痛みに、閻魔は思わず手を離してしゃがみこむ。
「え、ちょっ…い、いきなり何、するの…曽良…」
肘鉄を食らったわき腹を押さえながら涙目で訴える閻魔を、曽良は冷ややかな眼差しで見下ろした。
「それはこちらのセリフです。いきなり何するんですか、閻魔さん。」
「えぇー…だって、曽良の姿見たら抱きつくしかないでしょ。」
よいしょ、とまるで痛みがなくなったかのようにごく普通に立ち上がり、曽良の冷たい問いに楽しげに笑って答える閻魔。
曽良は閻魔の返答を聞いて考えるように眉根を寄せるも、すぐに考えることを放棄したのかため息を吐いていつもの無表情に戻す。
「まったく理解できませんね、その理屈。」
「あーあ、ほーんとつれないなぁ曽良は。もうちょっと何かないのー?」
相変わらず取り付く島もない言葉に、閻魔は落ち込んだような素振りを見せて曽良の頬にそっと触れた。
「触らないでください、うっとうしい。」
「あーらら。」
触れられた手すら煩わしいと言いたげに簡単に叩き落とされる。
大して痛みはないがぷらぷらと叩き落とされてしまった片手を振りながら、閻魔もふぅ…と大きく息を吐き出した。
「曽良さぁ…もう少し素直になったら?」
「なっ…ん…っ!」
言うが早いか、あっという間に距離を縮めて曽良の後頭部に手を回し、唇を重ね合わせる閻魔。逃げようと腕を突っ張る曽良を逃がさないようにしっかりと腰に手を回して、長く深く口づけを続けた。
「っ、は…ぁ…」
突っ張っていた曽良の腕が震え、体から力が抜けてきたところで閻魔がようやく離れれば、銀が細く伸びて二人を繋ぐ。
「曽良…愛してるよ。」
「…っ」
パンッ!と小気味のいい音を立てて曽良が思いっきり閻魔の頬を叩いた。
酸素不足のせいか瞳は潤み、荒い呼吸をしてはいるものの、曽良は明らかに怒りを宿していて。
「いったぁ…ホント素直さも可愛げもない奴だね、曽良は…」
「そん、なもの…僕は必要としてません、から。」
叩かれた頬に軽く触れながら閻魔が呟けば、返ってくるのは敵意剥き出しの濡れた黒曜石の瞳とそんな言葉。
けれど閻魔はその濡れて光っているように見える黒曜石をついつい綺麗だと思ってしまう。いつか自分だけを見つめ映してくれる日を思い描いた。
「まぁ、すぐに落ちられてもつまらないか。いつか君に絶対、俺が好きで仕方ないって思わせてみせるよ。」
「…好きになさい。そんなことは決して有り得ませんから。」
ふふっと楽しげに笑った閻魔を、曽良は対照的に表情を変えず睨みつけた。
―――――――――
芭曽
「あ、曽良くん。ちょっと待って。」
落ち葉舞う山道、一人さっさと先を歩く曽良に不意に芭蕉が声をかけた。曽良はチッと舌打ちしつつも立ち止まり、後ろを振り返る。
「何ですか、芭蕉さん。疲れたから休みたいなんていったら断罪しますよ。日暮れ前にはふもとの村に着かなくてはいけないんですから。」
「それは分かってるって。そんなんじゃなくて…」
鋭く目を光らせて言う曽良に芭蕉は苦笑いで返し不自然なところで言葉を区切ると、軽く背伸びをして曽良の髪に手を伸ばす。が、そのまま動きを止めてしまった。
「…?何ですか。」
「うん。曽良くんの髪にね、紅葉が一枚付いてて。取ってあげようかなって思ったんだけど…」
芭蕉の理解できない行動に眉根を寄せて曽良が問いかけると、芭蕉は答えながらふわりと微笑んだ。
「曽良くんの黒髪とその紅く染まった紅葉があんまりにも似合ってて綺麗だから…取っちゃうのが惜しくてね。」
「っ…馬鹿ですかあなたは。付き合ってられません、先を急ぎますよ。」
芭蕉のその表情と微笑みに照れたのか一瞬動きを止めた曽良だが、すぐさまフイと芭蕉に背を向けて憎まれ口を叩く。
「あっ、ちょっと曽良くん!松尾今結構良いこと言ったと思ったのに!あーあ、紅葉も落ちちゃったじゃない…まったくもー」
言葉の通り歩き出す曽良の背中にそんなことを言い返しながら、背を向けたときに落ちてしまった紅葉を拾い上げた。
「ジジイのくだらない戯言に付き合うほど僕は暇じゃないんです。」
「くだらないことかなぁ、これ…。本当に綺麗だったんだよ?君の姿。」
立ち止まって振り返った曽良のつれない一言に、芭蕉は拾い上げた落ち葉をもてあそびながら視線だけで曽良を見つめる。
舞い落ちる紅葉たちを背景にして、真っ赤な落ち葉越しに絡み合ってしまった視線。茶色の瞳はどこまでも優しい色をしていた。
「っ…」
切り取られたようなその空間に飲み込まれたようにしばし何も考えられなくなっていた曽良は、はっと我に返って芭蕉から視線を外す。すると、ふふっと笑う気配がして先ほどまでの空気があっという間に壊れた。
「曽良くん、曽良くん。今、私に見とれてたでしょ?目をそらしたのは照れを隠すため?いや~、松尾カッコいいもんねぇ…うん、仕方ない仕方ない。」
良い俳句が出来たときと同じようなテンションで持って曽良との距離を縮めてくる芭蕉。事実ではあるが、認めるつもりはないし何より相変わらずのよく分からない自意識過剰なその態度に、腹が立った。
「だまらっしゃい!!」
「もみじっ!!」
容赦なく、思いっきり芭蕉の腹部に攻撃を食らわせる。芭蕉はいつものようによく分からない声を上げて崩れ落ちた。
「曽良くん…あんまりドゥ…」
しくしくと涙を流しながら呟く芭蕉の姿に、曽良はどこか安心していた。あぁ、これでまたいつも通りだ…と。
先ほどまでの雰囲気はもう完全に消え去った。
「…まぁ、旅が終わるまでまだまだ時間もあるし…ね。」
急いては事を仕損じる。
心の中でそんなことを呟きながら、芭蕉は安心して先を足早に歩く曽良の背中を追いかけた。
――君がまだこのままでいたいって思ってるなら。
「とりあえず、このままでいようか。」
まだまだ長い間、2人で旅を続けるんだから。
「芭蕉さん、早くしてください。日が暮れますよ。」
「分かってるってば!もうせっかちだなぁ曽良くんは。」
告白は、またいつかの機会にでも。
――――――――――――
なんだかキス率が急上昇中の「告白」シリーズ(勝手に)です。
曽良くん受けは難しいことが判明。読んだり見たりする分には好きなんですけどねぇ…。
今回一番厄介だったのは芭曽でした。どういう方向でいくかがなかなか決まらず…orz 結局「告白」なのに、告白しないで終わってしまったっていうね。最初はちゃんと告白させるつもりだったんですけど…どうにも、以前読んだものや書いたものと同じような感じになって納得いかず、やめました。
これも、なんか中途半端ですけどww
とりあえず…うちの曽良受けは曽良くんにSっ気がなくなり、攻めの方々がちょっと強気になるようです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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