うっかりしていた…
admin≫
2010/01/07 23:58:59
2010/01/07 23:58:59
26日から実家(山の中)に帰っていて、好きなようにネットが出来る状況でなかったので、大変ご挨拶が遅れてしまいました。
山から出たらとりあえず『ずっとあなたに逢いたくて』を上げる!
と、それだけ考えていたので上げたら満足してしまっていました。
遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます!
好き勝手に書いている小説ブログですが、訪問してくださる方々には本当に感謝しています。相変わらずのマイペースで好きなように書いていますが、今年もお付き合いいただけると幸いです。
今年もよろしくお願いいたします!
▼真面目なご挨拶だけじゃつまらないので▼
いつものメンバーであみだくじをして、年明けイチャイチャをさせよう!
ということでやったのです、が…
結果↓
①閻鬼
②太曽
③芭妹
なんだこれ^q^
ちょっと、天国組!お前らだけ『ずっとあなたに逢いたくて』で離れるという選択をさせてしまったのがそんなに嫌だったのか!?自分たちだけくっついて他別れさせるとか…しかも図ったように3組とも受け攻め逆転って言うね。
はい、じゃあ…行きまーっす
【閻鬼】
「あけましておめでとう、鬼男くん!今年もよろしくね。」
「…個人的には、今すぐにでもお前から離れたいんですけど。」
年明け早々、うっとうしいくらいの満面の笑みで挨拶をする閻魔に鬼男はわずかに頬を赤らめて、視線を逸らしたまま不機嫌そうに答えた。
「あ、冷たい。せっかく鬼男くんに似合う服持ってきたんだから笑ってよぉ~」
鬼男のつれない態度に落ち込んだ様子を見せて、言いながらツンツンとそっぽを向く鬼男の頬をつつく閻魔。
鬼男の中で、何かが切れた。
「っ…こんなもん着せられて、笑えって方が無理だろうがこの変態大王イカ!!」
「ぎゃあっ!痛い、痛いって鬼男くん!」
勢いよく立ち上がり、怒鳴りながら伸ばした爪を思いっきり閻魔の顔に突き刺す。閻魔は血を流しはするものの相変わらず死ぬことはなくて、それが今は余計に腹立たしかった。
「お前本気でいっぺんこのまま死ね!僕が八つ裂きにしてやるから!」
「ちょ、ちょっ…鬼男くん落ち着いて!せっかくの綺麗な振袖が汚れちゃうっ!借り物なんだから、それ!!」
今にも飛び掛りそうな勢いで腕を振り上げる鬼男の肩を掴み、自分の血で汚さないように気をつけながら閻魔も必死で叫んだ。借り物、という言葉を聞いて鬼男の動きがぴたりと止まる。
なんだかんだ言って真面目な性格である鬼男。借り物を勝手な都合で汚してしまったり使えなくしてしまったりするのをよしとするわけにはいかない。
「それ見たとき俺、真っ先に鬼男くんのこと思い浮かべたんだ。だってほら、鬼男くんの髪と目の色じゃない?すごく綺麗だなあって思って、鬼男くんに無性に会いたくなって…そしたら、着たところも見たくなった。」
鬼男の動きが止まったので閻魔も少しずつ力を抜きながら、一応の弁解をする。
鬼男から手を離し、自分の血を拭ってから閻魔は改めて鬼男の髪を梳くように撫でて、そのまま頬に触れる。
「実際に着てみた鬼男くんは、やっぱりすごく…綺麗だよ。本当によく似合ってる。」
「っ…」
真面目な顔ではっきりと告げる閻魔を見て、素直にカッコいいと思ってしまった鬼男は、熱くなった顔を誤魔化すように視線を斜め下に落とした。
「どうしたの?…あ、もしかして照れてる?隠さないで見せてよ鬼男くん!」
「っ、止め…!見んなっ、アホ大王!!」
問いかけてから鬼男の状態を理解した閻魔が、嬉々として鬼男の顔を見ようとするので、鬼男はますます恥ずかしくなってしまって必死に抵抗する。
閻魔の体を押して遠ざけようとしたり、腕を顔の前まで持っていき、袖を利用して隠そうとしたり。その姿がまた可愛らしくて閻魔を喜ばせるのだが。
「…大好きだよ、鬼男くん。今年もずっと、俺の傍にいてくれるよね?」
攻防戦の末、壁に追い詰められて身動きが出来なくなってしまった鬼男の腕を逃げられないようにしっかり掴み、わざわざ耳元で問いかける閻魔。
ピクッと身を震わせた鬼男を満足げに眺めてから、問いの答えを求めるように鬼男をじっと見つめた。鬼男が一番好きな、自信に満ち溢れた不敵な笑みを乗せて。
「っ…大王の、隣はっ…僕以外を認めた覚え、ありません…から。」
誰が見ても分かるくらいに顔を赤くして、鬼男は小さな声でそう答えた。
本年も、どうぞよろしくお願いいたします。
【太曽】
「あけましておめでとーう!」
「おめでとうございます。」
カツン、と挨拶の言葉とともに音を立てる猪口。太子と曽良の前には多種多様なおせち料理と、沢山の酒。正月ということで思いっきり食べて飲みたいという太子が、曽良の家を訪ねてきたのだ。
初めは追い払おうとした曽良だが、結局惚れた弱みとでも言うべきか付き合わされる羽目になってしまった。もちろん、そんなことしっかり口にするつもりなんてないのだが。
「正月に曽良と2人きりなんて、今年一年は絶対いい年になるでおまっ!」
「年明け早々カレー臭いオッサンと一緒だなんて、早くも悪い予感しかしませんね。」
来たときからすでに少し酔っていることは気づいていたので、飲んでは食べてやたらと話すを繰り返す太子に、曽良は軽い相槌を打ちながらいつものように自分のペースで酒を飲み進める。
太子が飲みすぎるということは今までなかったので、いつもよりハイペースで飲んでいるようではあるが、大丈夫だろうと安心していたのが間違いだった。
「曽良って…肌、キレーだよなぁ…」
「そんなことを言われて喜ぶのは女性くらいです。それにしても、よくもまあこれだけの量を空けましたね。」
すっかり酔った様子の太子の言葉を切り返して、曽良は大方からになった徳利とおせちの重箱を見ながら呟いた。太子に付き合って曽良もいつもより大目に飲んでいたとは言え、大半は太子一人で飲んでいたはずだ。
本当に大丈夫なのだろうかとここに来てようやく曽良は心配になってきた。
「太子さん、大丈夫ですか?一人で帰れないようなら、妹子さんでも呼びますが。」
飲むものも食べるものもなくなった今、この後は帰るだけだろうと思って曽良が気遣うように問いかけると、太子はどこかムッとしたように不機嫌になった。
「曽良は…妹子のほうが、私より頼りになるって、そう言うんだ…なぁ!」
「…はぁ?いきなり何を言っているのか、意味が分からないのですが。」
どこからその発想が出てきたのかさっぱり理解できず、眉根を寄せて言い返す曽良。太子は身を乗り出して曽良の着物のあわせを掴むと、自分の方に引き寄せた。
「ちょっと、太子さん。何するんですか。」
「曽良ぁ…愛してる…」
努めて冷静に曽良が言うと、太子はあわせを引っ張ったことにより晒された曽良の白く綺麗な肌に唇を寄せ、吐息混じりに告白してくる。駆け抜けた痺れるような甘い感覚に、曽良の体は素直に震える。
太子はそのまま唇を曽良の鎖骨まで這わせると、少し強めに歯を立てた。
「ぁ、ッ…!」
大きく肩を震わせ、体の力が抜けたことにより机に手をつく曽良。ふふんと楽しげに笑う太子の声が聞こえた。
「私知ってるぞぉー、曽良はぁ…鎖骨、が…弱いんだって、ことぉ…」
「…っ、」
へらっと笑って言う太子に無性に腹が立って、曽良は片手で思いっきり太子の頭を引っぱたいた。
「いたぁーっ!」
「さて…今思っていることを洗いざらい吐くのと、今飲んで食べたものを吐くまで叩かれるのと、どちらが良いですか?」
太子が声を上げて離れたところで一息ついて乱れた着物を正してから、曽良は無表情に問いかける。構えられた手のひらが、言っていることは本気であることを物語っていた。
「…だって、さ…だって、せっかく…私が、会いに来て、話してやってるのに…曽良は、聞いてるんだか聞いてないんだか、分からないような、返答…して。かと思ったら、妹子呼ぶとか…早く帰れみたいなこと、言いやがって…」
「言いたいことがよく分からないんですが?」
的を射ない太子の物言いに、曽良は苛立ち混じりに分かりやすくまとめて話すことを要求すると、太子は酔った頭で言いたいことを視線をさ迷わせてまとめる。
「年末は忙しくて、会えなかったから、年明けて真っ先に、会いに来てやったんだぞ…もっと、喜んで欲しかった、し…今夜は…その、お前のとこに泊まって…ひめ、は…と、かしたかった、のに…曽良は、何だよ…なんでもないような顔してさぁ…」
「はぁ…まぁ、言いたいことは非常に沢山あるのですが、要するに何なんですか。」
苛立ちを通り越して呆れるほどのまとまりのなさに、曽良はため息混じりに再び問いかけた。
すると太子はじっと曽良を見つめて口を開いた。
「要するに、だな!私は、曽良に会えなくて寂しかったんだ!だから、もっと曽良を感じたいんでおまっ!だから酔った勢いでちょっとこのまま布団に」
「お断りします。さっさと帰りなさいこの酔っ払いが。」
太子の言葉を遮り冷たく一蹴して、曽良は太子に背を向けた。
あなたにとって今年一年が楽しく幸せなものでありますように。
【芭妹】
「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします、芭蕉さん。」
「うん、明けましておめでとう妹子くん。こちらこそ、よろしくね。」
芭蕉庵にて、新年の挨拶を交わす妹子と芭蕉。1月1日…新しい1年の始まりだ。
「妹子くん、初夢はどんなの見た?縁起が良いものは見れた?」
芭蕉がわくわくした様子で問いかけてきた。わざわざ話題を振ってくるのだから、恐らく芭蕉はよい夢が見れたのだろう。
「えっ…!?あ、えっと…その…」
しかし、妹子は初夢と聞いて途端に顔を真っ赤にした。言いづらそうにしどろもどろになりながら忙しなく視線をさ迷わせる。
「あー…えっと、じゃあ松尾から先に言うね。」
いったいどんな夢を見たんだろう…とかなり気になったが、ここはひとまず自分の夢を語って、それから聞き出すことにしようと芭蕉は口を開いた。
「えへへ、実はね…妹子くんが夢に出てきたんだよ。」
「え…僕、ですか?」
嬉しそうに笑って言う芭蕉の言葉に、妹子は少し驚いたように聞き返した。芭蕉は「うん。」と大きく頷いて柔らかく笑う。
「妹子くんが私の隣に居て、いつもみたいに笑って…色んな話をしてくれるの。それもすごく楽しそうに。なんか私、すごく幸せな気持ちになれて…朝起きたときまでその幸せは続いてたよ。」
幸せそうに話しながら、優しく髪を撫でてくれる芭蕉の手は妹子にとってとても心地よいものだった。
「あの…実は僕も、芭蕉さんのことを…夢に見たんです。」
「え、そうなの?」
恥ずかしそうにうつむいて妹子が言うと、芭蕉は手を止めて驚いたように問いかける。妹子は顔は上げずに、こくんと頷いてとつとつと話し出した。
「初めは、今みたいに芭蕉さんが僕の髪を撫でてくれて…それから、いつもみたいに好きって、言ってくれて。キ、キスとか…その、色々…っ!だから、えっと…僕のほうもっ、すごく幸せな夢だった、ん…ですけど…やっぱり、ほらっ…は、恥ずかしいじゃな」
「…好きだよ、妹子くん。」
「っ!!」
妹子の言葉を遮って囁かれた告白。再び撫でられる感覚とその言葉に、妹子はぴきっと身を固まらせてしまった。
「私は今年もずっと…妹子くんを好きでいるよ。」
愛しそうに目を細めて、芭蕉は愛の言葉を繰り返す。次の瞬間には額に柔らかい感触が降ってきて。それはそのまままぶたから目尻へ、目尻から頬へとゆっくり移動してきた。
「ばしょ、う…さ…」
「ねえ…君の夢に出てきた私に嫉妬した、って言ったら…妹子くんは呆れる?」
恥ずかしそうに震えて名前を呼ぶ妹子をきゅっと抱き寄せて、芭蕉は苦笑混じりに問いかけてきた。え…?と、芭蕉の腕の中でびっくりしたように瞬きを数回してすぐ傍の顔を見やる妹子。
「いい年してみっともないよね…でも、夢より現実で…私を感じて欲しいの。」
「そんなこと、言ったら…僕だって。…夢の僕より現実の僕で、幸せを感じて欲しい、です…。」
芭蕉の言葉に妹子は小さな声で答えて、自らも芭蕉の背中に手を回した。
A Happy New Year!
いつものメンバーであみだくじをして、年明けイチャイチャをさせよう!
ということでやったのです、が…
結果↓
①閻鬼
②太曽
③芭妹
なんだこれ^q^
ちょっと、天国組!お前らだけ『ずっとあなたに逢いたくて』で離れるという選択をさせてしまったのがそんなに嫌だったのか!?自分たちだけくっついて他別れさせるとか…しかも図ったように3組とも受け攻め逆転って言うね。
はい、じゃあ…行きまーっす
【閻鬼】
「あけましておめでとう、鬼男くん!今年もよろしくね。」
「…個人的には、今すぐにでもお前から離れたいんですけど。」
年明け早々、うっとうしいくらいの満面の笑みで挨拶をする閻魔に鬼男はわずかに頬を赤らめて、視線を逸らしたまま不機嫌そうに答えた。
「あ、冷たい。せっかく鬼男くんに似合う服持ってきたんだから笑ってよぉ~」
鬼男のつれない態度に落ち込んだ様子を見せて、言いながらツンツンとそっぽを向く鬼男の頬をつつく閻魔。
鬼男の中で、何かが切れた。
「っ…こんなもん着せられて、笑えって方が無理だろうがこの変態大王イカ!!」
「ぎゃあっ!痛い、痛いって鬼男くん!」
勢いよく立ち上がり、怒鳴りながら伸ばした爪を思いっきり閻魔の顔に突き刺す。閻魔は血を流しはするものの相変わらず死ぬことはなくて、それが今は余計に腹立たしかった。
「お前本気でいっぺんこのまま死ね!僕が八つ裂きにしてやるから!」
「ちょ、ちょっ…鬼男くん落ち着いて!せっかくの綺麗な振袖が汚れちゃうっ!借り物なんだから、それ!!」
今にも飛び掛りそうな勢いで腕を振り上げる鬼男の肩を掴み、自分の血で汚さないように気をつけながら閻魔も必死で叫んだ。借り物、という言葉を聞いて鬼男の動きがぴたりと止まる。
なんだかんだ言って真面目な性格である鬼男。借り物を勝手な都合で汚してしまったり使えなくしてしまったりするのをよしとするわけにはいかない。
「それ見たとき俺、真っ先に鬼男くんのこと思い浮かべたんだ。だってほら、鬼男くんの髪と目の色じゃない?すごく綺麗だなあって思って、鬼男くんに無性に会いたくなって…そしたら、着たところも見たくなった。」
鬼男の動きが止まったので閻魔も少しずつ力を抜きながら、一応の弁解をする。
鬼男から手を離し、自分の血を拭ってから閻魔は改めて鬼男の髪を梳くように撫でて、そのまま頬に触れる。
「実際に着てみた鬼男くんは、やっぱりすごく…綺麗だよ。本当によく似合ってる。」
「っ…」
真面目な顔ではっきりと告げる閻魔を見て、素直にカッコいいと思ってしまった鬼男は、熱くなった顔を誤魔化すように視線を斜め下に落とした。
「どうしたの?…あ、もしかして照れてる?隠さないで見せてよ鬼男くん!」
「っ、止め…!見んなっ、アホ大王!!」
問いかけてから鬼男の状態を理解した閻魔が、嬉々として鬼男の顔を見ようとするので、鬼男はますます恥ずかしくなってしまって必死に抵抗する。
閻魔の体を押して遠ざけようとしたり、腕を顔の前まで持っていき、袖を利用して隠そうとしたり。その姿がまた可愛らしくて閻魔を喜ばせるのだが。
「…大好きだよ、鬼男くん。今年もずっと、俺の傍にいてくれるよね?」
攻防戦の末、壁に追い詰められて身動きが出来なくなってしまった鬼男の腕を逃げられないようにしっかり掴み、わざわざ耳元で問いかける閻魔。
ピクッと身を震わせた鬼男を満足げに眺めてから、問いの答えを求めるように鬼男をじっと見つめた。鬼男が一番好きな、自信に満ち溢れた不敵な笑みを乗せて。
「っ…大王の、隣はっ…僕以外を認めた覚え、ありません…から。」
誰が見ても分かるくらいに顔を赤くして、鬼男は小さな声でそう答えた。
本年も、どうぞよろしくお願いいたします。
【太曽】
「あけましておめでとーう!」
「おめでとうございます。」
カツン、と挨拶の言葉とともに音を立てる猪口。太子と曽良の前には多種多様なおせち料理と、沢山の酒。正月ということで思いっきり食べて飲みたいという太子が、曽良の家を訪ねてきたのだ。
初めは追い払おうとした曽良だが、結局惚れた弱みとでも言うべきか付き合わされる羽目になってしまった。もちろん、そんなことしっかり口にするつもりなんてないのだが。
「正月に曽良と2人きりなんて、今年一年は絶対いい年になるでおまっ!」
「年明け早々カレー臭いオッサンと一緒だなんて、早くも悪い予感しかしませんね。」
来たときからすでに少し酔っていることは気づいていたので、飲んでは食べてやたらと話すを繰り返す太子に、曽良は軽い相槌を打ちながらいつものように自分のペースで酒を飲み進める。
太子が飲みすぎるということは今までなかったので、いつもよりハイペースで飲んでいるようではあるが、大丈夫だろうと安心していたのが間違いだった。
「曽良って…肌、キレーだよなぁ…」
「そんなことを言われて喜ぶのは女性くらいです。それにしても、よくもまあこれだけの量を空けましたね。」
すっかり酔った様子の太子の言葉を切り返して、曽良は大方からになった徳利とおせちの重箱を見ながら呟いた。太子に付き合って曽良もいつもより大目に飲んでいたとは言え、大半は太子一人で飲んでいたはずだ。
本当に大丈夫なのだろうかとここに来てようやく曽良は心配になってきた。
「太子さん、大丈夫ですか?一人で帰れないようなら、妹子さんでも呼びますが。」
飲むものも食べるものもなくなった今、この後は帰るだけだろうと思って曽良が気遣うように問いかけると、太子はどこかムッとしたように不機嫌になった。
「曽良は…妹子のほうが、私より頼りになるって、そう言うんだ…なぁ!」
「…はぁ?いきなり何を言っているのか、意味が分からないのですが。」
どこからその発想が出てきたのかさっぱり理解できず、眉根を寄せて言い返す曽良。太子は身を乗り出して曽良の着物のあわせを掴むと、自分の方に引き寄せた。
「ちょっと、太子さん。何するんですか。」
「曽良ぁ…愛してる…」
努めて冷静に曽良が言うと、太子はあわせを引っ張ったことにより晒された曽良の白く綺麗な肌に唇を寄せ、吐息混じりに告白してくる。駆け抜けた痺れるような甘い感覚に、曽良の体は素直に震える。
太子はそのまま唇を曽良の鎖骨まで這わせると、少し強めに歯を立てた。
「ぁ、ッ…!」
大きく肩を震わせ、体の力が抜けたことにより机に手をつく曽良。ふふんと楽しげに笑う太子の声が聞こえた。
「私知ってるぞぉー、曽良はぁ…鎖骨、が…弱いんだって、ことぉ…」
「…っ、」
へらっと笑って言う太子に無性に腹が立って、曽良は片手で思いっきり太子の頭を引っぱたいた。
「いたぁーっ!」
「さて…今思っていることを洗いざらい吐くのと、今飲んで食べたものを吐くまで叩かれるのと、どちらが良いですか?」
太子が声を上げて離れたところで一息ついて乱れた着物を正してから、曽良は無表情に問いかける。構えられた手のひらが、言っていることは本気であることを物語っていた。
「…だって、さ…だって、せっかく…私が、会いに来て、話してやってるのに…曽良は、聞いてるんだか聞いてないんだか、分からないような、返答…して。かと思ったら、妹子呼ぶとか…早く帰れみたいなこと、言いやがって…」
「言いたいことがよく分からないんですが?」
的を射ない太子の物言いに、曽良は苛立ち混じりに分かりやすくまとめて話すことを要求すると、太子は酔った頭で言いたいことを視線をさ迷わせてまとめる。
「年末は忙しくて、会えなかったから、年明けて真っ先に、会いに来てやったんだぞ…もっと、喜んで欲しかった、し…今夜は…その、お前のとこに泊まって…ひめ、は…と、かしたかった、のに…曽良は、何だよ…なんでもないような顔してさぁ…」
「はぁ…まぁ、言いたいことは非常に沢山あるのですが、要するに何なんですか。」
苛立ちを通り越して呆れるほどのまとまりのなさに、曽良はため息混じりに再び問いかけた。
すると太子はじっと曽良を見つめて口を開いた。
「要するに、だな!私は、曽良に会えなくて寂しかったんだ!だから、もっと曽良を感じたいんでおまっ!だから酔った勢いでちょっとこのまま布団に」
「お断りします。さっさと帰りなさいこの酔っ払いが。」
太子の言葉を遮り冷たく一蹴して、曽良は太子に背を向けた。
あなたにとって今年一年が楽しく幸せなものでありますように。
【芭妹】
「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします、芭蕉さん。」
「うん、明けましておめでとう妹子くん。こちらこそ、よろしくね。」
芭蕉庵にて、新年の挨拶を交わす妹子と芭蕉。1月1日…新しい1年の始まりだ。
「妹子くん、初夢はどんなの見た?縁起が良いものは見れた?」
芭蕉がわくわくした様子で問いかけてきた。わざわざ話題を振ってくるのだから、恐らく芭蕉はよい夢が見れたのだろう。
「えっ…!?あ、えっと…その…」
しかし、妹子は初夢と聞いて途端に顔を真っ赤にした。言いづらそうにしどろもどろになりながら忙しなく視線をさ迷わせる。
「あー…えっと、じゃあ松尾から先に言うね。」
いったいどんな夢を見たんだろう…とかなり気になったが、ここはひとまず自分の夢を語って、それから聞き出すことにしようと芭蕉は口を開いた。
「えへへ、実はね…妹子くんが夢に出てきたんだよ。」
「え…僕、ですか?」
嬉しそうに笑って言う芭蕉の言葉に、妹子は少し驚いたように聞き返した。芭蕉は「うん。」と大きく頷いて柔らかく笑う。
「妹子くんが私の隣に居て、いつもみたいに笑って…色んな話をしてくれるの。それもすごく楽しそうに。なんか私、すごく幸せな気持ちになれて…朝起きたときまでその幸せは続いてたよ。」
幸せそうに話しながら、優しく髪を撫でてくれる芭蕉の手は妹子にとってとても心地よいものだった。
「あの…実は僕も、芭蕉さんのことを…夢に見たんです。」
「え、そうなの?」
恥ずかしそうにうつむいて妹子が言うと、芭蕉は手を止めて驚いたように問いかける。妹子は顔は上げずに、こくんと頷いてとつとつと話し出した。
「初めは、今みたいに芭蕉さんが僕の髪を撫でてくれて…それから、いつもみたいに好きって、言ってくれて。キ、キスとか…その、色々…っ!だから、えっと…僕のほうもっ、すごく幸せな夢だった、ん…ですけど…やっぱり、ほらっ…は、恥ずかしいじゃな」
「…好きだよ、妹子くん。」
「っ!!」
妹子の言葉を遮って囁かれた告白。再び撫でられる感覚とその言葉に、妹子はぴきっと身を固まらせてしまった。
「私は今年もずっと…妹子くんを好きでいるよ。」
愛しそうに目を細めて、芭蕉は愛の言葉を繰り返す。次の瞬間には額に柔らかい感触が降ってきて。それはそのまままぶたから目尻へ、目尻から頬へとゆっくり移動してきた。
「ばしょ、う…さ…」
「ねえ…君の夢に出てきた私に嫉妬した、って言ったら…妹子くんは呆れる?」
恥ずかしそうに震えて名前を呼ぶ妹子をきゅっと抱き寄せて、芭蕉は苦笑混じりに問いかけてきた。え…?と、芭蕉の腕の中でびっくりしたように瞬きを数回してすぐ傍の顔を見やる妹子。
「いい年してみっともないよね…でも、夢より現実で…私を感じて欲しいの。」
「そんなこと、言ったら…僕だって。…夢の僕より現実の僕で、幸せを感じて欲しい、です…。」
芭蕉の言葉に妹子は小さな声で答えて、自らも芭蕉の背中に手を回した。
A Happy New Year!
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