聖なる夜をあなたと
admin≫
2009/12/24 13:42:04
2009/12/24 13:42:04
いつかの時代のどっかの島国では、何でもかんでも恋人同士のイベントになるらしい。
いつもなら、恋人同士のイベントだなんて馬鹿げてると笑い飛ばすところだけど…
恋人同士のイベント、なんて気恥ずかしくてたまらない。
いつかの時代のどっかの島国で勝手に決めたただの売り上げ底上げに付き合うなんてバカらしい。
そう口にしていつだって誤魔化してたけど…
たまには、そんなイベントにのってみるのも悪くないかもしれない。
・宗教、信仰的な要素が少し含まれます。
・時代や現実的問題はやっぱり無視してます(←お前
▼鬼閻・妹太・曽芭▼
鬼閻
「さぁ鬼男くん!今日は何の日だ!?」
「お前は何のために死者の振り分けをしないで降りてきてると思ってんだ。」
何の前触れもなく唐突に嬉々として問いかけてきた閻魔に、鬼男は呆れ顔で鋭いツッコミを入れた。今、閻魔と鬼男がいるのは人間たちのいる世界。
雪でも降りそうなくらい空には灰色の重い雲がかかり、道行く人間の吐く息は白く姿を現しては消えていく。
「もうっ!鬼男くんてば真面目すぎ!!あるでしょ、これ以外にさ!」
鬼男の間髪入れないツッコミに拗ねたように声を荒げた。
「…納めの地蔵以外に何があるって言うんですか。第一、他の事をやってる暇なんて」
「クリスマス・イヴだよ!恋人たちの行事として有名なのは今日なんだってば!」
怪訝な表情を見せて答える鬼男の言葉を遮って、閻魔はビシッと鬼男の目の前に指を突き出す。祭祀が終わったらすぐ帰るなんて物足りない。
しかし鬼男はそれを聞いてあからさまに大きなため息をついた。
「お前な…自分に関わる祭祀と供養してるところに来てるのに、他宗教の行事に乗ろうってんですか。」
「良いんだよ。ここではそんなに宗教としての意味合いは強くないんだから。」
鬼男が言うと、どこか楽しそうに笑って答える閻魔。
甘えるように鬼男の腕に懐いてから、上目遣いに鬼男を見上げた。
「たまには鬼男くんと普通に恋人してみたいなぁ…ダメ?」
「っ…」
言葉に詰まった時点で鬼男の負けは確定。
甘える声と透き通る紅玉の上目遣いに勝つ術を、鬼男は未だに持っていなかった。
「あー…ったく、仕方ねぇなーもう!分かりました、残りの祭祀終わったらな!」
「さすが鬼男くん!大好き!ほんと愛してるっ!」
鬼男が半ば自棄になりながら叫ぶと、閻魔は心底嬉しそうな笑顔を見せて告白の嵐。
「はいはい。そんなこと言わなくたって十分わかってます。」
「えー、それでも言いたい~」
鬼男のそっけない返答も何のその。閻魔の喜びは留まるところを知らないようだ。
納めの地蔵が終わったら街に繰り出そう。何をするわけでもないが、明るく綺麗に彩られた街並みをのんびり歩いて、目に付いた店に入るのも悪くない。
寒いといってくっついてきたときにさり気なく手を握ってやったら、こいつは恥ずかしそうに頬を染めながらもすり寄ってくるだろうか。
聖なる夜はあなたとともに。
―――――――――
妹太
「くっそ、アホの太子はどこ行ったんだ!」
12月24日。人々が忙しなく動き回るこの時期ですら、太子は相変わらずのマイペースで今日もふらっと仕事放棄をしてくれた。
自分の仕事だって年内に終わるか終わらないかという状況なのに、太子が居なくなったときに探しに行く役目はいつの間にか妹子に確定していて。結局現在やっている仕事は一時中断で寒空の下妹子は駆け回っていた。
「じゃが芋里芋いもの子妹子~」
晴れた日に2人で見つけたクローバーが沢山ある丘で、調子の外れた歌といっていいのか分からない声が聞こえていた。
この寒い時期にやっぱり青いジャージだけを着て楽しそうにクローバーを愛でるカレー臭いオッサン。
「誰が芋の子だ、このアホ摂政。」
「わっ、妹子!?お前…いつ来たんだ…」
すぐ後ろに立って妹子が声をかけてやると、太子はまったく気づいていなかったのか肩を跳ね上がらせて驚き振り返ってきた。
「たった今ですよ。まったく…忙しいときくらいちゃんと仕事できないんですか?僕だってやること山積みなんだから、余計な時間取らせないでくださいよ。」
終わりそうになると追加される尽きることのない仕事の山に苛立ちが募っていたせいもあり、八つ当たり気味に文句をぶつけてしまった妹子。すると太子は一瞬表情を暗くして、すぐにふっと視線を背けてしまった。
「…太子?」
いつもなら噛み付くように反論をしてきて、お互いすっきりするまで言い争う流れになるはずなのに。いつもと違う反応を示した太子を不思議に思い、妹子が顔を覗き込むようにして名前を呼べば、再びそっぽを向く太子の体。
「だったら…私のことは他のやつに任せて、仕事してれば良かったのに。」
小さな声が寂しそうに呟く。それを聞いて一瞬目を丸くする妹子。しかし、次の瞬間には呆れたようにため息をついて太子に手を差し伸べた。
「誰よりも早く、確実に太子を見つけるのは僕です。他の誰かに譲るつもりはありません。」
今度は太子が目を丸くする番だった。身動きひとつとれずただ妹子の顔を見上げる。太子の視線に恥ずかしくなったのか、妹子がふいと視線を逸らす。
「どうせアンタのことだからまた、すぐに嫌になって逃げ出しますよね。溜まってる仕事、僕の部屋で一緒に片付けさせてあげますよ。どうせ一晩中かかるでしょうし。」
それはつまり、今夜はずっと一緒にいられるということで。太子は嬉しそうに笑みをこぼした。
「実はな…ずっと用意してた、お前に渡したいものがあるんだ。」
「奇遇ですね。僕も太子に渡したいものがあるんです。」
太子が妹子の手を掴んで言うと、妹子もその手を引いて立ち上がらせながら笑って答えた。
聖なる夜はあなたのために。
―――――――――
曽芭
旅の途中、師走ももう終わりに近づいた頃。寒い寒いと思っていたら、空からふわふわと舞い降りてきた雪が、あっという間に世界を白く染め変えてしまった。
「わぁ、積もってる!曽良くん、雪だよ雪!」
「見れば分かります。いちいちうるさいですよ、芭蕉さん。」
昨晩降っていた雪が積もったことに気づくと、芭蕉は子どものように窓に張り付いてはしゃぎだした。曽良はそんな芭蕉を見ていつものようにそっけない返答。
「君ね、仮にも師匠に向かってうるさいはないでしょ!もう…最近ほんと私のこと見下してるところあるよねぇ…」
松尾芭しょんぼり。と呟いて再び未だ雪を降らせ続ける灰色の空を見上げた。同じ部屋にいるのに窓の外にばかり向かう視線がやけに腹立たしくて、曽良は湯飲みに入っていた茶を飲み干すと、机に置いて立ち上がる。
「スランプ続きのジジイを見下さずして、ほかにどなたを見下すというんでしょうね。」
苛立ちも相まっていつも以上に冷たい語調で吐き捨てるように言うと、曽良は芭蕉に背を向け部屋を出て行ってしまった。
「あっ、曽良く…!」
慌てて振り返って呼び止めようとしたときにはすでに部屋のふすまがしまっていて。芭蕉は落ち込んだようにうつむいてため息をついた。
「せっかくの、ホワイトクリスマスなんだけど…な。」
特別な何かがしたいわけでも、欲しいわけでもない。ただ一緒に自然の変化を眺めながら一緒に過ごせたら…そう思っていただけに、曽良のいなくなった部屋はとても寒く、寂しく思えた。
「曽良くん、どこ行っちゃったんだろうね…」
ずっと持っていたマーフィーをぎゅっと握り締めて、芭蕉は寂しそうに呟く。先程までは綺麗だと思った降りしきる雪も、今では芭蕉の落ち込みを増長させるだけだった。
「ん…あれ?」
ふと視界の隅に映った白の中でゆれる黒。芭蕉が視線を空から地面の方へ移すと、しゃがみこんで何かしている曽良の姿が見えた。
「曽良くん、だよね?何やって…あっ!」
確認するように独り言を言いながら曽良の手元を見て理解した芭蕉は、嬉しそうに笑って自分も部屋を飛び出した。
急いで部屋から見える庭まで駆けて行く。
「曽良くんっ!」
外は思った以上に寒く、吐く息は雪と同じように白く変わったが芭蕉はそんなことお構い無しに大きな声で曽良を呼んだ。
曽良はその声を聞いて一瞬嫌そうな顔を見せたが、すぐに無表情に戻して振り返る。
「何ですか、この寒い中ウザイくらいテンションが高いですね。」
「それ!その雪だるまさ、前に私が作って見せた奴だよね!?ここにも同じものあったんだ?」
曽良がいつものように声をかけても、芭蕉は喜びの方が勝っているのか曽良の足元にある小さな雪だるまを指差して問いかけてきた。
旅に出る前、雪の積もった芭蕉庵でそこにある植物を使って作った雪だるま。曽良の足元にはそれとまったく同じように目や口がついた雪だるまがいた。
「ちゃんと見ててくれたんだね!ありがと、曽良くん!」
「何の話ですか。これは庭を見ていたときにたまたま見つけただけですよ。」
「『君火を焚け よきもの見せん 雪まるげ』」
言ってもシラを切ろうとする曽良に、芭蕉はあの時と同じ句を口にする。曽良が動きを止めた。
「私、今度は曽良くんから見せて欲しいな。」
「…とりあえず、こんな寒いところにいつまでも居たくないので部屋に戻りますよ芭蕉さん。」
にっこり笑って芭蕉が言うと、曽良はため息混じりに答えてさっさと部屋に向かって歩き出してしまった。
けれど今度は芭蕉に合わせたゆっくりとした速度。それがますます嬉しくて、芭蕉は終始笑顔で曽良の後を追う。
一日中そばにいてくれるなら…他に目移りしないというのなら…
聖なる夜はあなたに捧ぐ。
―――――-―――――-―――――
思いつきでやってはいけないと激しく後悔しております。
メリークリスマス!
ボーっとしていたら浮かんできた小話を文章にしてみたら止まるわ止まるわ…。しかもあんまりクリスマス関係なかったって言うね。
とにかく、特別な日はお互い一緒に居たいんだよ!ということでひとつ…
ありがとうございました。
鬼閻
「さぁ鬼男くん!今日は何の日だ!?」
「お前は何のために死者の振り分けをしないで降りてきてると思ってんだ。」
何の前触れもなく唐突に嬉々として問いかけてきた閻魔に、鬼男は呆れ顔で鋭いツッコミを入れた。今、閻魔と鬼男がいるのは人間たちのいる世界。
雪でも降りそうなくらい空には灰色の重い雲がかかり、道行く人間の吐く息は白く姿を現しては消えていく。
「もうっ!鬼男くんてば真面目すぎ!!あるでしょ、これ以外にさ!」
鬼男の間髪入れないツッコミに拗ねたように声を荒げた。
「…納めの地蔵以外に何があるって言うんですか。第一、他の事をやってる暇なんて」
「クリスマス・イヴだよ!恋人たちの行事として有名なのは今日なんだってば!」
怪訝な表情を見せて答える鬼男の言葉を遮って、閻魔はビシッと鬼男の目の前に指を突き出す。祭祀が終わったらすぐ帰るなんて物足りない。
しかし鬼男はそれを聞いてあからさまに大きなため息をついた。
「お前な…自分に関わる祭祀と供養してるところに来てるのに、他宗教の行事に乗ろうってんですか。」
「良いんだよ。ここではそんなに宗教としての意味合いは強くないんだから。」
鬼男が言うと、どこか楽しそうに笑って答える閻魔。
甘えるように鬼男の腕に懐いてから、上目遣いに鬼男を見上げた。
「たまには鬼男くんと普通に恋人してみたいなぁ…ダメ?」
「っ…」
言葉に詰まった時点で鬼男の負けは確定。
甘える声と透き通る紅玉の上目遣いに勝つ術を、鬼男は未だに持っていなかった。
「あー…ったく、仕方ねぇなーもう!分かりました、残りの祭祀終わったらな!」
「さすが鬼男くん!大好き!ほんと愛してるっ!」
鬼男が半ば自棄になりながら叫ぶと、閻魔は心底嬉しそうな笑顔を見せて告白の嵐。
「はいはい。そんなこと言わなくたって十分わかってます。」
「えー、それでも言いたい~」
鬼男のそっけない返答も何のその。閻魔の喜びは留まるところを知らないようだ。
納めの地蔵が終わったら街に繰り出そう。何をするわけでもないが、明るく綺麗に彩られた街並みをのんびり歩いて、目に付いた店に入るのも悪くない。
寒いといってくっついてきたときにさり気なく手を握ってやったら、こいつは恥ずかしそうに頬を染めながらもすり寄ってくるだろうか。
聖なる夜はあなたとともに。
―――――――――
妹太
「くっそ、アホの太子はどこ行ったんだ!」
12月24日。人々が忙しなく動き回るこの時期ですら、太子は相変わらずのマイペースで今日もふらっと仕事放棄をしてくれた。
自分の仕事だって年内に終わるか終わらないかという状況なのに、太子が居なくなったときに探しに行く役目はいつの間にか妹子に確定していて。結局現在やっている仕事は一時中断で寒空の下妹子は駆け回っていた。
「じゃが芋里芋いもの子妹子~」
晴れた日に2人で見つけたクローバーが沢山ある丘で、調子の外れた歌といっていいのか分からない声が聞こえていた。
この寒い時期にやっぱり青いジャージだけを着て楽しそうにクローバーを愛でるカレー臭いオッサン。
「誰が芋の子だ、このアホ摂政。」
「わっ、妹子!?お前…いつ来たんだ…」
すぐ後ろに立って妹子が声をかけてやると、太子はまったく気づいていなかったのか肩を跳ね上がらせて驚き振り返ってきた。
「たった今ですよ。まったく…忙しいときくらいちゃんと仕事できないんですか?僕だってやること山積みなんだから、余計な時間取らせないでくださいよ。」
終わりそうになると追加される尽きることのない仕事の山に苛立ちが募っていたせいもあり、八つ当たり気味に文句をぶつけてしまった妹子。すると太子は一瞬表情を暗くして、すぐにふっと視線を背けてしまった。
「…太子?」
いつもなら噛み付くように反論をしてきて、お互いすっきりするまで言い争う流れになるはずなのに。いつもと違う反応を示した太子を不思議に思い、妹子が顔を覗き込むようにして名前を呼べば、再びそっぽを向く太子の体。
「だったら…私のことは他のやつに任せて、仕事してれば良かったのに。」
小さな声が寂しそうに呟く。それを聞いて一瞬目を丸くする妹子。しかし、次の瞬間には呆れたようにため息をついて太子に手を差し伸べた。
「誰よりも早く、確実に太子を見つけるのは僕です。他の誰かに譲るつもりはありません。」
今度は太子が目を丸くする番だった。身動きひとつとれずただ妹子の顔を見上げる。太子の視線に恥ずかしくなったのか、妹子がふいと視線を逸らす。
「どうせアンタのことだからまた、すぐに嫌になって逃げ出しますよね。溜まってる仕事、僕の部屋で一緒に片付けさせてあげますよ。どうせ一晩中かかるでしょうし。」
それはつまり、今夜はずっと一緒にいられるということで。太子は嬉しそうに笑みをこぼした。
「実はな…ずっと用意してた、お前に渡したいものがあるんだ。」
「奇遇ですね。僕も太子に渡したいものがあるんです。」
太子が妹子の手を掴んで言うと、妹子もその手を引いて立ち上がらせながら笑って答えた。
聖なる夜はあなたのために。
―――――――――
曽芭
旅の途中、師走ももう終わりに近づいた頃。寒い寒いと思っていたら、空からふわふわと舞い降りてきた雪が、あっという間に世界を白く染め変えてしまった。
「わぁ、積もってる!曽良くん、雪だよ雪!」
「見れば分かります。いちいちうるさいですよ、芭蕉さん。」
昨晩降っていた雪が積もったことに気づくと、芭蕉は子どものように窓に張り付いてはしゃぎだした。曽良はそんな芭蕉を見ていつものようにそっけない返答。
「君ね、仮にも師匠に向かってうるさいはないでしょ!もう…最近ほんと私のこと見下してるところあるよねぇ…」
松尾芭しょんぼり。と呟いて再び未だ雪を降らせ続ける灰色の空を見上げた。同じ部屋にいるのに窓の外にばかり向かう視線がやけに腹立たしくて、曽良は湯飲みに入っていた茶を飲み干すと、机に置いて立ち上がる。
「スランプ続きのジジイを見下さずして、ほかにどなたを見下すというんでしょうね。」
苛立ちも相まっていつも以上に冷たい語調で吐き捨てるように言うと、曽良は芭蕉に背を向け部屋を出て行ってしまった。
「あっ、曽良く…!」
慌てて振り返って呼び止めようとしたときにはすでに部屋のふすまがしまっていて。芭蕉は落ち込んだようにうつむいてため息をついた。
「せっかくの、ホワイトクリスマスなんだけど…な。」
特別な何かがしたいわけでも、欲しいわけでもない。ただ一緒に自然の変化を眺めながら一緒に過ごせたら…そう思っていただけに、曽良のいなくなった部屋はとても寒く、寂しく思えた。
「曽良くん、どこ行っちゃったんだろうね…」
ずっと持っていたマーフィーをぎゅっと握り締めて、芭蕉は寂しそうに呟く。先程までは綺麗だと思った降りしきる雪も、今では芭蕉の落ち込みを増長させるだけだった。
「ん…あれ?」
ふと視界の隅に映った白の中でゆれる黒。芭蕉が視線を空から地面の方へ移すと、しゃがみこんで何かしている曽良の姿が見えた。
「曽良くん、だよね?何やって…あっ!」
確認するように独り言を言いながら曽良の手元を見て理解した芭蕉は、嬉しそうに笑って自分も部屋を飛び出した。
急いで部屋から見える庭まで駆けて行く。
「曽良くんっ!」
外は思った以上に寒く、吐く息は雪と同じように白く変わったが芭蕉はそんなことお構い無しに大きな声で曽良を呼んだ。
曽良はその声を聞いて一瞬嫌そうな顔を見せたが、すぐに無表情に戻して振り返る。
「何ですか、この寒い中ウザイくらいテンションが高いですね。」
「それ!その雪だるまさ、前に私が作って見せた奴だよね!?ここにも同じものあったんだ?」
曽良がいつものように声をかけても、芭蕉は喜びの方が勝っているのか曽良の足元にある小さな雪だるまを指差して問いかけてきた。
旅に出る前、雪の積もった芭蕉庵でそこにある植物を使って作った雪だるま。曽良の足元にはそれとまったく同じように目や口がついた雪だるまがいた。
「ちゃんと見ててくれたんだね!ありがと、曽良くん!」
「何の話ですか。これは庭を見ていたときにたまたま見つけただけですよ。」
「『君火を焚け よきもの見せん 雪まるげ』」
言ってもシラを切ろうとする曽良に、芭蕉はあの時と同じ句を口にする。曽良が動きを止めた。
「私、今度は曽良くんから見せて欲しいな。」
「…とりあえず、こんな寒いところにいつまでも居たくないので部屋に戻りますよ芭蕉さん。」
にっこり笑って芭蕉が言うと、曽良はため息混じりに答えてさっさと部屋に向かって歩き出してしまった。
けれど今度は芭蕉に合わせたゆっくりとした速度。それがますます嬉しくて、芭蕉は終始笑顔で曽良の後を追う。
一日中そばにいてくれるなら…他に目移りしないというのなら…
聖なる夜はあなたに捧ぐ。
―――――-―――――-―――――
思いつきでやってはいけないと激しく後悔しております。
メリークリスマス!
ボーっとしていたら浮かんできた小話を文章にしてみたら止まるわ止まるわ…。しかもあんまりクリスマス関係なかったって言うね。
とにかく、特別な日はお互い一緒に居たいんだよ!ということでひとつ…
ありがとうございました。
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