記憶の色(鬼男×閻魔)
admin≫
2010/01/11 23:58:06
2010/01/11 23:58:06
REN(漣)さんの動画を見て、勝手に書いて叩きつけた小説です。^q^
掲載許可をいただいたので、上げさせていただきます。
これは、私が動画とブログから勝手に想像、解釈したものです。
読んでくださるという方は追記からどうぞ。
漣さん、掲載許可ありがとうございました!
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鬼男が転生する日。閻魔は鬼男を呼び出した。何があるわけでもない…けれど、今日のように雲ひとつなく晴れ渡った日は、空が綺麗に見える場所だ。以前、鬼男と歩いたこともある思い出深い道。
「愛してる、ずっと…大好きだよ鬼男くん。」
青い空を見上げて呟けば、瞳から雫が頬を伝った。言葉は残ることなく青空に溶け、思いは涙となって流れていくようで。閻魔は涙を拭うこともせずに瞳を閉じる。
頭の中を、鬼男と出会ったその日から今日までの日常や嬉しいこと、悲しいこと…時には傷つけあってしまった思い出が駆け巡った。確かに自分たちは出会って、お互いまるで惹かれあうように恋をした。
「…ありがとう、鬼男くんと出会わせてくれて。素敵な恋を、させてくれて。」
閉じていた目を開けて、柔らかく微笑む。閻魔大王が赤い糸を信じるなんておかしいかもしれないけれど、強く繋がっていたんだと…出会うべくして出会ったのだと、今は信じたかった。
「♪~…」
自然と口から出てきた旋律。大好きと、ありがとうの気持ちを歌った…閻魔も鬼男も好きな曲。閻魔の通る声によく合っていると、鬼男が笑っていたのを思い出した。
「あ…」
呼び出された場所に近づくにつれて大きくなる歌声に、鬼男はふと顔を上げる。目を閉じてのびのびと歌う閻魔の姿に、無意識に顔が綻んで優しい微笑みを浮かべた。少し離れたところで立ち止まり、閻魔の歌が終わるのを待つ。
「お待たせしました、大王。」
「あ、鬼男…く、ん…」
歌が終わり、一息ついたところで閻魔に近づき鬼男は声をかけた。閻魔が振り返ると、そこには大好きな優しい笑顔で、わずかにだが光を放つ鬼男の姿。
出会えてよかったと、ありがとうの気持ちとともに笑って言えると思っていたのに、その姿を目の当たりにして閻魔の心が揺らいだ。
「ねえ、キミから、」
――どうかきえないで…ここに、いてよ…!
鬼男の体から溢れては消えていく薄い色を含んだ光の中には、鬼男の過ごした時間も…2人きりの大切な時間もたくさん詰まっていて。
お願い、誰か止めてよ。連れていかないで…オレたちの大切な…
「大王…?」
不自然に止まった閻魔の言葉を不思議に思い鬼男が声をかけると、閻魔はハッとしたように肩を震わせた。結局…黙っていてももう時間は戻らないし、これは決まっていることだ。
「今日で…君とはお別れだよ。おめでとう、鬼男くん。今まで…本当に、ありがとう。」
「え…?」
泣きそうに震えた声で、閻魔は無理矢理笑って言おうと思っていた言葉を口にする。言葉にすると、それははっきりとした形となって鬼男に表れた。先程まではわずかに、ゆっくりと放たれていた光が、薄い色から濃い色へと変わり速度も速まる。
鬼男も脳内に蘇り廻っては消えていく記憶に、別離が近いことに気がついた。初めは自分でも覚えていないような些細なこと。続いて印象に残っている出来事。小さくて大したことのない記憶から、だんだんと大きくて大切な記憶が消えていく。
「っ…!」
離れたくない…消えて欲しくないのに、それは留まることも掴むこともできなかった。
「…あなたのことを、心から…強く愛しています。隣に立って、誰よりもずっとそばにいられたことを…幸せに思っています。」
最後に残った記憶は、何にも変えられない…何があっても変わらない強い閻魔への思いだった。優しくて…とても、愛しい記憶。大切で、最後まで無くしたくなかった人。
「 」
閻魔はいっぱいに涙を溜めて、それでも何とかして最後の言葉を口にしたけれど、音にはならなかった。たった5文字の、けれど大切な言葉。
しかし鬼男は何も言わずどこか嬉しそうに笑って、閻魔の白い頬に触れるだけの軽い口付けを送る。触れたその瞬間にはもうその感触は無くて、彼の瞳によく似た色を纏って光の中に消えてしまった。
「っ…」
堪えきれず溢れた涙が、頬に透明な筋を作る。彼の光の名残をきゅっと抱きしめて、閻魔はその場に膝をついた。
色を持っている人はさいわいだ、他の色とまじわることができる
いまだもっていない人もさいわいだ、これからどんな色にも染まることができる
なら、脱ぎ捨てられた色はどこに行く?
脱ぎ捨てられた色は…
「オレが拾って…大切にするよ。」
濡れた頬を拭って、閻魔は変わらず広い青空を見上げた。
【終】