悩んだ、けど…
admin≫
2010/03/09 16:14:43
2010/03/09 16:14:43
やっぱり公開してしまおう。^q^
天国組の動画で初めて泣いたやつで、私がボカロを知ろうとするきっかけになったものから書いた話です。
「悪.ノ秘.書」
替え歌の歌詞は複数パターンがあったと思うんですけど、私がもとにしたのはこれです。
http://www.nicovideo.jp/watch/nm3970914
歌詞から色んな絵や歌ってみたを回って、それから書いたやつですね。
ここで言っても仕方ないですけど、無断で書いてすみませんでした!懺悔懺悔。
懺悔しても謝罪してもこんなとこじゃ意味ないし問題ありだろ!って方がいらっしゃったら容赦なく言って下さい。
即刻削除いたします。
▼悪.ノ秘.書▼
――大王…僕は、あなたのためならこの手が汚れることなど構わないんです。
「書類処理、まだ終わってませんよ。」
この人は、どうにも書類仕事だけは嫌いのようだ。ある程度溜まってくると、僕の目を盗んでは天国でサボろうとする。
「あちゃー、見つかっちゃった。」
綺麗な花の咲く花畑の中で寝転んでいた大王は、わざとらしくそう言った。
「いつも同じところにいるくせに、見つかったも何もないでしょう。」
ため息混じりに僕が指摘すると、あはは…と乾いた笑いを浮かべる。
「ね…鬼男くん。」
不意に、彼の表情が憂いを帯びた。僕は返事はせずに、目だけで続きを促す。
「みんながみんな、善人だったら良かったのにね。」
「…っ!」
声は努めて明るくしてるけど、表情は明らかに辛そうで。
僕は思わず言葉に詰まってしまった。
「なんてね。さて、戻ろうか。」
大王は僕の表情にふふっと悪戯っぽい笑みを作って起き上がり、歩き始めた。
「誰のせいでここまで来てると思ってんですか。」
背中に声をかけながら、僕は大王の後を追う。
――例え全ての人が悪人で、みんながみんなアンタを恨んだとしても。
「僕があなたを守りますよ。」
「ん?何か言った?」
大王の一歩後ろを歩きながら呟くと、大王は振り返って聞き返してきた。
「いえ、何でもないです。それより早く戻って仕事しろ、大王イカ。」
「イカってまた言った!!」
――そう…アンタはそうやって笑ってて下さい。
◇◇◇
「これから、地獄の見回りに行くよ。」
「おともします。」
死者の裁きを終えた大王の言葉に、僕はすかさず声をかけた。
大王は少しだけ微笑んで地獄への階段を降り、僕もそれに従う。
「っ…」
地獄の責め苦に耐える死者たちを見て、大王はまるで自分がそれを受けているかのように表情を固くする。
これは罪を償わせるためにやっていることで、罪を償わなければ転生はできない。
分かっているはずなのに…
「ごめん、ね…」
小さく、絞り出すように大王は呟いた。
「だい…」
声をかけようとして、出来なかった。
あまりにも悲しげに微笑むから。声を、かけてはいけない気がした。
「っ…」
拳を握りしめて、大王の後ろをついて歩く。
大王に地獄送りにされた亡者たちが恨みの目を向けてくる。恨み辛みの言葉を大王に投げかけてくる。
…大王は、何も言わなかった。
「彼らが罰に苦しむのは、オレのせいなんだよね…」
見回りを終えた帰り道、大王がポツリと呟いた。
アンタの裁きは誰よりも公平で、何よりも正しい。何も間違ってないし、責められる理由も自分を責める理由もないのに、なんで…
「っ…」
「わ、え…ちょっと、鬼男くん!?」
気付けば、涙が溢れ出していた。
「何で泣いてるの…?」
「っ、ふ…っく…」
本当に泣きたいのは、大王のはずなのに。僕が泣く理由なんてないはずなのに。
情けない話、ボロボロと勝手に溢れてくる涙を止める術を僕は持っていなかった。
◇◇◇
「これにしよっかなぁ~、やっぱこっち?」
地獄から戻ってすぐ、大王は先程までのシリアスを返上するみたいにハイテンションで何かを選んでいた。
休憩のために僕がお茶を淹れて戻ってくると…
「あ…」
今まさにセーラー服を着ようとしている大王と目が合った。
「いや、これは違うよっ?うん、ただちょっと七つ道具の整理を、さ…」
「セーラー服は止めろって、何度言えば分かるんだお前は!!」
慌てて弁解しようとする大王を思いっきり蹴飛ばす。
「げふぅっ!相変わらず暴力的だな、鬼男くん…!」
「お前の行動が僕を暴力的にしてんだよ!!」
いつも通りのやり取りに、大王は楽しそうに笑った。何も考えてないように思えるくらい、無邪気に。
◇◇◇
「あなたは…地獄だよ。」
最近やって来る死者は悪人ばかりだった。来る者来る者、地獄という判決に異議を唱えて大王に罵声を浴びさせる。
大王は黙ってそれを聞き、相手が言い尽くしたところで再び地獄を宣告した。
「地獄も、いっぱいになっちゃいそうだね…。」
強制的に連れていかれる悪人の後ろ姿を無感動に見つめながら、大王は呟く。
裁きを待つ列をざっと見たところ、恐らく今日も大半は地獄行きの死者だろう。…大王が、列には聞こえないくらい小さくため息を吐いた。
「次の方、どうぞ。」
呼ばれて目の前にやって来た死者の顔を見、閻魔帳をパラパラと捲る。
「君も、地獄だね。」
真っ直ぐ相手の目を見据えて、大王は言った。
「そんな…なんでですか!?」
目に涙を浮かべて問いかける死者。
善人ぶっているけど、その身に染み付いている血の臭いが僕にも分かる。相当な数の人間を殺しているのだろう。
「14人。」
大王の告げた人数に彼の肩が震えた。
大王は淡々と閻魔帳の文字を読み上げていく。
「最初に殺したのは家族。両親と妹。次は幼馴染み。そして、自分のクラスメイト…。よくもまぁ、こんなにも殺せたもんだね。」
「っ…」
「…天国に行けると、本気で思ってるの?」
すっ、と目を細めて冷たく問いかける。
「ぁ…あぁ…」
悪人は身動きひとつとれず、引きずられるようにして地獄へ連れて行かれた。あの目を向けられて抵抗できる奴はそういないだろう。
「次…」
僕が顔を上げたとき、何かが光った。…次の死者の手は、懐の中。
大王は俯いて、次のチェックをしている。
「大王っ…!」
「え…?」
大王が顔を上げたときにはすでにナイフがこちらに向かってきていて、僕はその目の前に飛び出す。
「死ねっ!!」
死者はそれでもナイフを僕に突きつけてきた。が、ナイフが届くより先に、僕は爪を伸ばして死者に突き立てていた。
「おに、お…くん…」
大王が震えた声で僕を呼ぶ。
獄卒が死者に手をかけるなんて、決してあってはいけないことだ。そのために、大王は不死身でもあるのだから。
ただの塊となったこれは、転生の機会を失った。
「オレ…ナイフで刺されたって、死なないんだよ…?」
立ち上がり、返り血で濡れた僕の腕を掴んで大王は言う。
「…知ってます。」
大王の方は見ないで短く答える。
「取り押さえればそれで良かったのに、なんで…!」
血が苦手なくせに、震える手で僕の腕にすがり付くように抱きついてきた。
「あの距離で大王が刺される前に取り押さえるのは、さすがに僕でも無理です。」
それでも僕は大王の方は見ず、抱き返すこともしない。
罪人となった僕は、大王に触れる資格はない。
「だったらオレが刺されてからだって…!」
「お前を守れなかったら何のために傍にいるか分からないだろ!」
思わず怒鳴った。
びくっ、と大王の体が震える。それから泣くのを我慢するように顔を歪めた。
「まぁ、いずれにしても僕はもう罪人です。あなたの秘書ではいられない。」
「っ…」
大王が息を飲む。僕は大王と距離を置いて向き直り、深く頭を下げる。
「すみませんでした…大王。」
謝罪の言葉を述べて顔を上げると…
「っ!」
大王は、泣いていた。
ボロボロと溢れる涙を拭おうともせず、綺麗に。
「オレの秘書は、一人だけだから。」
「…っ」
「オレの傍に立つ鬼は、一人しか、認めないから。」
「だい、おう…」
情けなくも震え掠れた声で大王の名前を呼ぶ。
――もしも…また秘書にしてくれるなら、その時は。
「必ず、お供してよね…鬼男くん。」
大王は、やっぱり涙を拭うこともせずに微笑んだ。
【終】
―――――――――――――――
懐かしいなぁ…そして酷いなぁ…^q^
最後まで読んでくださりありがとうございました。
――大王…僕は、あなたのためならこの手が汚れることなど構わないんです。
「書類処理、まだ終わってませんよ。」
この人は、どうにも書類仕事だけは嫌いのようだ。ある程度溜まってくると、僕の目を盗んでは天国でサボろうとする。
「あちゃー、見つかっちゃった。」
綺麗な花の咲く花畑の中で寝転んでいた大王は、わざとらしくそう言った。
「いつも同じところにいるくせに、見つかったも何もないでしょう。」
ため息混じりに僕が指摘すると、あはは…と乾いた笑いを浮かべる。
「ね…鬼男くん。」
不意に、彼の表情が憂いを帯びた。僕は返事はせずに、目だけで続きを促す。
「みんながみんな、善人だったら良かったのにね。」
「…っ!」
声は努めて明るくしてるけど、表情は明らかに辛そうで。
僕は思わず言葉に詰まってしまった。
「なんてね。さて、戻ろうか。」
大王は僕の表情にふふっと悪戯っぽい笑みを作って起き上がり、歩き始めた。
「誰のせいでここまで来てると思ってんですか。」
背中に声をかけながら、僕は大王の後を追う。
――例え全ての人が悪人で、みんながみんなアンタを恨んだとしても。
「僕があなたを守りますよ。」
「ん?何か言った?」
大王の一歩後ろを歩きながら呟くと、大王は振り返って聞き返してきた。
「いえ、何でもないです。それより早く戻って仕事しろ、大王イカ。」
「イカってまた言った!!」
――そう…アンタはそうやって笑ってて下さい。
◇◇◇
「これから、地獄の見回りに行くよ。」
「おともします。」
死者の裁きを終えた大王の言葉に、僕はすかさず声をかけた。
大王は少しだけ微笑んで地獄への階段を降り、僕もそれに従う。
「っ…」
地獄の責め苦に耐える死者たちを見て、大王はまるで自分がそれを受けているかのように表情を固くする。
これは罪を償わせるためにやっていることで、罪を償わなければ転生はできない。
分かっているはずなのに…
「ごめん、ね…」
小さく、絞り出すように大王は呟いた。
「だい…」
声をかけようとして、出来なかった。
あまりにも悲しげに微笑むから。声を、かけてはいけない気がした。
「っ…」
拳を握りしめて、大王の後ろをついて歩く。
大王に地獄送りにされた亡者たちが恨みの目を向けてくる。恨み辛みの言葉を大王に投げかけてくる。
…大王は、何も言わなかった。
「彼らが罰に苦しむのは、オレのせいなんだよね…」
見回りを終えた帰り道、大王がポツリと呟いた。
アンタの裁きは誰よりも公平で、何よりも正しい。何も間違ってないし、責められる理由も自分を責める理由もないのに、なんで…
「っ…」
「わ、え…ちょっと、鬼男くん!?」
気付けば、涙が溢れ出していた。
「何で泣いてるの…?」
「っ、ふ…っく…」
本当に泣きたいのは、大王のはずなのに。僕が泣く理由なんてないはずなのに。
情けない話、ボロボロと勝手に溢れてくる涙を止める術を僕は持っていなかった。
◇◇◇
「これにしよっかなぁ~、やっぱこっち?」
地獄から戻ってすぐ、大王は先程までのシリアスを返上するみたいにハイテンションで何かを選んでいた。
休憩のために僕がお茶を淹れて戻ってくると…
「あ…」
今まさにセーラー服を着ようとしている大王と目が合った。
「いや、これは違うよっ?うん、ただちょっと七つ道具の整理を、さ…」
「セーラー服は止めろって、何度言えば分かるんだお前は!!」
慌てて弁解しようとする大王を思いっきり蹴飛ばす。
「げふぅっ!相変わらず暴力的だな、鬼男くん…!」
「お前の行動が僕を暴力的にしてんだよ!!」
いつも通りのやり取りに、大王は楽しそうに笑った。何も考えてないように思えるくらい、無邪気に。
◇◇◇
「あなたは…地獄だよ。」
最近やって来る死者は悪人ばかりだった。来る者来る者、地獄という判決に異議を唱えて大王に罵声を浴びさせる。
大王は黙ってそれを聞き、相手が言い尽くしたところで再び地獄を宣告した。
「地獄も、いっぱいになっちゃいそうだね…。」
強制的に連れていかれる悪人の後ろ姿を無感動に見つめながら、大王は呟く。
裁きを待つ列をざっと見たところ、恐らく今日も大半は地獄行きの死者だろう。…大王が、列には聞こえないくらい小さくため息を吐いた。
「次の方、どうぞ。」
呼ばれて目の前にやって来た死者の顔を見、閻魔帳をパラパラと捲る。
「君も、地獄だね。」
真っ直ぐ相手の目を見据えて、大王は言った。
「そんな…なんでですか!?」
目に涙を浮かべて問いかける死者。
善人ぶっているけど、その身に染み付いている血の臭いが僕にも分かる。相当な数の人間を殺しているのだろう。
「14人。」
大王の告げた人数に彼の肩が震えた。
大王は淡々と閻魔帳の文字を読み上げていく。
「最初に殺したのは家族。両親と妹。次は幼馴染み。そして、自分のクラスメイト…。よくもまぁ、こんなにも殺せたもんだね。」
「っ…」
「…天国に行けると、本気で思ってるの?」
すっ、と目を細めて冷たく問いかける。
「ぁ…あぁ…」
悪人は身動きひとつとれず、引きずられるようにして地獄へ連れて行かれた。あの目を向けられて抵抗できる奴はそういないだろう。
「次…」
僕が顔を上げたとき、何かが光った。…次の死者の手は、懐の中。
大王は俯いて、次のチェックをしている。
「大王っ…!」
「え…?」
大王が顔を上げたときにはすでにナイフがこちらに向かってきていて、僕はその目の前に飛び出す。
「死ねっ!!」
死者はそれでもナイフを僕に突きつけてきた。が、ナイフが届くより先に、僕は爪を伸ばして死者に突き立てていた。
「おに、お…くん…」
大王が震えた声で僕を呼ぶ。
獄卒が死者に手をかけるなんて、決してあってはいけないことだ。そのために、大王は不死身でもあるのだから。
ただの塊となったこれは、転生の機会を失った。
「オレ…ナイフで刺されたって、死なないんだよ…?」
立ち上がり、返り血で濡れた僕の腕を掴んで大王は言う。
「…知ってます。」
大王の方は見ないで短く答える。
「取り押さえればそれで良かったのに、なんで…!」
血が苦手なくせに、震える手で僕の腕にすがり付くように抱きついてきた。
「あの距離で大王が刺される前に取り押さえるのは、さすがに僕でも無理です。」
それでも僕は大王の方は見ず、抱き返すこともしない。
罪人となった僕は、大王に触れる資格はない。
「だったらオレが刺されてからだって…!」
「お前を守れなかったら何のために傍にいるか分からないだろ!」
思わず怒鳴った。
びくっ、と大王の体が震える。それから泣くのを我慢するように顔を歪めた。
「まぁ、いずれにしても僕はもう罪人です。あなたの秘書ではいられない。」
「っ…」
大王が息を飲む。僕は大王と距離を置いて向き直り、深く頭を下げる。
「すみませんでした…大王。」
謝罪の言葉を述べて顔を上げると…
「っ!」
大王は、泣いていた。
ボロボロと溢れる涙を拭おうともせず、綺麗に。
「オレの秘書は、一人だけだから。」
「…っ」
「オレの傍に立つ鬼は、一人しか、認めないから。」
「だい、おう…」
情けなくも震え掠れた声で大王の名前を呼ぶ。
――もしも…また秘書にしてくれるなら、その時は。
「必ず、お供してよね…鬼男くん。」
大王は、やっぱり涙を拭うこともせずに微笑んだ。
【終】
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懐かしいなぁ…そして酷いなぁ…^q^
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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