君に伝えておきたくて(閻魔独白?)
2010/05/26 00:00:00
某無月さんの誕生日祝いをこっそり。しかし、今日で合っているのかかなり不安です。(←なんて奴だ)
私と関わってくださった方々の誕生日は出来る範囲、手段でお祝いしたいと思っているのですが…毎回合っているのかどうか不安になってしまいます。親友の誕生日も毎年祝っているくせに毎年不安になって確認するくらい(^^;
でも、お祝いしたいという気持ちはありますので誕生日の方!近くなったら教えてくだs(殴
すみません、頑張って覚えます。
では、某無月さんの誕生日が今日で合っていると信じて…
誕生日、おめでとうございます。
生まれてきてくれたこと、生きて、私と関わってくれたことに最大の感謝を。
ありがとうございます、新たな一年が少しでも多く幸せと笑顔のある年であることを願って。
誰かにとっては何でもない日なのかもしれない。
でも、オレにとっては特別な…大切な日。
だって、今日がなかったら君と出逢うことはなかった。
君とこうして会話をすることも、笑うことも泣くことも。
ありがとう、生まれてきてくれて。
ありがとう、生きていてくれて。
ありがとう、オレと出会ってくれて。
…何でそんなに驚いた顔するの?
驚く必要ないよ、だって本当のことだろう?
君にはいつも感謝してるんだ。
だから、今日くらいちゃんと言葉にした方が良いかなと思ってさ。
普段は恥ずかしくて誤魔化しちゃうけど、今日は大サービス!
大好きだよ。君がいてくれてホントに良かった。
君と出会ってから、毎日すごく楽しいんだ。
あんなに退屈で嫌になってた仕事も、ちゃんとやってるし!
…え?あー…いや、だってほら、たまには息抜きもしないと、ね?
もうっ、ここは素直に喜ぶとこ!
サボってることとか、セーラー服をこっそり買ってることとかは無視してさ!
これでも結構…恥ずかしいんだからな。
わ、笑うなよ!人が勇気出して言ってるってのに、まったく…
とにかく、最後にこれだけ!
誕生日、おめでとう。
これから先、まだまだ色々あるだろうけど…オレは君のことちゃんと見てるから。
どんな君も大好きだっていうこの気持ちに、偽りも変化もないよ。
新しい一年、君にとって素敵なものにしようね!
――――――――――――――
久々に書くのが独白(?)って言うのは、無謀すぎたね…うん。
途中で閻魔の口調が分からなくなってしまったよ。なんだか、全然違う人(キャラ?)になっている気がしてなりません。すみません。でもひとつの話にするだけの想像力(創造力?)がなかったんだ…orz
無月さん、こんな拙いもので申し訳ないですが…誕生日おめでとうございます!言いたいことは大体上の閻魔(?)が言ってます、はい。
新しい一年を影ながらこっそり応援していますからね(^_^)
昔も今も僕だけが(鬼男×閻魔)
2010/05/04 19:35:15
どうもお久しぶり(?)です。
最近全然書いてないなぁ…書こうと思う気持ちも湧いてこないなぁ…でもだからって何も書かないってのもなぁ…なんてぐるぐるしながらキーボードを叩いています。
とりあえず、いつものように概要(?)を。
・子鬼男くんって、どんな感じかなぁーと妄想。
・子鬼男くんをひざに乗せる閻魔ってどんな感じかなぁーと妄想。
・成長しても子鬼男くんと同じようなことする鬼男くんってどうだろうなぁーと妄想。
・結果→相変わらず糖度高めのバカップルになった。
・けれど文章力は今までで一番ひどい状態orz
こんな感じでいいのなら、追記へどうぞ。なお、読んだ後は誰か他の方の作品を大量に見ることをおススメいたします。それくらい酷いんだ…すみません。
ああ、気分が悪い。
なんで最近はああいう死者ばかりなんだろう。俺は無力だ。
「大王…平気ですか?」
書類整理を終えたらしい鬼男くんが様子をうかがうように声をかけてきた。
「え?何が?よっし、あともう少しだしちゃっちゃと終わらせようか!」
鬼男くんの眉尻が心配そうに下がったのが分かったから、いつものように笑ってやる気十分な態度を見せて答える。すると鬼男くんはため息をついて俺に近づくと、そっと俺の頬に手を伸ばしてきた。
「大王…泣かないでください。」
まったく…相変わらず君には敵わない。
俺がしんどいときはいつだってそう。何も言ってないし、誰にも気づかせない自信があったのに、必ずやって来るんだから。
◇◇◇
「はぁー…勘弁してよ、もう…」
久々に嫌な裁きをしてしまった。事実だけを見れば地獄行きは明白なのに、当の本人はそれを理解するには幼すぎた。まだまだこれからだったのに。突き放すことしか出来ない自分が哀しい。
「だいおー…?」
不意に恐る恐るといった様子の声が聞こえた。
うぅーん、君はなんてタイミングで来るんだよ…。
「うん?何かあった?鬼男くん。」
声のした方に目を向け返事をすると、いつものように笑って見せる。
すると鬼男くんは何を思ったか、小さなこぶしを握り締め俯いて、精一杯の早足でとてとてと近寄ってきた。
「鬼男くん…?」
俺のところまで来るなり椅子に座ってた俺のひざによじ登ると、ぺたっと小さな手のひらで頬に触れてくるものだから、思わず首をかしげて名前を呼んでしまう。
鬼男くんは心配そうに眉尻を下げて口を開いた。
「だいおー…なかないで、ください。」
「えぇ?鬼男くん、変なことを言うね。どうかした?」
ひざに足を乗せて乗り出した状態だった鬼男くんを抱えなおしてちゃんと膝に座らせてから、俺は苦笑して問いかけた。他の子たちはこの笑顔で安心してくれるんだけどなぁ。
「だって…きょうのだいおーは、あったかくなりません。」
「ん?」
俺の頬に触れていた手を下ろし、誤魔化すように俯いて呟いた鬼男くんの言葉が気になって、思わず首を傾げてしまう。あったかくって、何だろう?
「いつものだいおーは、みててあったかくなるのに、きょうはあったかくならなかったです。だいおー、なにかあったですか?」
「あはは…全く、なんで気づいちゃうのかな君は。」
俺、そんなにわかりやすい?こんな子どもに見抜かれちゃうくらい?
「だってぼくは、いつだってだいおーをみてます。だいおーがつらいときは、そばにいるってきめたんです。」
鬼男くんはそんなことを言ってのけると、チュッと可愛らしく俺の頬に口付けてから、眩しいくらいに無邪気で、自信に満ち溢れた笑顔を見せた。
なんでだろう、そのとき俺はその言葉に、その笑顔にすごく安心しちゃったんだ。
◇◇◇
「ありがと、鬼男くん。いつも俺の嘘は君に見抜かれちゃうね。」
頬に触れられた手に自分の手を添えて苦笑すると、鬼男くんも困ったように笑ってからあのときのようにチュッと触れるだけの可愛いキスをしてきた。
「僕はどんなときも、あんたの辛いときはいつだって、傍にいるって決めてますから。」
そのためにはあんたの嘘くらい見抜けないと。と、あのときよりずっと成長した…どこか得意げな笑みを見せて鬼男くんは言った。
「小さい頃から君だけは気づくんだもんなぁ…。ホント敵わないよ。」
思わず嘲笑混じりに呟いてみる。他の子達と鬼男くんと、何がいったい違うんだろう?
「あんたは結構分かりやすいですよ?他のやつらが鈍いんじゃないですか?」
「えぇー、そうかなぁ…」
俺としては上手く隠せていたつもりだから、そういう風にいわれるとちょっとへこむ。でも、今までは誤魔化せてたんだからやっぱり鬼男くんのほうが変なんだよ。とか、自己弁護してみたり。
「…心から笑ってる大王はすごく綺麗で、僕の一目惚れでしたから。」
「え…」
「次に会った大王の笑った顔がそのときと違ったら、誰だって分かるでしょう。」
突然言われたその言葉にとっさに反応できなかった俺に、鬼男くんは背を向けて答えた。誤魔化してるつもりなんだろうけど…耳が真っ赤なのがここからでも分かる。
「あんたの、心からの笑顔がまた見たかったから…それを誰よりも傍で、誰よりも早く見たかったから。そして、もし出来るのなら僕の力で心から笑ってほしかった…から。」
――昔も今も、いつだって僕が…僕だけが。
初めは、幼い子どもの独占欲のようなものだったのかもしれない。
だけど君は…そんな幼い頃からの思いを軸にして、いつも俺の隣にいようとしてくれたんだね。
どうしよう…かなり嬉しい、かも。
「鬼男くんっ…!」
「っ!?」
衝動のまま、あの頃と比べて随分たくましく広くなった背中に飛びついた。突然で何の準備も出来なかっただろうに、しっかり踏みとどまって俺を支えてくれる。
「ありがとう…それから、ずっと大好き!」
あの時俺のひざに乗って差し出してくれた小さな手は、今では俺をしっかり支えて包み込んでくれるまでになりました。
――――――――――――――
リハビリのつもりで書き始めたけど、何これヒドイ^q^
こんな駄作ですみません。最後まで読んでくださりありがとうございます。
うあぁー、やっぱり心から書きたいって思わないとダメなのか…!!orz
誰か私に癒しをください。というか、萌をください。ついこの前までの勢いが嘘のようです。
これはもう…潮時なのか…?(聞くな
学園祭クラス企画(模擬結婚式)②
2010/04/11 21:32:06
続きまして閻鬼(執事×メイド)です。
始まりは同じですが、一応こっちにも書いておきます。
―――【企画の始まり】―――
学園祭当日、3年飛鳥組の教室にはさまざまな衣装が所狭しと並んでいた。誰がどこから持ってきたのか、ウエディングドレスや白無垢はもちろんカラードレスに民族衣装、メイドや執事にチャイナドレスとナース服。まさに何でもありの状態だ。
「それにしても、よくこれだけ集まったなぁ…」
「みんな、意外とそういう趣味が…」
「男物、少なくない?」
持ってきた生徒たちの反応もそれぞれではあるが、自分たちが一番楽しみにしているということだけは確かなようだ。
「教室の飾りつけ、カメラの準備、照明と音楽は出来てるかー?」
「当然!いつでもオッケーだよ!」
太子が全体を見渡しながら声をかけると、女性とのはっきりとした答えが返ってきた。
「よーし、みんな!今日は思いっきり楽しむでおまっ!」
返答を聞いて満足げに頷いて太子が声高らかに告げれば、教室内は一気に沸き起こった。
【閻鬼の場合】
「そうですね。何でしょうか?」
閻魔と鬼男が2人で学園祭を回っていると、3年のある教室に人だかりが出来ていた。興味を持って近づいてみると、そこは3年飛鳥組の教室。
「太子のクラス?あれ、何やってるんだっけ。」
「さぁ…?」
人ごみを縫って教室を覗くのと同時に鳴り響いたクラッカーの音。
「おめでとう!」
「幸せになれよー!!」
どこかの教会を思わせる飾り付けを施された教室の中央で、恥ずかしそうに寄り添う男女とそれを取り囲む多くの客。2人はウエディングドレスとタキシードを着ていたが、教室の隅には多種多様な衣装がずらりと並んでいた。
「わぁー、結婚式かぁ…」
「いや、でも教室の隅にある衣装は明らかに結婚とは関係ないものもあるんですけど。」
閻魔は感心したように呟いたが、鬼男は納得いかないといった表情で言う。ふと、教室の中で衣装を整えていたらしい太子と目が合った。
「おぉー、閻魔に鬼男じゃないか!来てくれたのか!?すごいだろー、私たちのクラスの人気!」
「うん、すごい人気だね。ちょっと羨ましいかもー。」
「太子先輩、ここは何をやっているんです?結婚式…にしては、おかしな衣装が多いですよね。」
閻魔と鬼男の姿を認識した太子は、声をかけながら廊下に立つ2人に近づいてきた。
ニコニコ笑いながら答える閻魔と対照的に、鬼男の方は衣装の違和感が気になるのか真剣な眼差しで問いかけてくる。
「ん?私たち3年飛鳥組は、コスプレ模擬結婚式をやってるんだぞ!好きな衣装や設定で異性・同性・兄弟・姉妹関係無しに誰でも結婚できるんだ。面白いだろう?」
「え、じゃあさじゃあさ!オレと鬼男くんでも出来るってことだよね!?」
「なっ…!」
太子の説明を聞いた途端、閻魔の目が嬉しそうに輝いてそんなことを言い出したので、傍で聞いていた鬼男はカッと顔を赤くして動きを止めた。
「もちろんだぞ。今のカップルが終わったら空いてるから、閻魔と鬼男で結婚式挙げてみるか?」
閻魔の言葉に太子は笑って頷くと、予定表を確認してから誘いの言葉を投げかける。
「え、いいの?!よし、鬼男くん!オレと今から結婚し」
「っ、ざけんなこの変態大王イカがぁっ!!」
「げふぉっ!?」
太子の返答を聞いてますます嬉しそうにした閻魔が、勢いで結婚を申し込もうとしたところで鬼男の方が耐え切れなくなったのか、罵倒とともに思いっきりストレートを食らわせてきた。
気を抜いていた閻魔はその攻撃を見事に受け、吹っ飛ばされる。羞恥を隠すためか落ち着くためか、うつむいて大きく呼吸を繰り返す鬼男に黙ってみていた太子が「なぁ、鬼男?」と声をかけた。
「…何ですか?」
「そんなに警戒するなよー。別に無理に挙げろなんて言うつもりはないって!ただ、色んな衣装そろえたからさ、暇なら見るだけ見ていきんしゃい。なかなか面白いぞ。」
警戒した様子で返事をする鬼男ににこっと無邪気に笑って提案する太子。
確かに、明らかにコスプレ用と言った衣装の方が多いが、中には見たことのない民族衣装や、繊細な作りをしているドレスなど見るだけでも楽しそうなものが揃っている。
「…じゃあ、ちょっとだけ。」
装飾の仕組みやデザインに興味を持った鬼男は、控えめに答えて教室に足を踏み入れた。
結婚をこぶしとともに断られてしまったことがショックで落ち込んでいる閻魔の肩をちょんちょんと突っついた太子は、顔を上げた閻魔に楽しそうに笑って見せた。
「閻魔も見ていきんしゃーい。セーラー服もあるけど、今回のおススメはメイド服でおまっ!」
「んー?うん…まぁ、鬼男くんが見てるならオレも暇になっちゃうしね。」
なぜメイド服なのか気になったが、閻魔も衣装に興味がないわけではなかったので頷いて教室に入る。教室内は、式場としてセッティングするところは広く開けているものの、そこ以外は本当にたくさんの衣装が壁に沿って種類ごとに綺麗に並べられていた。
「こんなの、どこから誰が持ってきたんだ。」
鬼男は端から順に衣装を見ていきながら、どこで入手したのか定かでないような衣装やありがちなデザインの衣装など一着一着丁寧に見ていっていた。
どういう風にデザインして、何を表現しているのか。そんなことを考えるのは嫌いではなかったから。
「あ…」
流れるように衣装を見ていた鬼男の目が、不意に一着の衣装の前で止まった。
真っ黒な燕尾服。うるさすぎない程度に施されたバランスのいい装飾。
「執事服エリア…?」
思わず壁の張り紙を確認するように見上げて、声に出して読んでしまった。
確かにそこ周辺をざっと見てみると、漫画やドラマなどでよく見る執事が着ているような服がたくさん並べてあった。その中で、どうしても鬼男が目を離せない執事服が一着。
「これ…」
「閻魔に似合いそうだよな。」
「ぅわぁっ!?…ちょっ、太子先輩…いきなりなんですか。」
ため息混じりに呟いて確認するようにその服に触れたところで突然後ろから声をかけられて、鬼男はまさしく体を跳ねさせて驚いた。
太子の存在に気づかないほど集中していたのか、それとも太子自身がわざと気配を殺していたのか。
「その服着てる閻魔…見てみたくないか?」
「っ…」
にやり、と口角を上げて悪戯っぽく笑う太子に鬼男は息を詰める。
見たいか見たくないか、と問われれば正直に言って見てみたい。しかしそれはつまりここで結婚式を挙げるということになるのだろう。
「この服なー、実際に執事を雇ってる奴から借りたものなんだ。そいつの家の母親がデザイナーやってて、自分の家の執事のためにデザインしたんだって。それで、今日一日だけ無理言ってお借りしてきたんだ。だから、閻魔に着せるなら今日しかないの。」
「そう、ですか…」
そんな風に説明されてしまうと、どうしても着ている姿が見てみたくなってきてしまう。でも、そうかと言ってすぐに頷けないのは、隣に並ぶ自分の衣装が何になるのか分からないから。式を挙げないで閻魔にだけ着せることは出来ないのだろうか。
「鬼男くん、鬼男くん!オレの一生のお願い聞いて!!」
どうしたらいいか考え込んでいる鬼男の背中に、テンションの高い声が届いた。
「…なんですか、突然。」
「ん?閻魔、どうしたんでおま?」
鬼男と太子は一緒に振り返って、どこか興奮した様子の閻魔に問いかける。
「あ、太子!ここの衣装って、結婚式挙げないと借りれないんだよね?」
「まぁな。そうじゃないと意味がないし、これでもお金かかってるところあるしな。」
閻魔が確認するように尋ねると、太子は困ったように笑って答えた。その返答に「やっぱそうだよねぇ…」と閻魔は苦笑い。鬼男も、閻魔にこの執事服を着てもらうにはやはり結婚式を挙げないといけないのか…と内心肩を落としていた。
「あの、さ…鬼男くん?君は絶対嫌がるって、分かってるよ。分かってるん、だけどさ。でも、今日は学園祭で、お祭りなわけじゃない?お祭りってさ、無礼講って言っちゃ変だけど…よっぽどのことじゃない限り何やっても少しは許されると思うんだよね。」
「はぁ…まぁ、そうですね。」
どういう風に言おうか考えているのか、歯切れ悪く言葉を紡ぐ閻魔に鬼男は何が言いたいのだろう?と考えながらとりあえず相槌を打っておく。
「だからさ、今日だけ…お祭りの、今日だけでいいんだ。誰も本気にしないだろうけど、だからこそ。オレに、君への愛を誓うチャンスをくれない?」
「これ…」
言って、閻魔は後ろ手に持っていた衣装を鬼男の目の前に差し出した。これがもしセーラー服だったら、鬼男は条件反射と言わんばかりに容赦なく閻魔を殴り飛ばしていただろう。しかし、鬼男が渡されたそれは…
「メイド服…ですか?」
「うん。これさ、鬼男くんが着たら絶対可愛いと思うんだよね。これ着て、オレと結婚式挙げてほしいんだ。」
女物で、メイド服であることに間違いはないのだが、良くあるコスプレ用のフリル満載のメイド服というわけではなく、シンプルでしかもボトムタイプのもの。
いったい誰が持ってきたのだろう。
「おぉー、執事とメイドで結婚式か!ちょうどよかったな!これはいい式になるぞー!」
「よし!執事とメイド、屋敷設定で一組入るよ!みんな、準備して!」
「え、ちょっと!?準備早すぎませんか!」
今まで黙って様子を見ていた太子は、差し出されたメイド服を確認するとここぞとばかりに大きな声を張り上げる。それを聞いて、飛鳥組のメンバーは早々に会場セッティングに入ってしまったので、思わず鬼男があせったように声をかけた。
「愛の誓いはどうする?」
「主人のいない間に2人きりで階段!どうよ!」
「最高!」
しかし鬼男の言葉はもはや3年飛鳥組の生徒には届いておらず、どんどん設定と準備は進んでいく。
「僕はまだやるって言ってないんですけど!」
「まぁまぁ鬼男。2人して目に付いた衣装が同じ系統だったって、すごい偶然だと思うぞ?こんな偶然は、いっそ運命とも言えるでおまっ!…この機会を大切にするべきだと思わないか?」
最後まで抵抗しようとする鬼男に、太子はやはり楽しそうに笑ってなだめるように言った。
運命、という言葉にわずかながら鬼男が反応を示す。確かに、それぞれ好きなように衣装を見ていたのに、お互いに似合うと思って気に掛けた衣装が結婚式の設定にちょうどいいものだったのはすごい偶然なのかもしれない、と。
「…まぁ、せっかくの学園祭だし…仕方ないからアンタに付き合ってやりますよ、大王。」
「ホント!?ありがとう、鬼男くん!オレ、鬼男くんのそういうとこ大好き!」
閻魔から受け取った衣装を手にそっけなく答えて、鬼男は更衣室の方へ向かい始めたので閻魔は嬉しそうに顔を綻ばせて大声で鬼男に叫ぶ。
「うっせーアホ大王!恥ずかしいこと言ってねぇでお前もさっさと着替えて来い!」
閻魔の言葉に恥ずかしそうに頬を染めて怒鳴ると、鬼男は乱暴に更衣室のドアを閉めてしまった。
「…だから言っただろ?メイド服がお勧めだってさ。」
ふふん、と得意げに笑って鬼男に聞こえないよう小声で太子は言った。
「やるねぇ、太子。なんか、上手くはめられた気分。」
「そんなつもりはないぞ。鬼男と閻魔好みの衣装を揃えはしたけど、お前らが選ぶかどうかは私にも分からなかったしな。」
「ふぅん…?まあ、そういうことにしといてあげる。じゃあ俺も着替えてくるね。」
苦笑して閻魔が言っても、返ってきたのは変わらぬ笑顔とそんな言葉で。閻魔は首をかしげながらもとりあえずは納得したように頷いて見せて、鬼男が選んだ衣装を手に更衣室に入った。
◇◇◇
「わぁー、鬼男くん可愛い~!」
「っ…!」
着替えて出てきた鬼男の姿を見て、閻魔は嬉々として声を上げた。鬼男は羞恥に頬を染めて、なるべく周りの顔を見ないようにしているのか俯いている。
「準備は出来てるぞ。式を挙げるでおまっ!」
「はいはーい、今行くよー。」
太子の言葉に明るく返して、閻魔はその場から動こうとしない鬼男の手を引いた。
「だ、大王…あの…本気ですか。」
往生際悪く踏みとどまって、鬼男が最終確認といわんばかりに問いかけてくるので閻魔は苦笑して近寄り、そっと頭を撫でてやる。
「本気だよ。他のみんなにとってはお遊びでも、俺の気持ちはいつだって本気。みんなの前で鬼男くんは俺のものだって宣言して、鬼男くんはこんなに可愛いんだって見せびらかしてやりたいんだよね。」
「可愛いって…褒め言葉じゃないですよ、それ。」
「あはは、ごめん。でもホント可愛いよ。ほら、みんな待ってるよ?」
閻魔の言葉に鬼男はどう反応して良いのか分からず顔を背けて答えた。そんな態度の鬼男がますます可愛らしく見えて、閻魔は笑いながら返すと再び優しい手つきで鬼男の腕を引いた。
「では、今回の愛の誓いは『執事とメイド』です。さて今度のカップルはどんなドラマを見せてくれるのでしょうか!」
司会の声とともにみんなの前に現れた執事とメイドに、観客は感嘆の声を漏らす。それくらい閻魔と鬼男にその衣装は似合っていた。
『すみません、わざわざ呼び出してしまって。』
『いえ…でも、何ですか?2人きりで話したい話って。』
着替えているときに渡されたセリフを作られた階段に立って言い合う閻魔と鬼男。
閻魔は楽しそうだが、鬼男の方は誰が書いたんだこの台本…と羞恥を感じながらなのでどこか棒読みである。
『…私の体は、ご主人様に尽くしご主人様が快適にお過ごしいただくために存在しております。』
『はい。それは、私だって。ご主人様のためにご奉仕するのが仕事ですから。』
「体は捧げたけど、心まで渡したつもりはない。俺の心はもうずっと前から、君とともにあることを願ってるよ。心はもちろん、本当なら体だって君以外に渡したくはなかった。」
「えっ…!?」
本来なら次のセリフは『それでも、心だけはあなたのためにありたいと願うことを許していただけませんか?』という控えめなお誘いのはずだったのに、突然セリフと違うことを言い出した閻魔にとっさに反応出来なくて鬼男は驚いて固まってしまう。
「君がもし、これからも俺とともにありたいと思ってくれるのなら…この手を取って一緒に来てほしい。この拘束だらけの世界を一緒に出よう、鬼男くん。」
数段低い位置にいた閻魔は、そう言って白い手袋に包まれた右手を鬼男に差し出した。条件反射とでも言うべきか、思わずそれを掴んでしまう鬼男。同時にぐいっと強く引き寄せられて体が前につんのめる。
「ちょっ…!?」
「ありがとう。これでもう邪魔するものは何もない。これからは、ずっと一緒だよ。」
焦ったように声を上げた鬼男を受け止めて愛しげに抱きしめると、耳元で優しく強い声でもって閻魔は囁いた。
「っ、はい…。すごく、嬉しいです。」
何故か鬼男は閻魔のその言葉に胸が締め付けられるように痛くなって、でも泣きそうなくらい嬉しくて。自らも縋りつくようにぎゅっと強く抱きついて閻魔の腕の中で震えた声で応える。
ドラマのワンシーンを見せられたような気になっていた観客たちが、誰からというわけでもなく拍手が沸き起こった。
「愛してるよ、鬼男くん。俺とずっと一緒に生きよう。…今度こそ。」
「…?」
拍手に紛れて小さく言われた愛の告白とともに言われた言葉に鬼男は首を傾げたが、閻魔はそれ以上何も言わず、ただ黙って鬼男を抱きしめていた。
―――――――――――
想像以上に長くなった件について^q^
すみませんでした!
学園祭クラス企画(模擬結婚式)
2010/04/11 21:27:13
今更な感じではありますが。
とりあえずリクエストしていただいたCPは書きあがったのでUPします。
長くなったのでまずは曽妹(ブレザー×セーラー)です。
後は個人的に鬼閻と曽芭が書けたらいいなぁと思ってはいるのですが…需要なさそうだ^q^
―――【企画の始まり】―――
学園祭当日、3年飛鳥組の教室にはさまざまな衣装が所狭しと並んでいた。誰がどこから持ってきたのか、ウエディングドレスや白無垢はもちろんカラードレスに民族衣装、メイドや執事にチャイナドレスとナース服。まさに何でもありの状態だ。
「それにしても、よくこれだけ集まったなぁ…」
「みんな、意外とそういう趣味が…」
「男物、少なくない?」
持ってきた生徒たちの反応もそれぞれではあるが、自分たちが一番楽しみにしているということだけは確かなようだ。
「教室の飾りつけ、カメラの準備、照明と音楽は出来てるかー?」
「当然!いつでもオッケーだよ!」
太子が全体を見渡しながら声をかけると、女性とのはっきりとした答えが返ってきた。
「よーし、みんな!今日は思いっきり楽しむでおまっ!」
返答を聞いて満足げに頷いて太子が声高らかに告げれば、教室内は一気に沸き起こった。
【曽妹の場合】
「え?ううん、何も。って、言うか…曽良と一緒に、学園祭回ろうかなって思ってた、んだけど…」
あと5分で交代というとき、不意に曽良が声をかけた。妹子はいったん作業を止めると、恥ずかしそうに頬を赤らめて様子をうかがうように上目遣いで答える。
すると曽良は、傍目には気づかないであろう程わずかに表情を和らげた。それを見た妹子も、安心したようにふわりと微笑みを浮かべる。
「小野、河合!交代の奴来たからちょっと早いけど上がっていいよー。」
「あ、うん。分かったー。」
クラスメイトの声が生徒控え室から聞こえたので、妹子は首だけそちらに向けて返事をすると、曽良のほうに目を向け「行こう?」と手を差し出した。
「どこから見ようか。曽良、何か見たいところとか行きたいところある?」
「僕は特には。とりあえず適当に回ってみましょう。」
「それもそうだね。」
簡易更衣室で着替えながらそんな会話をして、廊下に出る。朝からずっと教室で接客をしていたので、思った以上に人が多くて妹子も曽良も驚いた。
「あ、イケメン2人見ぃーっけ!」
突然後ろからそんな声が聞こえた。
少し大きめのその声に、思わず振り返る妹子と曽良。廊下を歩いていた生徒や客も、何事かと振り返った。
「あ、太子と同じクラスの…」
「河合曽良くん、小野妹子くん!学園祭の記念に、2人で結婚式挙げてみない!?」
「「…は?」」
妹子の声を遮って告げられた言葉に、曽良と妹子は声をそろえて訝しげな表情を見せた。
「まぁまぁ、とりあえず一緒に来てよ。君たちなら絶対絵になるから!」
「あの、何のはな」
「はい、レッツゴー!!」
しっかりと腕を掴まれ、状況を理解する間もなく彼女は歩き出してしまう。周りのことを何も考えない見事なマイペースぶりだ。
先輩で、女子だということもあり、曽良も妹子も腕を力任せに振りほどきにくい。2人は引きずられるようにして3年飛鳥組にたどり着いてしまった。
「とうちゃーっく!みんなー、カップル一組ご案内だよ!」
「おー、よくやった!」
「お客様も一緒とはやるな!」
曽良と妹子を教室内に引き入れながら言うと、待っていましたと言わんばかりに生徒が集まり、口々に彼女を褒め称える。3人の後ろには、顔のいい男子生徒2人の結婚式とはどんなものだろうと興味を持ったらしい一般客と生徒の姿。
「ちょっと!勝手に話を進めないでくださいよ!僕らはやるなんて一言もっ…!」
「河合のブレザー姿、見てみたくないか?」
ようやく腕を解放されたと思ったら話をどんどん進めていこうとしていて、妹子が怒りをあらわに反論しようとすると、耳元でそんな言葉を囁かれた。
「…え?」
言われた言葉に驚いて、思わず動きを止めて聞き返してしまう。妹子の反応を見て、耳元で囁いた男の先輩は満足そうに笑って、ぽんぽんと妹子の肩を叩いた。
「小野は常々、河合は学ランよりブレザーの方が似合うと思ってたはずだよな?うちの結婚式はさまざまな種類の衣装を着て挙げるのが売りなんだ。…今日くらいだぞー?河合のブレザー姿が見られるのなんて。」
どこか楽しげに説明しながら、先輩は妹子の視線を曽良と教室の奥にある数種類のブレザーに向けさせる。中には曽良に似合いそうなブレザーが何着かあって、妹子の目はすでに釘付けた。
「…少し、見せてくれますか?」
「もちろんさ。」
妹子がポツリと期待のこもった声で尋ねると、説明をした先輩は頷きながら教室内に待機していたクラスメイトたちに親指を立てて見せる。それを見て同じように頷いた生徒たちは、いそいそと教室内のセッティングを始めた。
「くだらない。なんで僕が妹子とこんなところで太子さんのクラスに貢献しないといけないのですか。」
「そう言うなって曽良ー。…実はな、閻魔からセーラー服を何着か借りてきてるんだ。ここで妹子とセーラー服とブレザーで結婚式挙げてくれたら、好きなやつ無料でお前にやるから。…妹子に着せたら、夜が楽しくないか?」
あからさまに嫌そうな態度を見せる曽良をなだめながら、太子はこっそりと耳打ちした。
曽良は大きく表情に変化は見せなかったが、ブレザーをわくわくした様子で見ている妹子に視線を向けて、少し考える素振りを見せた。
「…センスのないものだったら許しませんよ。」
「閻魔から借りたセーラーだぞ?私が保証するって!まぁ、こういうのは見たほうが早いよな。こっちでおまっ!」
曽良の言葉に太子は嬉しそうに笑って返し、セーラー服の置いてある区画へと曽良を案内した。
◇◇◇
「結構似合っていますよ。」
「っ…う、嬉しくない…んだけど…」
着替えを終えて出てきた妹子を見て開口一番、ブレザーを身にまとった曽良が言う。妹子は自分だけに見せる穏やかな微笑みと、思ったとおり似合っている曽良のブレザー姿に胸を高鳴らせながらも、自分の姿に不満と羞恥を感じてうつむき加減に返した。
「でも、本当にとても可愛いですよ。…このまま連れ去ってしまいたいくらいには。」
言いながら妹子の髪を撫でてから、耳元に唇を寄せて最後だけは小声で伝える曽良。
妹子は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐさま恥ずかしそうに頬を染めてはにかんだ。自分の容姿と身長を何度も恨むことはあったが、曽良にそう言われてしまうと何故かそれでも良いと思えてしまうから不思議である。
「さぁ、着替え終わったなら式を挙げるよ2人とも!お客様もクラスの奴らも歓迎する気満々なんだから!」
2人の世界に入ろうとしたところで、容赦なくそんな声がかかる。
ブレザーとセーラー服でも結婚式ということで、教室は授業で使うものをそのまま使って客席も壇上も作っていた。
「妹子のこの姿を不特定多数の人間に見せるのは不本意ではありますが…約束なので仕方ありませんね。」
曽良はため息混じりにそう言って妹子に手を差し出した。
妹子には約束が何のことか分からなかったが、それでも曽良のその言葉と動作が嬉しくて、黙って頷きその手を取る。
「新郎新婦のご登場です!」
司会の者が声高らかに言って、曽良と妹子のほうに手を広げた。
「この場合、新郎新郎じゃないか?」
「細かいところは気にしちゃいけないんだよ、こういうときは。」
客席でそんなやり取りがあったが、大勢の拍手に包まれて紛れてしまい、誰の耳にも届かなかった。拍手の中、二人は壇上に上がる。
曽良と妹子が立ち止まったところで、神父のつもりなのか黒い衣装を身にまとった一人の男子生徒がわざとらしく咳払いをした。
「さて…二年飛鳥組、河合曽良。あなたは今このときだけでも、皆に二年飛鳥組、小野妹子との愛を誓いますか?」
「僕の妹子への愛は、今このときだけに限らず…一生ですよ。」
「なっ…!」
男子生徒のそれらしい誓いの問いかけに、曽良は間を置くことなくはっきりと答えた。
妹子を含め、聞いている全員がその言葉に思わずざわめく。驚きや呆然とした空気の中に、わずかに混じる黄色い声。
「…で、では二年飛鳥組、小野妹子。あなたは皆に今このときだけでも二年飛鳥組、河合曽良との愛を誓いますか?」
騒ぐ教室内の雰囲気を変えようと、男子生徒は仕切りなおしとでも言うように今度は妹子に同じ問いかけをした。
妹子はその問いに様子をうかがうように曽良に視線を向けてすぐ戻すと、にっこり笑った。
「僕の心も、一生曽良のものです。」
「おぉー!?」
「妹子も曽良も良くやるなぁ…!」
再び騒ぎ出した教室をよそに、曽良の口角がほんのわずかに上がる。騒ぐ教室の状況を見て、言ってから恥ずかしくなったのか朱に染まった妹子の頬にそっと手を添えた。
「そ、ら…?」
「あなたからそんな言葉が聞けるとは思っていませんでした。…愛しています、妹子。」
不思議そうに名前を呼んで見上げてくる妹子に嬉しさを滲ませた声で言うと、曽良はそのまま唇を重ねてしまった。
驚愕と、喜びの声が交じり合ってさらに騒がしくなる教室。こんなところで、こんなに多くの人の前で口付けられるとは微塵にも思っていなかった妹子は、驚きのあまり硬直してしまっていて。
曽良は内心してやったりと思いながら、名残惜しむようにゆっくりと妹子から離れた。
「なっ、そ…っ、わっ!?」
「ブレザーは後でお返しします。まだ何着かあるので良いですよね?」
未だに信じられない、といった表情で口をパクパクとさせていた妹子をひょいと抱き上げて、唖然としている目の前の男子生徒にそれだけ言うと、曽良は何事もなかったかのようにスタスタと教室を出て行ってしまった。
「おーい曽良ー!せっかくだからしっかりうちの企画を宣伝してこいよー!」
状況を把握できていないのか呆気にとられている客たちをよそに、太子一人だけは回りを気にせず堂々と廊下を歩いていく曽良の背中に、満足そうな笑顔でそんな言葉を投げかけていた。
悩んだ、けど…
2010/03/09 16:14:43
やっぱり公開してしまおう。^q^
天国組の動画で初めて泣いたやつで、私がボカロを知ろうとするきっかけになったものから書いた話です。
「悪.ノ秘.書」
替え歌の歌詞は複数パターンがあったと思うんですけど、私がもとにしたのはこれです。
http://www.nicovideo.jp/watch/nm3970914
歌詞から色んな絵や歌ってみたを回って、それから書いたやつですね。
ここで言っても仕方ないですけど、無断で書いてすみませんでした!懺悔懺悔。
懺悔しても謝罪してもこんなとこじゃ意味ないし問題ありだろ!って方がいらっしゃったら容赦なく言って下さい。
即刻削除いたします。
――大王…僕は、あなたのためならこの手が汚れることなど構わないんです。
「書類処理、まだ終わってませんよ。」
この人は、どうにも書類仕事だけは嫌いのようだ。ある程度溜まってくると、僕の目を盗んでは天国でサボろうとする。
「あちゃー、見つかっちゃった。」
綺麗な花の咲く花畑の中で寝転んでいた大王は、わざとらしくそう言った。
「いつも同じところにいるくせに、見つかったも何もないでしょう。」
ため息混じりに僕が指摘すると、あはは…と乾いた笑いを浮かべる。
「ね…鬼男くん。」
不意に、彼の表情が憂いを帯びた。僕は返事はせずに、目だけで続きを促す。
「みんながみんな、善人だったら良かったのにね。」
「…っ!」
声は努めて明るくしてるけど、表情は明らかに辛そうで。
僕は思わず言葉に詰まってしまった。
「なんてね。さて、戻ろうか。」
大王は僕の表情にふふっと悪戯っぽい笑みを作って起き上がり、歩き始めた。
「誰のせいでここまで来てると思ってんですか。」
背中に声をかけながら、僕は大王の後を追う。
――例え全ての人が悪人で、みんながみんなアンタを恨んだとしても。
「僕があなたを守りますよ。」
「ん?何か言った?」
大王の一歩後ろを歩きながら呟くと、大王は振り返って聞き返してきた。
「いえ、何でもないです。それより早く戻って仕事しろ、大王イカ。」
「イカってまた言った!!」
――そう…アンタはそうやって笑ってて下さい。
◇◇◇
「これから、地獄の見回りに行くよ。」
「おともします。」
死者の裁きを終えた大王の言葉に、僕はすかさず声をかけた。
大王は少しだけ微笑んで地獄への階段を降り、僕もそれに従う。
「っ…」
地獄の責め苦に耐える死者たちを見て、大王はまるで自分がそれを受けているかのように表情を固くする。
これは罪を償わせるためにやっていることで、罪を償わなければ転生はできない。
分かっているはずなのに…
「ごめん、ね…」
小さく、絞り出すように大王は呟いた。
「だい…」
声をかけようとして、出来なかった。
あまりにも悲しげに微笑むから。声を、かけてはいけない気がした。
「っ…」
拳を握りしめて、大王の後ろをついて歩く。
大王に地獄送りにされた亡者たちが恨みの目を向けてくる。恨み辛みの言葉を大王に投げかけてくる。
…大王は、何も言わなかった。
「彼らが罰に苦しむのは、オレのせいなんだよね…」
見回りを終えた帰り道、大王がポツリと呟いた。
アンタの裁きは誰よりも公平で、何よりも正しい。何も間違ってないし、責められる理由も自分を責める理由もないのに、なんで…
「っ…」
「わ、え…ちょっと、鬼男くん!?」
気付けば、涙が溢れ出していた。
「何で泣いてるの…?」
「っ、ふ…っく…」
本当に泣きたいのは、大王のはずなのに。僕が泣く理由なんてないはずなのに。
情けない話、ボロボロと勝手に溢れてくる涙を止める術を僕は持っていなかった。
◇◇◇
「これにしよっかなぁ~、やっぱこっち?」
地獄から戻ってすぐ、大王は先程までのシリアスを返上するみたいにハイテンションで何かを選んでいた。
休憩のために僕がお茶を淹れて戻ってくると…
「あ…」
今まさにセーラー服を着ようとしている大王と目が合った。
「いや、これは違うよっ?うん、ただちょっと七つ道具の整理を、さ…」
「セーラー服は止めろって、何度言えば分かるんだお前は!!」
慌てて弁解しようとする大王を思いっきり蹴飛ばす。
「げふぅっ!相変わらず暴力的だな、鬼男くん…!」
「お前の行動が僕を暴力的にしてんだよ!!」
いつも通りのやり取りに、大王は楽しそうに笑った。何も考えてないように思えるくらい、無邪気に。
◇◇◇
「あなたは…地獄だよ。」
最近やって来る死者は悪人ばかりだった。来る者来る者、地獄という判決に異議を唱えて大王に罵声を浴びさせる。
大王は黙ってそれを聞き、相手が言い尽くしたところで再び地獄を宣告した。
「地獄も、いっぱいになっちゃいそうだね…。」
強制的に連れていかれる悪人の後ろ姿を無感動に見つめながら、大王は呟く。
裁きを待つ列をざっと見たところ、恐らく今日も大半は地獄行きの死者だろう。…大王が、列には聞こえないくらい小さくため息を吐いた。
「次の方、どうぞ。」
呼ばれて目の前にやって来た死者の顔を見、閻魔帳をパラパラと捲る。
「君も、地獄だね。」
真っ直ぐ相手の目を見据えて、大王は言った。
「そんな…なんでですか!?」
目に涙を浮かべて問いかける死者。
善人ぶっているけど、その身に染み付いている血の臭いが僕にも分かる。相当な数の人間を殺しているのだろう。
「14人。」
大王の告げた人数に彼の肩が震えた。
大王は淡々と閻魔帳の文字を読み上げていく。
「最初に殺したのは家族。両親と妹。次は幼馴染み。そして、自分のクラスメイト…。よくもまぁ、こんなにも殺せたもんだね。」
「っ…」
「…天国に行けると、本気で思ってるの?」
すっ、と目を細めて冷たく問いかける。
「ぁ…あぁ…」
悪人は身動きひとつとれず、引きずられるようにして地獄へ連れて行かれた。あの目を向けられて抵抗できる奴はそういないだろう。
「次…」
僕が顔を上げたとき、何かが光った。…次の死者の手は、懐の中。
大王は俯いて、次のチェックをしている。
「大王っ…!」
「え…?」
大王が顔を上げたときにはすでにナイフがこちらに向かってきていて、僕はその目の前に飛び出す。
「死ねっ!!」
死者はそれでもナイフを僕に突きつけてきた。が、ナイフが届くより先に、僕は爪を伸ばして死者に突き立てていた。
「おに、お…くん…」
大王が震えた声で僕を呼ぶ。
獄卒が死者に手をかけるなんて、決してあってはいけないことだ。そのために、大王は不死身でもあるのだから。
ただの塊となったこれは、転生の機会を失った。
「オレ…ナイフで刺されたって、死なないんだよ…?」
立ち上がり、返り血で濡れた僕の腕を掴んで大王は言う。
「…知ってます。」
大王の方は見ないで短く答える。
「取り押さえればそれで良かったのに、なんで…!」
血が苦手なくせに、震える手で僕の腕にすがり付くように抱きついてきた。
「あの距離で大王が刺される前に取り押さえるのは、さすがに僕でも無理です。」
それでも僕は大王の方は見ず、抱き返すこともしない。
罪人となった僕は、大王に触れる資格はない。
「だったらオレが刺されてからだって…!」
「お前を守れなかったら何のために傍にいるか分からないだろ!」
思わず怒鳴った。
びくっ、と大王の体が震える。それから泣くのを我慢するように顔を歪めた。
「まぁ、いずれにしても僕はもう罪人です。あなたの秘書ではいられない。」
「っ…」
大王が息を飲む。僕は大王と距離を置いて向き直り、深く頭を下げる。
「すみませんでした…大王。」
謝罪の言葉を述べて顔を上げると…
「っ!」
大王は、泣いていた。
ボロボロと溢れる涙を拭おうともせず、綺麗に。
「オレの秘書は、一人だけだから。」
「…っ」
「オレの傍に立つ鬼は、一人しか、認めないから。」
「だい、おう…」
情けなくも震え掠れた声で大王の名前を呼ぶ。
――もしも…また秘書にしてくれるなら、その時は。
「必ず、お供してよね…鬼男くん。」
大王は、やっぱり涙を拭うこともせずに微笑んだ。
【終】
―――――――――――――――
懐かしいなぁ…そして酷いなぁ…^q^
最後まで読んでくださりありがとうございました。